あの残像


大切な人がある日突然、この世界から居なくなってしまうこと

消えることのない傷心や喪失を連れてこの先を生きていかなくてはならなくなったとして

残された私は、その人が居ない日々を、どのようにして生きてゆけばいいのだろうか




心にぽっかりとあいた空洞 ひとりには広すぎる家

それでも時間は冷酷に進み、生活は続く

何も口にするつもりになれなくても腹は減る




それは他に為す術が見つからないからかもしれないけれど、

残されたものはただ生をもって、自らの手で足で、

紡ぐように、レンガを積んでいくように、ぽっかりあいたところを埋めていく




悲しみは、必ず乗り越えなくてはいけないものではなくて

一緒に抱えたまんまで進んでいけばいいものだと思う




営みのなかでその人がいない日々にも慣れはじめた頃にも、

それでも時折、共に過ごした記憶の欠片を思い出しては涙を零したりしながら、

その人が居なければきっと違った道の続きをひとりで歩く

道に迷えば、胸の中にいるその人が顔を出して 進むべき方角を囁くだろう




見えないものの声に呼応すること

姿は見えなくなってしまっても、亡き人の軌跡はあなたの、わたしのなかに

確かに息づき続ける




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