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左耳のピアスの理由③

私たちは付き合って4年目。同棲して2年。お互い24歳。

そろそろ結婚を考えてもいいころかもしれない。いつプロポーズしてくれるのか私はドキドキワクワクしながら毎日を過ごしていた。

そういえば、告白したのは私からだった。もしかして、プロポーズも私からしないといけないのかな? さすがにそれは彼がしてくれるかな。今日ちょっとだけ匂わせてみようかな!

そんなことを考えながら家に帰る。

「ただいま!」上機嫌に玄関の扉を開ける。彼の顔を見た。

ーえ、泣いてる?

明らかに彼は泣いた後の顔だった。目は真っ赤になっていたし、シャツはびちゃびちゃだった。私は何も聞かずに彼をぎゅっと抱きしめた。

私はそれから数日後、遠回しに彼にプロポーズをしろという旨を伝えた。すると彼は、「う…うん。まぁもうちょっとしてからね。」彼の反応はイマイチだった。私と結婚する気はないのかな? そう思わせるほどの反応だった。

それからというもの、彼は信じられないくらい私に冷たくなった。彼が私に理由もなく冷たくしたことはなくて、そもそも感情の上下が激しい人ではなかった。理由を聞いても答えてくれないかうやむやにされるだけ。

今までに理由もなく冷たくすることなんてなかったからよっぽどの理由があるんじゃないかと考えた私は、しばらく彼と離れて暮らすことを選んだ。幸い、私の実家から職場までの距離が近かったこともあったので私は実家に帰ることにした。

それから一か月間彼とは連絡を一切取らなかった。

やっと来た彼からのメールは、信じられない内容だった。

ーいろいろあって、君とは別れたいと思う。ごめん。ー

唐突に来た彼との破局。頭の中がパニックで、世界に置いて行かれた感覚。理解が追い付かない。一番理解ができないのは、別れた理由がわからないこと。このままでは納得できないし、何よりまだ私は彼のことが好き。

彼の友人に訪ねてみても、わからないの一点張り。彼の母親も父親も分からないと言い張る。彼との連絡は取れない。彼の家の合鍵は持っていたから彼の家に行くことにした。当然のように彼の姿はなかった。そして、泥棒が入ったのかというくらい部屋は荒れ放題だった。

本棚の中身は全部出ていて、服はぐちゃぐちゃ、テレビにはヒビが入っている。その近くにはコップが粉々。とても彼が住んでいたとは思えないような散らかりっぷりだった。唯一、私たちの思い出を飾る場所は散らかっていなかった。

彼になんて言われるか分からないけど、とりあえず片すことにした。服をたたみ、布団を干し、床を掃除し、台所をきれいにして。そうこうしているうちに、彼が仕事から帰ってくる時間になった。でも、いくら待っても帰ってこない。涙は出尽くしたはずなのに止まない。私は彼を待ち続けた。

次の日の朝。私の隣にはあの優しい彼が、いなかった。どこかの誰かと浮気でもしているのか、それとも一人で旅行でもしているのか。そんなことを四六時中考えているもんだから仕事もままならない。今日の夜は彼の家で晩御飯を作って待って居よう。

その日の夕方、彼の好きなビーフシチューを作って待っていた。すると、扉を開ける音が聞こえた。私は嬉しくてたまらなかった。まるで迷子になった子供が母親と再会したように、お年玉をもらった時のように一気にテンションが上がった。

彼の顔を早く見たいと玄関に駆け足で行った。玄関に立っている姿を見た私は驚きを隠せなかった。

次回

「アンラブストーリは突然に」

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