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1. 気づきから決断まで ~子育て中の離婚、私のケース~

この記事は、私が離婚を決意してから完了するまでの7年間の記録の第一章です。

離婚を考えている方、特に子育て中の女性にとって、「これが正解」という道筋は存在しません。一人一人の状況が異なるように、そこに至るまでの経緯も、乗り越えなければならない課題も、様々だからです。

私の場合は、結婚後に気づいた夫の異常な言動が発達障害の可能性を示唆するものでした。しかし、それは数ある「離婚を考えるきっかけ」の一つに過ぎません。大切なのは、違和感を感じたときに、その感覚を疑わず、どのように行動していくかということです。

この連載では、私自身の経験を一つの参考事例として共有しながら、離婚を考える際に必要な準備や、取るべき行動について、なるべく具体的にお伝えしていきたいと思います。同じ立場で悩む方々の道しるべになれば幸いです。

第一章では、最初の違和感から、それが漠然とした不安から確信へと変わっていく過程、そして実際に取った行動についてお話しします。


違和感を持った最初の兆候

私と元夫は、二人とも民間企業に勤務しながら、国際開発・海外支援などに興味や関心が高かったこともあり、外務省外郭団体が主催するセミナーで知り合いました。

学年が同じこと、共に経済学を専攻していたこと、その他の要因が重なって気が合い、元夫が米国にMBA留学する直前にプロポーズされました。

その後、元夫が2年間のMBA留学をし、1年目の終わりに結婚式を挙げました。私も1年遅れで別の米国の大学にMBA留学したため、婚約から合計3年間は、別居状態でした。今思えば、それが元夫が普通ではない特徴があると気づくのが遅くなった原因の1つではないかと思っています。

二人とも日本で再就職し、一緒の生活が始まり、私が妊娠した頃から、元夫の普通ではない行動は顕著になりました。その時のことは、また別途、息子の出産体験記の際に詳細を明らかにしたいと考えています。

主な特徴や行動を例に取ると以下の通りです:

「日常生活での違和感」

  • 人の気持ちがわからない

  • 言葉の裏やニュアンスが汲み取れない

  • TPOにあった服装ができない

「育児に関する違和感」

  • 子供がいるにも関わらず、頻繁な一人旅。特に夏と年末年始は必ず一人で1週間以上、海外旅行に出かける

  • 息子の運動会に行き、なぜか息子の出番の直前で「ジョギングに行く」と言って、肝心な息子の演技を見ない

「金銭面での異常」

  • 香典等の金銭の支払いを渋る(私の祖母の香典の支払いをお願いしたところ、私の弟夫婦の前で「俺にたかる気か!」と激怒する。など)

  • 私に相談せずに転職先を決め、年収がそれまでの3分の2に下がるから、家賃を含めた生活費は、お互いの年収に応じて(按分して)支払うべきだ、という、全くもってナゾな理論を、当然の権利のように主張しはじめる

  • 特にお金の支払いで自分の思い通りに私が動かないと、"叫ぶ、暴れる"などの、一歩間違えばDVになりえる言動が出る

このような状況が積み重なり、私の中で「この人は何か普通と違う」と違和感を覚えざるを得ませんでした。

自分の感覚を疑わない大切さ ~私の旦那はアスペルガー~

息子が赤ん坊、そして保育園に入園して生活に慣れるまでは、毎日必死で、心の中で違和感はあっても、気づかないふりをして過ごすことが何年も続きました。

そして、息子が4-5歳になり、子育ての最初の山を何とか抜け出そうとしたタイミングで、たまたま職場に精神疾患に詳しい人がいることがわかり、少し相談してみました。元夫の話をしたところ、それはアスペルガーではないか、との発言がありました。アスペルガー、正式にはアスペルガー症候群という自閉症スペクトラムの1つで、基本的には知的発達に異常はなく、結構、高学歴の人も多いそうです。

ネットで調べてみると、本当に元夫そのものの症状でした。私の中で「これだったんだ!」と思う一方、治る見込みがない疾患であることに大きく落胆し、絶望感がこみ上がってきました。

「私、この人と一生、人生を共にしなくてはいけないのか...」

とはいえ、落ち込んでいても仕方ないので、何か自分でできることがないかと思い、本を探してみました。その中で、マンガなので一番わかりやすそう、と思って購入したのが、こちらです。

野波ツナ「旦那さんはアスペルガー」

シリーズで出版されているので、「もしかしたら、私の夫も」と思った方、とりあえず読んでみることをおすすめします。
著者のブログもあります。

自分と子どもへの影響を考える ~カサンドラにならないために~

自分を守る

アスペルガー症候群について調べてわかったのは、大なり小なり、パートナーが心身の不調になってしまうということです。

私も、最初家族からは、元夫の愚痴を言っても「あなたが好きになって一緒になった人だから、最終的にはあなたの責任」と言われ、追い詰められたこともありました。

そのため、「旦那さんはアスペルガー」を両親に読ませてみたところ、母から電話があり「これ、〇〇君(元夫の名前)そのままじゃない!」と驚きの声が。何とか両親には元夫が普通とは違う特徴があることを理解してもらえ、「選んだあなたの責任」とは言われなくなったのが、救いになりました。

親族や親しい友人数名には、「私の夫はアスペルガーの可能性が高い」と知ってもらうことで、カサンドラ症候群にならないように、何とか生活することができる状態にまで環境をもっていくことができました。

余談になりますが、当時の元義理の母(元夫の母親)にも、このマンガを貸したところ「父ちゃんにそっくり」と言い、自分の夫(元夫の父親)もアスペルガー症候群の特徴があることを吐露しました。

子供(息子)を守る

息子が小学校に上がる前後くらいから、自分の父親が何かおかしい、ということには気づいていた様子です。

保育園の年長の際には、突然、
「ママは、ママに意地悪する人と結婚してしまったね。もっと選べば良かったね。僕は、結婚する時はもっと、ちゃんと選ぶようにする」
と言われてしまい、"子供は鋭いな"と思いました。

そして、小学2年生の時、運動会の出番前に、突然、元夫がジョギングに行ってしまう事件で、息子が深く傷ついた日、私は、このままでは息子がカサンドラ症候群になりかねないことを危惧し、息子に話をしました。

「パパは他の人の気持ちがわからない頭の特徴を持っている可能性が高い、薬はないので一生治らない」と伝え、感染するものではなく遺伝するもので、じいじも同じ行動をしてばあばが苦労してきたことなどを説明すると、7歳児なりに理解した様子でした。

息子「このままだとママの人生が無駄になってしまう」
私「じゃあ、パパと別々に暮らす?」
息子「それは嫌だ」
私「いつも意地悪な訳ではないし、このまま暮らすしかないと思っている。ママには優しくしてね」
息子「大きくなって僕が結婚したら家を出ていくことになるので、その時にパパが意地悪したら、すぐ電話くれれば、いつでも助けにいくからね」

今思うと、とてもかわいらしい会話ですが、当時、色々な人に相談した中のメモに、この会話の記録が残っていました。

相談できる所を見つける重要性

専門機関への相談

"アスペルガー症候群"という言葉にアンテナが立つようになってしばらくした頃、SNS上である知人の投稿を見つけました。その方は自身がアスペルガー症候群だと診断され(きっかけは、お子さんの不登校で医療機関を受診したこと)、カウンセリングを受けているとのことでした。「病識が無ければ離婚寸前だった。学生の頃、修学旅行で普通のクラスの人と話をしていたつもりだったが、突然、味噌汁をぶっかけられて、訳がわからなかった」などの経験も投稿されていました。

その方とはあまり親しい仲ではありませんでしたが、SNS上で連絡を取り、事情を説明して医療機関や専門機関を紹介してもらいました。まずは東京都発達障害支援センター(通称:TOSCA)に行って話を聞いてもらい、通いやすい適切な医療機関を紹介してもらうように、とのアドバイスでした。

TOSCAへ、まずは電話で面談の予約をしたい旨の連絡を入れました(電話の他にもメールやFAXでも対応しているそうです)。その際に、事前の調査票(記載する箇所が結構沢山ある)に記入をする必要があり、それを見た上で面談日程を決めるとのことでした。

時間をかけて事前の調査票を記入し、面談当日は、会社を休んで相談に行きました。

相談員からは、私からの情報を見る限り、かなりアスペルガーの特徴的な行動がみられるとの指摘がありました。ただし、既に成人しているため首に縄付けて連れてくるわけにはいかないため(ちなみに、未成年の場合は親が連れて来ることができる)、本人に困り感があり、通院の意思がないと専門医は紹介できないとのことでした。

仮に何とか連れてくることができて、専門医を紹介したとしても、本当に診断されるとは限らず、過去にも何度か、再度別の医療機関に紹介してやっと診断がついた事例があるそうです。また、基本的には治るものではないので、多くの場合、家族が疲弊し、労力の割には解決に向かうとは限らない、といった趣旨の説明もありました。

まずは家族会を紹介するから、そちらで話をすることで、少し私の気持ちが楽になるかもしれないし、すぐに紹介できる、とのことでしたが、私自身も忙しく、家族会で、ある意味、お互いの傷を舐めあっている暇があったら、息子や他の大事なことへの時間として使いたいと思いました。なんだか、為すすべ無しで無力感だけが残り、帰宅することとなりました。

弁護士への相談

この絶望感の中で、とりあえずは、もし離婚することになったら、どうしたら良いのだろうか、子供もいるし、今すぐではないけれど...と思い、知人の同級生経由で、若い女性の弁護士さんを紹介してもらいました。

知人の同級生も弁護士さんであったため、お二人に元夫の状況を色々とお話ししました。まだ子供が小学生であるため、離婚をすると経済的にも体力的にも私に負担がかかること、養育費は取れるが、婚姻中に負担してもらっているレベルではもらえなくなること、が最初の助言でした。「お子さんが大きくなるまでは、ATMと割り切って、一緒に生活した方が良い」との発言まであり、衝撃を受けました。

また、普通と違うと思われる言動については、常に記録や録音・録画をしておいて、いざという時に備えること、アスペルガー症候群の人は、スイッチが入ると何をしだすかわからないため、慎重に動いた方が良い旨のアドバイスを頂きました。

今回は、夫の違和感に気づいてから決断に至るまでの経緯をお話ししました。

「離婚」という二文字は、時として突然、現実のものとなります。私の場合も、夫の突然の「出ていく」宣言から、慌ただしい日々が始まりました。次回は、その予期せぬ展開と、どのように対応していったのかをお伝えします。また、今振り返って「あの時、こうしておけば良かった」という具体的なアドバイスもお話しさせていただきます。

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