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かまってちゃんプリンセスに狂わされる
″かまってちゃん″
人によって評価の変わる性格。
とある人にとっては「可愛い!」「放っておけない!」となり
とある人にとっては「めんどくさい」「正直うざい」となる。
俺は後者の人間だ。
なのに、俺の幼なじみは超絶かまってちゃんだ。
「〇〇〜!」
「うげっ…」
「おはよ〜!」
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挨拶と共にハグしてくるこいつは、幼なじみの菅原咲月。
「朝から抱きつくなって、何回言えば…」
「ん〜、100回!」
「じゃあ言ってやるよ」
「朝から抱きつくな朝から抱きつくな朝から抱きつくな朝から抱きつくな朝か…」
「あ〜、ごめんなさいごめんなさい!もうしませんからぁ!」
「…本当にしない?」
「うん!」
「朝から抱きつかない!」
「はぁ…分かってくれたならい…」
「お昼とか夜は抱きつくね!」
「抱きつくな抱きつくな抱きつくな抱きつくな抱きつくな抱きつくな抱きつくな抱きつ…」
「うわぁぁ!抱きつきませぇぇん!」
正直、可愛い女の子に抱きつかれるのは嫌な訳ではない。
誰だって、可愛い子にはハグされたいものだ。
しかし、こんなにも距離が近いと、色々勘違いされて困る。
咲月はクラスのマドンナだし、男子の敵意が俺に向くのは火を見るより明らかだ。
「じゃあ…手繋ぐのは?」
「却下」
「むぅ…じゃあ袖掴むのは?」
「…却下」
「え〜、何ならいいのさ〜!」
「適切な距離を保ってくれ」
「はぁい…」
ようやく幼なじみらしい距離感で通学路を歩く。
「…そぉっと」
「手繋ごうとしてるの分かってるぞ?」
「は、ははっ、何のことかな〜」
「はぁ…校門前までね」
「わぁい!」
とびきりの笑顔を見せる咲月に、嫌な気はしなかった。
すると、咲月は指を絡めてくる。
「ちょ、何してんの!?」
「何って、恋人繋ぎだけど?」
「″恋人繋ぎだけど?″じゃないよ」
「そんなん許可してない」
「ダメとも言われてないよ?」
「ダメなもんはダメ」
「ほら、はなっ…してっ…」
繋がれた右手をぶんぶん振るが、一向に繋がれた手が離れない。
なんだこの握力は。
「咲月…ちょ…離れろ!」
「やだ!絶対離さないもん!」
「離したら二度と繋いでくれないもん!」
「そうだけど…離せって!」
「そんなに私と手を繋ぐの…いや?」
「いやなわけではないけど…」
「ねえ、校門前まででいいから、ね?」
「…今日だけな」
こうやって、俺はいつも折れている。
歩いて数分。
目の前には校門が見えてくる。
「あ〜あ、もう着いちゃった…」
「はい、着いたから手離す…ぞ…」
「おい、離せっ」
「やぁだぁ!教室まで!」
「無理!」
「なんでよ!」
「なんでもだ、無理!」
そんないざこざをしていると、真後ろに人の影を感じる。
「あらあら、今日もイチャイチャですか〜?」
「こいつのかまってちゃん行動から逃げてるだけだ」
「というか、見てるくらいなら助けろ、井上」
影の正体は同級生の井上和。
咲月と仲が良く、大抵一緒にいる。
井上も、咲月のかまってちゃん行動に手を焼いている側の人間なはず。
助けてくれよ。
「せっかく可愛い幼なじみがかまってくれてるんだよ?」
「だからなんだよ」
「てか、いい加減離せ」
「やだ!このまま教室行く!」
「まあまあ、このまま行きましょ?」
「おい、俺をなだめるな」
「いくぞ~」
井上という増員によって、上手く丸め込まれてしまった。
俺は大人しく、白旗をあげた。
「〇〇、お昼たべよ~」
「どうせ断っても近くで食べるくせに」
「むぅ、そこは"いいよ"でいいじゃん」
「女心が分かってないな〜」
文句をたれながらも、お昼の準備を進める咲月。
可愛いランチマットに包まれたお弁当からは、色鮮やかなおかずが見える。
「あ、ねえねえねえねえねえねえ!」
「…なに」
「実はね…今日のお弁当、自分で作ったの!」
「うぇっ?!」
予想外過ぎる発言に、思わず声が出てしまう。
咲月に、こんな家庭的な面があったとは。
「すごいでしょ!すごいよね!」
「す、すごいと思う」
「やった~、〇〇に褒められちゃった!」
「俺に褒められたこと程度で喜ぶって、喜びのハードル低いな」
「だって、好きなひ…普段褒めない人から褒められたらうれしいじゃん!」
まあ、分からなくもない。
ツンデレのような、たまに来るデレが嬉しいからであるのと同じ原理だろう。
…俺はツンデレなのか?
「いただきま~す!ん~美味しい!」
「そうか、よかったな」
「あれれ、もしかして食べたいんですか~?」
「別にそんなこと言ってないだろ」
「もう、ツンデレなんだから~」
やはり俺はツンデレのようだ。
食べてはみたいが、咲月がせっかく自分のために作ったのだから、食べてしまっては申し訳ない。
「…食べてほしいんだけどな」
「ん?」
「なんでもないよ~だ」
「ん~、卵焼き美味しい~」
咲月とお昼を食べ、昼休みを終える。
食後で血糖値の高くなる午後の授業は、睡魔との戦いだ。
斜め前に座っている咲月は、気持ちよさそうに船を漕いでいる。
寝ているときもかわいいとは、ずるいものだ。
近くの席の男子たちの視線が、咲月の顔に集まっている。
「ふわぁ、よく寝た」
「睡眠学習、お疲れさま」
「うん…」
「まだ眠い?」
「うん、だから〇〇の家で寝る…」
「えっと、言ってる意味がわかんない」
「とりあえず〇〇の家行く」
「は、はい」
意味は分からなかったが、なぜか押し切られてしまった。
眠そうな割には準備の早い咲月と一緒に、自分の家に帰ってくる。
俺の家に入るや否や、咲月は俺の部屋に直行していく。
「はあ、ふかふか…」
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「入って早々、ベッドインですか」
「眠い…寝る」
「どうぞおやすみなさい」
「〇〇も寝よ…」
「俺は今日出された課題やるんで、1人で寝てて」
「やだぁ…」
「駄々こねんな…って、その腕は何?」
咲月は一緒に寝てほしいといわんばかりに、両手を広げている。
「んっ」
「いや、寝ないよ?」
「〇〇は咲月のこと…嫌い?」
「別にそうは言ってないじゃん」
「じゃあ…好き?」
「っ…それは…」
「咲月はね…好きだよ、〇〇のこと」
「ずっと前から…〇〇のことが好きなんだよ?」
「本当に…?」
「うん、だから、一緒に寝よ?」
「好きな人の温もり感じながら寝たいな…」
咲月から伝えられた好きという気持ち。
その一言が、僕の中に閉じ込めていた気持ちを溢れさせた。
幼なじみだから、マドンナだから。
そうやって閉じ込めていた咲月への気持ちが、堰を切ったように溢れてきた。
「…隣、スペース空けて」
「んふふ、はい、どーぞ」
咲月が空けてくれたスペースに入り、添い寝の完成。
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「へへっ、〇〇の顔が近いや…//」
「〇〇って、やっぱりかっこいいよね」
「そんなことないし…//」
「咲月こそ、めっちゃかわいいよ」
「えへっ、〇〇に言われると嬉しいな…//」
「ねえ、もう1回言って?」
「咲月、世界で1番かわいいよ」
「咲月のこと、好き?」
「好きだよ」
「どのくらい好き?」
「世界を敵に回しても守りたいくらい好き」
「咲月も…〇〇が大好きだよ」
「ねぇ…ちゅーしよ?」
「いいよ、しよっか」
夕日の指す窓際のベッドで、僕たちは唇を重ねた。
かまってちゃん
人によって評価の変わる性格。
とある人にとっては「可愛い!」「放っておけない!」となり
とある人にとっては「めんどくさい」「正直うざい」となる。
どうやら僕は、前者のようだ。