アイドルである私の幼なじみだけは、ただの女の子として見てくれる
私は井上和
職業は、学生兼アイドルだ
そんな私に対して、みんなは優しいから、気をつかってくれる
女1:あ、和ちゃん、おはよう!
和:おはよう
女1:昨日の音楽番組見たよ!
女2:すごくかっこよかった!
和:あ、ありがとう…
男1:あ、井上さん!雑誌見ました!
男2:めっちゃ美しかったです!
和:あ、ありがとう、チェックしてくれて
女1:やっぱり和ちゃんって、ずっと完璧だやね…
女2:憧れちゃうよね〜
女1:生きてる次元が違うっていうか…
女2:和ちゃんと同じ学校にいられるだけ、私たち幸せだよね…
和:…
みんなに憧れられるのは、すごく嬉しいことだ
だけど、それがプレッシャーになっている
最近、表題曲のセンターを任され、学校での知名度はさらに上がった
それから、学校の人と会う度に
「応援してます!」
「いつも雑誌チェックしてます!」
そしてみんなの会話の中で
「和ちゃんって完璧だよね」
「あんな子に憧れちゃうよね」
ということを聞くことが増えた
私だって、普通の女の子
だから、部屋でダラダラだってするし、授業中に眠くなったりする
だけど、みんなの前では「アイドル」の井上和で居なきゃいけない
だからこそ…
あいつの前だけは、素でいたい
_____
和は幼なじみである〇〇と、登校していた
〇〇:ふわぁ…
和:眠そうだね
〇〇:夜更かししてた
和:何、私の動画でも見てた?笑
〇〇:なわけ
〇〇:てか、アイドルとして見られるの嫌なんじゃねえの?
和:まあ、そうだけどさ
〇〇:俺はアイドルだからって、特別扱いなんてしないからな〜
〇〇は和を置いて先に行く
和:ふっ、ありがたいよ!バシッ
〇〇:いたっ!アイドルが暴力振るった…
和:今の私はただの女の子の井上和ですぅ〜
〇〇:くっ…俺が特別扱いしないことをいいことに…
和:へへっ、ばぁかばぁか!
〇〇:ファンにこの姿見せてやりたいわ…
和:ふふっ、残念でした〜
女1:あ、和ちゃんおはよう!
和:あ、おはよう
女2:あのね!今度のライブチケット当たったよ!
女1:和ちゃんのアイドル姿、目に焼きつけるね!
和:あ、う、うん、ありがと…
〇〇:人気だな〜、井上和さん
和:なによ…
〇〇:いや、さすがアイドル様だな〜って
和:…
〇〇:まあ、お前みたいに可愛くてアイドルやってる人なんて、憧れられて当たり前か
和:なんでよ…
〇〇:ん?
和:〇〇だけは…と思ってたのに
〇〇:ごめん、何か言った?
和:…何も
和は〇〇を置いて教室に入った
〇〇:なんだよ、突然
その後、和は〇〇と話すことはなく、目を合わせることすらない
〇〇:なあ、和、次のじゅ…
和:私、用があるから
〇〇:そ、そっか…
冷たい和に、〇〇は懲りずに話しかけるも
〇〇:おい、昼飯一緒に…
和:先生に聞かなきゃいけないことあるから
〇〇:あ、そう…か
〇〇:俺、何したんだろ…
〇〇は、和がこんなにも冷たくする理由が分からず、困惑したままであった
_____
和:なんで…
和:〇〇だけは…素の私を見てくれてたと思ったのに…
和:はぁ…〇〇と話したいよ…
和:私が私でいられるのは…〇〇だけなのに…
_____
〇〇:和、なんで冷たいんだよ…
〇〇:アイドルの仕事、辛いのかな…
〇〇:でも、だとしたら、俺にできることは…
〇〇:いや、俺になんか…
ふと開いたスマホの画面には
和がアイドルになる前に撮った、満面の笑みを湛える和と〇〇のツーショットが映る
〇〇:やっぱり、俺は和の笑顔が好きだ…
〇〇:なら、やることは1つ…
〇〇は出かける準備をし、家を出た
和:はぁ…これからお仕事なのに…
すると和の家のチャイムが鳴る
和:だ、誰…?
和:え、〇〇…!?
和は恐る恐る、インターホンの通話ボタンを押す
和:ま、〇〇?
〇〇:和、話がしたい
〇〇:数分でいい、俺に時間をくれ
和:わ、わかった…
和は玄関のドアを開ける
〇〇:和…
和:何しに来たの…?
〇〇:和…好きだ
和:えっ…!?
〇〇:俺は…和のことが…和の笑顔が大好きだ
〇〇:なんで和が冷たくなったのか、正直分からない
〇〇:だけど…俺は和の笑顔が見たい
和:っ…
〇〇:俺にできることなら、なんでも言ってくれ!
和:ずるいよ…
〇〇:ん?
和:そんなの…ずるいよっ…!ギュッ
和は〇〇に抱きついた
〇〇:な…和?
和:お願い…聞いてくれるんでしょ?
〇〇:まあ…言ったけど
和:なら、一旦このままいさせて…
〇〇:おしご…
和:今は仕事の話したくない…
〇〇:そっか…わかったよ
〇〇は和に抱きつかれたまま、数分を過ごした
和:はぁ…ごめんね
〇〇:い、いや…
和:ねえ〇〇
〇〇:ん?
和:あのパン屋行こ?
〇〇:え、いいけど?
和:ふふっ、よしじゃあ向かおう!
〇〇:お、おぉ…
和は〇〇は、2人の行きつけのパン屋に行く
和:うわぁ…
〇〇:(パンにこんなにがっつくアイドルいるのか…?)
和:ねえ〇〇!これ美味しそうじゃない?
〇〇:お、美味しそうだな
和:これ食べよ〜っと
和:あ、これも美味しそ〜
和はその後も好きなパンを選び、そして家に帰宅
和:ふふっ、楽しみ〜
すっかり笑顔になった和を見た〇〇は思わず
〇〇:可愛いな…
和:え?
〇〇:あ、いや、何も…
和:なんて言ったの?
〇〇:い、いや…なんでも
和:か、可愛い?
〇〇:聞こえてるのかよ…
和:それはさ…
和:アイドルとして?1人の女の子として?
〇〇:え…それは…
〇〇:お、女の子として…かな
和:ふふっ…顔真っ赤じゃん笑
〇〇:い、言わせたのは和だろ!
和:あぁ、楽しっ
〇〇:(和が笑顔じゃなかったのって…)
〇〇:なあ、和
和:ん?
〇〇:俺、アイドルの和も好きだけどさ
〇〇:やっぱり、幼なじみの和の方が、好きだ
和:え…な…何…//
〇〇:いや、そういやこんなこと伝えたことなかったな、なんて
和:うぅ…
〇〇:ちょっ、なんで泣いてんの!?
和:う…うるしゃい…!
〇〇:お、俺の胸使うか?
和:ちゅかう…ギュッ
〇〇:久々に見たな、和の泣いてる姿
和:だって…みんなの憧れのアイドルは、泣いたりしないもん…
〇〇:(やっぱりな…)
〇〇:和、俺の前では、たくさん泣いていいからな?
和:うぅ…
〇〇:俺だけは、1人の女の子の和を好きだから
和:う…うわぁぁぁん…!
和は、今まで溜めていた気持ちが、〇〇の言葉によって開放される
和:うぅ…〇〇…
〇〇:どうした?
和:私…辛いよ…
和:どんなに頑張っても、先輩に追いつけないし…
和:アイドルっていうプレッシャーに潰されそうだし…
〇〇:そっか…
和:でも…〇〇がいるから…私は頑張れてるんだよ?
〇〇:そ、そうなのか?
和:もちろん…ファンの人の応援もありがたいけど…
和:素でいられるのは…〇〇の前だけなんだよ?
〇〇:そっか、嬉しいな…笑
和:だ…だから…
〇〇:だから?
和:…すぅ…すぅ…
〇〇:(和…頑張ってんだな)
〇〇は優しく、和を抱きしめた
〇〇:大好きだよ、和
和:…んふふ