#05 いろえんぴつめいろの夢
2017年2月22日 水曜日
小学校の角の教室。春だった。
教室に入ると、とくまる先生が教室の真ん中あたりに置いてある机の椅子に腰掛けていた。生徒は、一年生か二年生くらいの女の子と私のふたりきり。真ん中に机をふたつみっつ、みんなが向かい合わせになるようにくっつけて何かを作っていた。
机の上には、おりがみやマーカー、いろえんぴつ、のり、私の好きなマイルドライナーというペン。いろいろな筆記具、文房具が並べられていた。
先生から「いろえんぴつに色を塗ってあげて」と言われ、木目が残る白に近い淡い黄金色のいろえんぴつの軸に、私と女の子はマーカーやペンで色を塗り始めた。なるべく同じ色にかぶらないよう。
とても静かだった。窓が開いていて、春風が入ってくる。霞んでいる。
時間が経ったあと、一通り楽しんだ女の子は教室を出て行った。お母さんが迎えに来ておうちに帰ったのかもしれない。おやつを食べに、別の教室へ走って行ったのかもしれない。次は体育の時間なのかもしれない。
とくまる先生に「続きは明日かな」と花びらのような表情で告げられた。
「今日の放課後、部活はありますか」と聞くと「うん、あるよ」と答えた。
「やまだも連れてきてもいい?」
「いいよ、やまださんと一緒においでよ」
そう言いながら、かたわらに置いてあった楽器に触れて鳴らしてみた。先生が喋ると、時間がその時だけゆっくりと流れているような感覚になる。あるいは、1秒が2.5秒くらいになっている。
きっと楽器を使った部活なのだろうなと思いつつ、静かに教室をあとにする。
廊下はいつも少し肌寒い。
予鈴が鳴っているのに、私はまだ階段を往復していた。なかなか自分の教室にたどり着けないのだった。「このまま、部活の時間まであのあたたかい教室にいちゃえばよかった」。
廊下をぐるぐる。ぐるぐる。あの女の子はどこに行ったんだろう。
それから目が覚める。
私は学校の校舎内で迷子になるという夢をよく見る。前にもこんなことがあった。
それと、夢の中に出てくるとくまるさんは桜の花と春風を連れていることが多い。あのいろえんぴつも使ってみたかった。