憧れと郷愁のまち
地元に帰ってきたのは3年ほど前。
実家に帰ったのではなく、一人暮らしをしている。
今の住まいは中心街にもわりと近くて、便利なところだと思う。
高校を卒業して京都に行くまでは地元の中心街が超都会という認識だった。都会ど真ん中だった。
映画を見に行くとき、カラオケに行くとき、雑誌に載っていた服や雑貨を買いに行くとき。車や電車で40分近くかけて行っていた。
帰ってきてショックだったのは、あの頃よく行っていたファッションビルやファストフード店、本屋さんがことごとくなくなっていること。
今は駅近くにでっかいショッピングモールができて、市の若者や家族連れすべてがここに集っとんのか?ん?というくらいそこに吸い込まれていっている。
私がサブカル女になるきっかけになったヴィレヴァン…2店舗あったのに…今ショッピングモールに入ってるのより暗くてマニアックで興奮してたのに……
客層がほぼヤンキーカップルのフードコート、いつ来ても閉店セールをやってる服屋さん、立ち読みしてるとなんか結構な確率で勧誘された本屋さん…ビルごと消えてなくなってる……。
今思えばそんな寂れきったビルの中ですら都会的に感じていた。
すれ違うお姉さんお兄さんを「かっ、かっこいい~!」と羨望のまなざしで見ていた。
2000年代に熱心に買っていたピチレモンや二コラ、セブンティーン、CUTiEの影響もかなり大きい。載っていたようなファッションやメイク、ライフスタイルやインテリアへの憧れを今も持っている。
鮮烈なほどにポップで個性的でおもしろい。
あの頃は背伸びをして、私より上の世代の雑誌をよく読んでいた。だから私の中ではずっと2000年代のカルチャーはおしゃれでかっこよくて最先端なのだ。
中学生になったらメイクをしよう、高校生になったら服を作ってみよう、大学生になったら好きなものに囲まれたヴィレヴァンみたいな部屋にしよう。街ですれ違ったお姉さんみたいに。雑誌に載ってるモデルさんみたいに。
実際は校則や先輩(田舎のガチの輩)たちの目を気にして大人しくしていたし、服は安い既製品や姉(ひとまわり年上で当時ギャルだった)のおさがりほとんどだったし、部屋は大学生の頃から今に至るまで必要最低限のものだけ置いた殺風景な空間で過ごしているのだけど。
だからこそ、自分がなれなかったあの女の子たちに、あの非現実的なインテリアに今でもキュンとときめいてしまう。
その憧れを、どんどん変わっていく地元の街でも探している。
そのたび懐かしがれる場所がほとんど残っていないと打ちひしがれてしまう。
寂しくてたまらない。