(劇評)仲間の自殺が心に影を落とす
劇団べれゑ『青に溶ける、ひかり』(脚本:oto-bit、演出:知名采音)の劇評です。
2018年2月24日(土)15:00 金沢市民芸術村PIT2ドラマ工房
女子高生サトコ(金代晶)の自殺に仲良しグループのアヤ(原田明日華)、サヤカ(知名采音)、ミイコ(古林珠実)は衝撃を受ける。サトコは同性愛的な関係にあるアヤから別れを告げられ、刃物で刺した。アヤは大事に至らなかったが、サトコは屋上から飛び降りた。卒業式の日、親友の不在が3人の心に影を落とす。何も起こらない日常に苛立っていたくせに、起こってしまった何かを受け止めきれない。そんな矛盾を抱えて立ちつくす若者たちの姿を描いた。
天井から吊り下げた青い布による透明感溢れる空間構成が美しかった(美術:宇都宮未来、原夏恋、本田達也、深澤奈生)。若いレズビアン同士の青いつぼみのような愛情表現などには独特の魅力があった。
残された3人とも無気力で何もやりたいことがない設定なのが惜しい。ただワーワー騒ぐだけで、死の受け止め方がワンパターン。彼女の絶望を理解しようとしない。何かに真剣に打ち込む人物を登場させれば、もっと個性的に反応し、死のリアリティも深まったのではないか。
セリフの喋り方をはじめ、カラオケのようにマイクを使って会話するシーンや夜明けの3時間前といった微妙な時間設定などは東京の新しい世代の劇団、特にマームとジプシーあたりの強い影響を感じさせた。
演出の知名は東京でよく芝居を観るのだろう。それは大事なことで、最初は誰でも好きな作品のコピーから始まる。最前線の影響をきちんと受けた若手の存在は金沢では珍しく、今後の知名の展開が楽しみだ。2月23〜25日、金沢市民芸術村ドラマ工房で上演された。
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