『恋する惑星 4Kレストア版』を観ました

Blu-rayも持っているけど、映画館で一週間のリバイバル上映がやっているというので観に行ってきた。
奇天烈なストーリーテリングではある。

しかし映画としての運動体としてスクリーンに溺れるような体感がある。
目視で何が起こっているのか捉えきれない、スローと手持ちカメラの残像のような映像群。
アヴァンギャルドな音楽がかかる冒頭から世界観に引き込まれる。
九龍の街並みからこちらに匂いが立ち込めていくるような質感と空気感に爆音で何度も流れる『夢のカリフォルニア』

MVのようにも見えるが、それはMVとは言えない何か。
フィクショナルな色彩の色幅にアジアの都市に生きる人たちの息遣いが聞こえてくるような感覚。
運動体として映像、音、キャストの妙が噛み合ってくるのだ。

鏡越しや、鏡に映り込む誰か。
広角カメラに対して画面斜めの線状に人物を配置するような独特な画角。
突然のパンアップなどカメラもまた生きているように暴れてくる。
見ようによっては「ドキュメンタリー」のように撮られているとも言えるし、そうした形態の方法論にも仕上げることも出来るのであろうが、フェイクドキュメンタリー的に存在することはなく、あくまでその作品の一つの魅力的な要素の一つとしてクリストファー・ドイルのカメラは自立しているような感覚を受けた。

実験的な構成が物語を読み解くというよりも、悦楽していくような感覚。
筆者の好きな『天使のはらわた 赤い教室』のような色彩と暗がりの中、本作は出来る限りのポップさを提示してこようとする。

クサい台詞の数々も病みつきになってくる。リアリティラインで見れば爆死しそうな台詞のそれが、ここは銀幕の世界であり、そうしたやりすぎなポエジーがハマっていく。
体験として一種のナルシズムに堕ちていくような、キマっていく感覚がある。

トニー・レオンをはじめとするキャストたちからは洋系キャストから醸し出すことの出来ない、アジアの色気が立ち込める。白いランニングに白いブリーフ。本来であればダサいという記号の男性下着をこうも都市と一体化して孤高に生きる男のマストアイテムにするとは。

一回性を強く感じるバランス感覚。
こうしたカメラや音響効果をふんだんに使う本作の動きが私は生理的に好きである。

ああ、打ちのめされた。堪能しました。


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