今成夢人
今成夢人の映画に関する感想・駄文・批評など
もうあまり残っていない母との記憶を、呼び戻してなんとか書き起こしている何か
私が大学に入学したのが2006年。映画の授業があり、その授業に感銘を受けて自分の専攻を映像にしていこうと決めた。本来なら入学前に自分の路線や専攻の流れってある程度決まっているものなのだけど、その授業に衝撃を受けたことであっさりと方針を変えた。「視点」が違えば世の中の見方も変わる。「視点」というテーマで様々な映画を紹介してもらえることで、文字通り新たな視点を獲得していった感覚になれた私は映画の深みにハマっていった。まだ20歳の頃で、これでも映画が好きだと自覚的になるには遅いくら
山形国際ドキュメンタリー映画祭に行ってみたい。浴びるほどに世界各国のドキュメンタリーを山形に行って集中的に見てみたいものだ。 だが、しばらく会社員をやっていたもので、これまで行ける時間がなかった。 2025年は行けるかなあ。 だから東京で山形国際ドキュメンタリー映画祭でかかっていた作品が見られるのがとてもありがたい。 日本で多くても100人〜200人くらいしか見ていないだろう映画だが、それでもこうやって東京で特集上映があると良い作品に出会える事がある。 誰かにこの作品を広め
ノルウェーの人里離れた渓谷「オルデダーレン」で生きる年老いた父母を作家となった娘が撮影しようとしたドキュメンタリー。 もっと親子関係に迫るパーソナルな雰囲気なのかと思いきや、親子の対話らしいものはなく、本編は渓谷そのものの景色を主に撮影している。杖を使いながら歩いている老夫。広大な自然に対して、その存在はちっぽけな存在のように思える。そこにモノローグのような語りがある。 エピローグ、春、夏、秋、冬、プロローグと構成はわかりやすく分かれているが、季節で明確に景色の違いがある
ドキュメンタリーとはなんだろう?と日々考える。 山形国際ドキュメンタリー映画祭の出品作品を見ると、ドキュメンタリーとはほぼ自己申告制で、その体裁や文法もなんでもありだなと思わせてくれます。 普段テレビで見るドキュメンタリーらしいドキュメンタリーの文法とは一線を画しています。 『ナイト・ウォーク』はとんでもなく地味な作品でした。 サイレント、無音。しかもほぼモノクロに近いレベルでネイビーの夜景のショットがいくつかあるだけです。 映画の紹介文を見ると、 川のせせらぎに誘われ
『バービー』で今をときめくグレタ・ガーウィグの初期作群がしれっと劇場公開されているので、どうしても観に行きたくなり劇場へ。マンブルコアと呼ばれる2000年代の低予算自主映画群の一つである。 あまりマンブルコアの作品を視聴するにはこれだけインターネットが開かれていてもなかなか機会がなく、個人的に低予算である映画作りや、インディペンデントであること、今売れた人がどんな初期作を作っていたかに大変関心がある。ちょっとしたインディー映画マニアみたいな気質があるのかもしれない。 2作
昨日は後楽園ホールにガンバレ☆プロレス所属の中村宗達の応援に行ってきた。 自分で参戦を直訴して、佐々木貴さんがその男気に応えてくれた。 若者に門戸解放をしたリングで、若者であるムネはその若者である特権の無鉄砲さでそのチャンスに飛びついた。 普段から一緒に練習をしたりしている男が躍動している瞬間を見届けた。眩しい。あまりに眩しかった。 私は気がつくと39歳になった。 私には既に「若さ」という機会は失われた。若さがあったからこそ出来たことや叶えられたことが出来ていたかは正直分
同一キャストが3つの違うオムニバス作品に出演している。オムニバス3作品はどれも異なる作品だけど、どこはかとなく共通した一貫したテーマのようなものが見受けられる。 違うキャラクターを演じているから、役者は役者という仕事の凄味をこれでもかと見せてくる。 今作は特にジェシー・プレモンスとエマ・ストーンのあまりに異なる役柄の違いに魅了される。それぞれが魅力的というのもあるが、役者ってすげえということがシンプルに各章毎の差異として提示される。これが本作品の楽しみ方の一つとなっていて、
中国の映画。SNSの感想で「映画の展開が急に『レクイエム・フォー・ドリーム』のようになる」というような感想を見て、観てみたい!となりました。 『レクイエム・フォー・ドリーム』はドラッグによって破滅していく人を描いた作品で、ケレン味溢れる演出が好きな作品でした。鬱々とした作品で、げんなりしますが、映画として強烈なエネルギーを持った作品で、タイトルにある夢という概念を根底から覆す地獄を見せてくれます。 きちんと地獄を地獄として映してくれる映画を信用していますし、生きていく養分
とても面白い。R・リンクレイター監督の手慣れというか、仕上げられるチカラみたいなものがこれでもかと。小気味のいいテンポといい意味での軽さが観る側に心地いい進行感覚をもたらしてくれていて、さすが!となる。 殺し屋のおとり捜査官、グレン・パウエルの7変化のような変わりようが面白い。クライアントに合わせて、変装をしていく様子は俳優の妙というか、どれも「こんなヤツいる!」を的確に抑えていて面白い。トランプ支持者みたいな見た目のヤツとか、サイコパス系のヤツとか。どれも絶妙なラインを突
マルホランド・ドライブ4K 約2時間半、どっぷりとリンチワールドに浸かる。 なんだかよく分からないという感覚もあるし、考察サイトを見て答え合わせをついしてしまうような感覚もある。もっと直感的に見ている自分もいる。 考察系のYouTubeや記事はネット空間にいくらでもある。 私が感じたのは「夢」というものに対して解釈も、それを表現する自由度が高いものだということであり、映像表現というのは多かれ少なかれ「夢のようなもの」を提示するものだということをマルホランド・ドライブの
配信スタート後、全6回を一気見。圧巻のドキュメンタリーシリーズ。こうした作品のアプローチに対しては好き嫌いあれど今年のNo.1と言って差し支えないのではないでしょうか。 日本でこうした作品を作るのは恐らくは無理だと思われます。巨大帝国アメリカだからこその炙り出せる力があります。特にインサートしている映像がとにかくピンポイント過ぎて、よく見つけてきたなと思わされる映像ばかりです。そうした過去映像のインサートの使い方一つにしてもドキュメンタリーとして帯びる説得力が段違いに違いま
9月23日はガンプロ横浜大会です。 各選手、気合いが入っているのはもちろんですが、8月大会が台風で中止になってしまったことの余波が少なからずあります。メーンイベントのタイトル戦はそのままスライドで移行していますが、それ以外のカードは変更となり選手たちに与えられたテーマや主題探しもそのまま変動となっています。気持ちをそのまま持ち続けているであろう石井さん、和田さんに感服しますし、変更カードにも真摯に向き合っているみんなもよくやってると思います。 興行開催数がものを言う世界では
これはすごいドキュメンタリー映画でした。 凄いという言葉が正確かは分かりません。ですが、映像を記録していくことに表現をすることの意義を内包していくドキュメンタリーのジャンルとして記憶を失っていくアルツハイマーの男性をカメラで映し出すことによってドキュメンタリー映画による「記憶-記録」のファクターをこれでもかと炙り出していると感じます。 アルツハイマーを患ったアウグストはジャーナリストであり、チリの独裁政権時代に街に出てインタビューをしていく映像を収録するなどの仕事をしていま
Blu-rayも持っているけど、映画館で一週間のリバイバル上映がやっているというので観に行ってきた。 奇天烈なストーリーテリングではある。 しかし映画としての運動体としてスクリーンに溺れるような体感がある。 目視で何が起こっているのか捉えきれない、スローと手持ちカメラの残像のような映像群。 アヴァンギャルドな音楽がかかる冒頭から世界観に引き込まれる。 九龍の街並みからこちらに匂いが立ち込めていくるような質感と空気感に爆音で何度も流れる『夢のカリフォルニア』 MVのようにも
とんでもない映画である。 1979年の全斗煥によるクーデターを描いた作品。 フィクションによる添加はあるとはいえ、このような出来事が韓国内であったということにまず驚きがある。クーデターによることを機に大統領が誕生している、映画の結末にたどり着いた時に、唖然とさせられる感情が自分の中に横たわっている。 140分、映画として全くダレることのない、凄まじいテンポと情報量だが、対立概念はシンプルなので非常に見やすい構成となっている。日本だけのテロップなのか、字幕で迷子にならないよう
先日、Netflixで話題の『地面師たち』を一気見した。 話題になる要素はこれでもかと散りばめられているが、中でも役者陣たちのハマりっぷリがとても印象に残る。 豊川悦司(以下、敬意を込めて敬称のトヨエツと表記させていただきたい)演じるハリソン山中の存在感は群を抜いていた。どこかで真似をしたくなるような風貌や喋り方。キャラが立っていて忘れ難い。 そんな渦中の中Threadsで『地面師たち』のトヨエツと、『愛していると言ってくれ』のトヨエツを並べる画像の投稿を見かけた。年の重