『アクアマン/失われた王国』を映画として成立させたワン監督のプロフェッショナルな仕事に感動する

アクアマンの続編である『アクアマン/失われた王国』をIMAX 3Dで観たんです。
感想を言うと「楽しかった!」という感じ。
縦軸に深さがある感じではなくて、勧善懲悪の物語を楽しんだなという感じ。
正直言えば映画自体に前作ほどの興奮や展開を凌駕することはなかったなという感じもします。
もっと!もっと!と欲しがりたくなってしまうけど、楽しかったんだから良し!という感じ。
なんだかんだとしっかりと気持ちに着地が出来ます。

仲間のタコが可愛い🐙

ですが、この『アクアマン2』の制作背景を書いた加藤よしきさんの記事を読むと、その印象は吹き飛びました。

https://realsound.jp/movie/2024/01/post-1546839.html

よく頑張った。よく成立させた。よくこのゴダゴダを感じさせない作りにまとめられた。もう100点満点!という気持ちになります。

スタジオの体制や方針変化によるゴダゴダ。
主演女優アンバー・ハードのジョニー・デップとの泥沼離婚裁判劇によって、彼女が出るシーンのカット数が削減されたという話も。

なんかこれらのエピソードが全く他人事じゃなかったんです。
プロレスラーと映像作家をやってると、そういうことが日常茶飯事。

選手の怪我や病気による対戦カードの変更は仕方がないにしても、親会社の方針の変動により興行スケジュールや流れに大きくムラが出たり。ゲート収入よりも映像配信による収益を大事にすると言っていたら、一転ゲート収入を大事にしましょうね!と方針が変わったり。

映像の編集でも、このAという人を出したいのだが、そのためにはBとCが一緒に映るのはNGだからBとCが映るカットは全部削ってください〜
とか。

まあ、とにかくそういうことが多い。思い描いていたことや、事前に予測していたことが計画通りに運ばなかったり。
自分ではない誰かや組織のしょーもないこと政治的な事情によってかけられる徒労の数々。
またそのしょーもないことを司る力を持つ人たちが、その細かな徒労を理解していないという虚しさ。

ああああ、これ他人事ではないなと思うわけです。

そんなことを思うと、この『アクアマン/失われた王国』はよくここまで持ち直した!凄い!プロフェッショナル!とスタンディングオベーションをしたくなります。

とにかく楽しい映画に振り切って、バディものの映画として"成立"させたジェームズ・ワン監督凄すぎない!?となります。
もう自分だったらどの地点で投げ出していたんだろうと思います。

とにかく最後まで諦めずに、様々な創意工夫をして軌道修正するチカラって、もうプロの仕事以外に何物でもないんじゃないかなって思います。

そしてその軌道修正に役立つのは王道のフォーマットだと感じました。
前作で抗争してた兄弟の二人が、続編ではタッグを組む。王道中の王道。それでも観ていて気持ちはアガる。王道のフォーマットをきちんと抑えているだけで、制作体制が大変な状況でも映画ってしっかりと完成するんだ、満足感があるものを与えられるんだという気持ちになった。

加えてIMAX 3Dで観たこともあって"楽しい"という感情をアトラクション要素によって更に引き出してもらったような格好です。
この映画の仕事に俺の憧れはありました。
とにかくよく分からない難題があっても成立させられるチカラ。士気を下げさせずにスタッフ、キャストを引っ張り上げるチカラ。
ジェームズ・ワン監督、もっと好きになりました。

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