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『ヒットマン』を観ました

とても面白い。R・リンクレイター監督の手慣れというか、仕上げられるチカラみたいなものがこれでもかと。小気味のいいテンポといい意味での軽さが観る側に心地いい進行感覚をもたらしてくれていて、さすが!となる。

殺し屋のおとり捜査官、グレン・パウエルの7変化のような変わりようが面白い。クライアントに合わせて、変装をしていく様子は俳優の妙というか、どれも「こんなヤツいる!」を的確に抑えていて面白い。トランプ支持者みたいな見た目のヤツとか、サイコパス系のヤツとか。どれも絶妙なラインを突いてくる。アメリカの日常はキャラクターの宝庫だ�と思わされる。グラセフをプレイするとやっぱりいろんなアメリカ人がいて、それだけゲーム化していくだけの類型化されたキャラクターがいるのだなと感じるけど、今回の変化もそれに合わせられた素晴らしいキャラチェンだった。それをサクサクとテンポよく編集で紹介してしまう。一種のそういった話術というか、しつこくしない感じに監督の手馴れがあると感じる。

いろんなタイプの殺し屋を演じながら、そうしたキャラクターというものがパターンの類型化していく面白さ。ここが前半部の没入感を上げてくれたように思う。すなわちコメディなんだという仕掛け。これはロバート秋山のキャラクターの妙だったり、RGのモノマネだったり変化が出来るタイプの芸を持っている人の面白さにも通じると感じる。そうした強みがあるだけで、こうした7変化をしていくというプロットを持った映画を担えるのだから凄いなと思う。ちゃんと面白くて、映画を牽引力にもなっているところが。下手したらただの悪ノリにになるところをリンクレイターの手馴れた手腕によってそうはさせていないところがすげえ。(語彙力がついていかないくらいの面白さ)

愛国的なTシャツがミソ

その中で演じた伊達男ともいうべきキャラクターが、本作のヒロインであるアドリア・アルホナとの遭遇になっていくのだけども、この二人がいい男女だなというか、ロマコメの二人組として非常にいいバランスなのだ。ペネロペ・クルスを彷彿とさせるはっきりとした顔立ちと色気が映画の牽引力になっていくのだ。

この映画、しっかり色気が魅力になっているのがいいなと思う。キャストの艶が見入ってしまう。また艶そのものが帯びる説得力というか。コテコテのベッドシーンなんかも面白く見れてしまう。

後半部はこの男女二人のやり取りに展開に主軸が置かれていく。二人ともかっこよくて、可愛げがある絶妙さを放ちながら、会話のシンクロニシティが高い。実際のところグレン・パウエルが本を書いている部分もあるのだろうけど、リンクレイターのビフォア3部作を手がけた、俳優たちを信用しているような距離感と眼差しがいいのだよね。

特にスマフォのメモ機能を駆使しながら一芝居を打っていく場面は本当に面白い。盗聴の気づかれないように、ジェスチャーでニュアンスを指示しながらコラコラ問答のような不毛なやり取りを即興的にやっているように見せてくれる。この二人の芸達者っぷりがまあ面白く、そして微笑ましく。特にここの場面はシンプルな切り返しショットでほぼ構成されていて、前半部のナレーションを駆使したり、横ワイプの編集をしたりという技法やギミックを使っての進行から一転、後半部は俳優の芝居に預けていく感じがとてもよかった。それが特に前半部のギミックを多用した形が活きてくる。この構成の妙よ!

この映画、メッセージ性はシンプルに込められていて「なりたい自分になる」ということだったりする。
おとりの殺し屋を数パターン演じながら、どれがなりたい自分だったのだろう? そのなりたい自分で運命を変えるような出来事があったのはどのキャラクターだっただろう?

なりたい自分になるということを、様々なケースで試してきた男が見せるメッセージ性に華と艶があった。
素晴らしい作品でございました。

ブラボー👏

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