舞いあがれ!ジャガンナート♪(凧製作までの顛末その1)
私は生来、凧を作った記憶は無いし、凧上げの経験と言えば正月にコンビニでも売っているような三角のビニール凧くらいです。
そんな私が伝統的な和凧の製作にかかるなど若干無謀な気もしましたが、今時この情報化社会にインターネットを使って出来ないことはないと、タカをくくくってもいました。
しかし、いくら探しても長崎の鬼凧、とりわけ鬼洋蝶の作り方に関する情報は皆無で、いきなり壁にぶつかった形になりました。
いやいや、わかりましたよ。それなら実物があれば良いんでしょ?という事で、今時だいたいのものはヤフオクで手に入るんだぜ!と思いましたが、意外に出品数は少なく、とりあえず小さいのをポチっと。
いやいや、全くどうして良いかわからんわ。
これはもう、作れる人に聞くしかないです。
ということで、ネットの情報から何とか伝統的な和凧を作っている会の会長さんに連絡を取ることが出来きました。
「あ、あの、ワタクシ、友人へのプレゼントに長崎の和凧を作りたくてですね、その、作り方がわからないもので、もしかしたら会長さんならお分かりになられるのではないかと思いまして、お電話させていただきました。」
「長崎の凧?それなら鬼凧?バラモン?」
「鬼洋蝶と言うのですが。」
「ああ、鬼洋蝶か、資料は少しありますし、バラモン凧なら作ったことがありますのでお役には立てると思いますよ。」
なんて話の早い。ということで、いつも凧上げをしているという河川敷まで伺うことになりました。
当日、その場所には良く晴れた空に強い風を受けて上がるバラモン凧が「ブーーーーン」と唸り音を立てながら大空を舞っていました。
和凧の実物を見るのも初めてで、空に上がっているのを実際に見るのも初めてでしたが、一発で引き込まれました。俺もあんなカッコいい凧が作りたい!
会長さんにフリマサイトで買った鬼洋蝶を見せると、「これは飛ばないですね。お土産用だから骨組みも太いし、組み方も間違ってる。」
会長さんのバラモン凧は全長70cm〜80cmくらいありますが、竹製の骨組みはとても細く薄く出来ています。
「最低でも幅3mm、厚みが2.5mです。私のは幅2.5mmで2.0mmです。もっと削ることもあります。」「削る?竹ひごを使うのではなくて、わざわざ削るんですか?」「真竹を3年以上乾燥させたものを割って使います。伝統的な凧を作る時は100年以上農家などの茅葺き屋根の下地に使われていた竹を使います。よく燻されて良い色になっています。でも、もうなかなか手に入らないですね。」「それって、茶道なんかでは茶杓を作る材料にするめちゃくちゃ高級な竹ですよね?」「そうです。」
なるほど、これはガチだ(笑)
会長さんの作った凧は実に多彩。
やさしくも鮮明な色使いで丁寧に作られていて、惚れ惚れすると同時に、自分に作れるのかどうか一気に不安にもなる。
ともかく凧の設計をしなければならないので、まずは鬼洋蝶の資料のコピーをいただきました。
資料の多くは絶版になっていて、骨組みの写真なんかはネットにも載っていません。これだけでも非常に貴重な資料です。
サイズを計り、セブンイレブンのコピー機のポスター印刷という機能を使い、B3で4枚。これを切って繋いで大元の型を取ります。
それを模造紙に写し取りながら、縦と横の長さが合うように調整して、シンメトリーになるように書き、縦が70cm、横幅の最大が56cmに決まりました。
そして、凧の本体となる和紙に型を写し書きしていくわけですが、この和紙探しもなかなか大変でした。和紙の規格の単位は匁を使うそうで、今回のサイズだと六匁が最適であろうという会長さんの助言がありましたので、和紙をたくさん扱っている画材屋さんで自信満々にこう言ったわけです。
「六匁の和紙で80cm×62cm以上の無地のものを下さい♪」
「六匁って何ですか?」
「え?だから、和紙の規格で六匁ですよ、やだなぁ。」
「ちょっと分からないんですが、実際に見ていただいてはどうですか?」
「え?見てもわからないですよ。。。」
因みに和紙の六匁とはおよそ33~38g/㎡という規格だそうで、画材屋さんで通じないとなれば一体どこの界隈で通じるのでしょう?紙業者と建具業界でしょうか?
ともあれ、都市部のデパートのそこそこの面積を占めるその画材屋さんでも分からず、業者さんに聞いてもらうということでしたが、後日連絡があり、どうも指定の和紙は無地の在庫が無いとのことでした。
そこで会長さんに教えていただいていたのが熱田神宮のすぐ横にある専門店「紙の温度」さんです。
日曜日が定休日なので、予定が無い週末の土曜日にようやく行くことができました。
ここはさすが六匁と伝えると非常にスムーズにいくつかの和紙を提示してくれました。
これでやっと製作にかかれる♪
型を取り、この形に竹の骨組を作って、和紙に絵を描いて貼る。
スタートラインに立つまで一苦労ですが、文字通りここからが苦難の道のスタート地点でした。
まだつづく