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バターチキンの本質とは

とあるカレーの大御所から聞いてなるほど!!と思った話をしたいのですが、ここはひとつ、インド人はただインド料理を作っているだけで、(外国人が勝手に名付けた)カレーを作っているつもりはないという話を前にしましたので、そういうことを念頭に置いていただければと思います。

カレーに関する一考|Deep forest @FORESTFISHING #note https://note.com/yumegamegamori/n/n283b97785b62

インド料理と言えば、町のインド・ネパール料理屋さんのナン食べ放題の980円ランチでデビューなんて方も多いのではないでしょうか?
いかにもインド!象の神様!金キラな装飾!で何となく入りづらいあの空間から漂うスパイスの匂いに誘われて入店し、そこで最初に食べる料理がバターチキンカレーという感じがします。まあ違う人もいるでしょうけど。

そういった、いわゆるインネパ屋さんのバターチキンカレーは本当に定番で、割と人気もあります。

しかし、これが本場の味かぁと遠くインドの地に思いを馳せたあの頃の、みんな大好きバターチキンカレーも、インド料理にハマって食べ歩くようになったような人達には何だか物足りない、ありきたりな料理になってしまうこともあるようで、そう言えばいつしか自分も前に食べたのはいつだっけ?というくらい疎遠になっていました。

確かによくあるインネパ屋さんのバターチキンカレーはそれだけ平凡な料理です。
バターとトマトペーストにパウダースパイスとチキン、生クリームを入れて煮込んだら、はい、出来上がり。だいたいそんなものです。この材料で不味いはずがありませんが。

でも、インド料理の奥深さをよく知る日本のシェフ達は不思議に思うわけです。何でこんな平凡な料理がインド料理の定番なんだろうか?と。
そこで、具材を加えてみたり、スパイスを工夫してみたり、いろいろやってみるんですが、美味しいカレーが出来るだけなんですね。例えば、赤だしのなめこ汁に加えて許されるのは豆腐くらいのもの。それ以上は美味しくなったとしてもはや別物です。

そもそも元祖のレシピはインドの有名レストランであり、タンドリーチキン発祥のお店であるモティ・マハルで1950年代に産み出されたんだそうで、どうやらここに正解がありそうです。

ここで、バターチキンはカレーに非ずという話になります。どういうことかと言うと、つまりモティ・マハルのバターチキンのチキンはあくまでカレーソースで食べるタンドリーチキンだということです。タンドリーチキンを食べるためにバターとトマトと生クリームを主体にスパイスを加えて作るソースが出来たということなんですね。
文化的にインド人がグリルチキンとトマトソースを作ればそりゃ行き着く先はこういう料理ですよね。


だから、カレーを作るつもりでバターチキンを作っていてはいつまでも正解にたどりつきません。
美味しいタンドリーチキンを作ってこそのバターチキンであり、それがとても美味しいから日本のインド料理屋さんで定番メニューなんですね。

ただ、日本のインド料理屋さんの多くは実はネパール人が経営していることが多いですし、店員さんもインド人かと思いきやスリランカ人やバングラデシュ人だったりします。むしろインド人は少ないかもしれません。モティ・マハルも外国人観光客向けの高級店だそうですので、普通のインド人はそもそもバターチキンをあんまり食べないかもしれません。

また、我々日本人はたいてい美味しい味噌汁の味を知っているからこそ、牛丼屋チェーン店や安い食堂で出されるような簡易味噌汁でもとりあえず飲みますが、外国人がそんな味噌汁を飲んで、味噌汁とはこんな平凡なものかと感じたとすれば、ひょっとすると、我々は本物のバターチキンを知らずして、インネパ屋さんの食べ放題ランチの簡易バターチキンをそんな感じで平凡と評してしまっていたのかもしれません。

スパイスとレモン汁とヨーグルト、チャットマサラでマリネして、タンドールで焼いた美味しいタンドリーチキン。

ソースはバターとスパイスを加えたトマトをこれでもかと炒めて作ります。

これを生クリームで伸ばして、ソースに仕立て、チキンを加えます。

これは敢えて色濃く作りましたが、見た目はカレーでも、工程を知ればカレーじゃないことがわかりますね。このやり方のバターチキンはとても美味しいんです。
最初から材料を全部一緒の鍋に入れて煮込んで作ったら全く別の味わいになってしまいますし、そういうやり方で「カレー」を作るんだったら、もっと美味しいカレーがあります。

カレーのように見えてカレーじゃないバターチキン。

私はこれを知って目からウロコだったのですが、果たして他の方はどう感じるのでしょうかね。

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