あのころのまぼろしじゃなくて
11月6日、駆けつけたファンに見守られおこなわれたチャンピオンリング贈呈式は、
さながら「ブレックスの安斎竜三」の卒業式だった。
2021-22、チームが勢いづきドラマチックな優勝を遂げることを予期していたかのように、シーズン終盤になるにつれどんどん凜々しい顔になっていった竜三さん。
越谷アルファーズのアドバイザーとして初めてファンの前にあらわれた8月の公開練習、
カジュアルなTシャツ姿ということを差し引いても、かなり肩の力が抜け、やわらかい表情の竜三さんがそこにいた。
シーズンがはじまっても、ベンチの後ろに座って選手個人にアドバイスをする様子は、これまでみてきたような責任を一身に背負ってたたかう姿とは違っていて、
応援されるチームにしたい、昇格させたいと語り、もり立てる一助になればと積極的にSNSを活用するようになったことはわかっていても、
ここはとりあえずの居場所なのではないかと勝手に想像してしまっていた。
そしてブレックスの試合を配信でみては、竜三さんの作ったチームとは違うことを痛感し、
竜三さんが引き続きブレックスを気にかけている様子に切なくなり、
現地で迎えたホーム開幕、何度となく名前を聞いてきたオープニングでは、Sekiさんの声で「ヘッドコーチ、佐々宜夫」と響いた瞬間、胸のまんなかが空洞になったようにすぅっとして…
頻繁に会いにいける距離にいることに安堵しつつも、やはり喪失感がある滑りだしだった。
贈呈式の前日、引退セレモニーがあった神ちゃんといっしょに、竜三さんがはじめてネギタッチの列に加わるのを目撃する。
試合会場ではいつも一歩ひいたような振る舞いだったのに…。
そしてこの週に公式から公開された動画たち。
ほんの少し変化した振る舞い、狙ったように折よくもたらされる情報。
そしてあの激おこ。
これらを目の当たりにして、わたしはきちんと理解した。
いま心血を注ぐのも、守りたくて激おこするのも、越谷アルファーズ。
わたしがみているのはアルファーズのアドバイザーで、ミスターブレックスなHCとは、同じだけど違う。
ここでしっかりと根をおろして、腰を据えて、引き受ける覚悟がある、2日間でそれをたっぷり伝えてもらったように感じた。
贈呈式では何度もリングをはめた手元をみつめ、にこにこしていた竜三さん。
会場のあちこちにいる黄色いファンと、おだやかによろこびを共有していた。
やり遂げた、すべて終わった、あらためてそんな気持ちだったんじゃないかなと思う。
退任の発表があってから挨拶する機会がなかったファンにとっても、「ブレックスの安齋竜三」に別れを告げる大切な儀式になった。
選手にも笑顔があふれた集合写真は、竜三さんがすっかりチームの一員として愛されていることが伝わってきたし、
自クラブでの優勝でもないのに間近で直接言葉を伝えられるファンとの撮影会を企画してくれた運営があたたかくて、
この先もたくさんのよろこびをこのチームで共有してほしいと素直に思った。
わたしはもう、いつかまたブレックスに…とは思わない。
「ブレックスの安齋竜三」から変わらないでいてほしいとも思わない。
竜三さんの新章を、そのまままるごと応援したい。
大丈夫だ。
わたしの2022-23シーズン、あらためてはじまった…!