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10. ドクター
どんな薬もいらない。
癒しの手も必要ない。
傷がある事なんて認めない。
強がって、強がって―
そうしなければ生きていけない。
人に頼れば全てを委ねてしまいそうで
自分で歩く事さえ出来なくなりそうで
怖かった……
「おいでよ」
差し出された手は私が望んでいたもの。
欲しくて欲しくて堪らないもの。
でも、その手を掴む事が出来ない。
「気が向いたらでいいよ」
いつも強制はしない。
歩き出す私を待ってくれる気がした。
その扉は重く、厚く、手をかける度に痺れが走る。
「あ、かいぬし~」
でもそう呼んでくれる声がいるから、私は笑顔になれる。
ねぇ知ってる?
あなたの声が私の薬。
あなたの手が私の癒し。
傷があることを気づかせてくれた。
あなたが私の心のドクター。