1話 新しい制服と古い校舎
中学も制服だった。
ブラウスは小学校の物をそのまま使えるが、新しくそろえる人が多かった。
冬はセーラー。夏はブラウスに紐リボンの制服だった。
小学校で使えたズボンの制服は、中学ではなくなった。
真冬は下半身が冷えて死にそうだった事を覚えている。
雪国で真冬もスカートだったのは、なぜなのかいまだに分からない。
私はオシャレではないので、防寒着としてズボン着用したかった。
変わったのは制服だけではなく、校舎もだった。
白くてY字だった小学校の校舎。
対して、中学校の校舎は黒っぽいロ字の校舎だった。
小学校と中学校は道路を挟んだ向かい側だったので、通学時間も通学路も変わらない。
ただ、校舎が変わった。
小学校6年間ずっと道路越しに見ていたそれは、思った以上に古かった。
コンクリート製だったが、そのコンクリートは剥がれ落ちる事がよくあった。
朝の会では「北側・部室近くでコンクリ片の落下が見つかったので、近づかないように」という注意事項がある。ロープが張られたこともあった。
そんな校舎なので、私が小学4年の頃には、建て替えの話がすでに出ていた。
年上のお姉さんは「あんたたちが中学に入学するころには、建て替えが終わっているわよ」なんて言っていた。
建て替えの用地のために小学校のサツマイモ畑が消えても、一向に建て替えが進むことはなかった。
母は「私が入学するころに火事があって、建て替えられたのよ」と話してくれた。
そして、母が通った校舎に、私も入学することになった。
歴史があるその校舎は、不便だった。
古いからではない。2階がぐるりと廊下になっている。それ以外は廊下がない。
ロの字の校舎は真ん中が中庭だった。
北と南に教室があり、西側には職員室などが、東側には体育館に続く廊下。
さらに東側にある別棟に美術室や音楽室などがあった。
で、移動だが基本は廊下のある2階が中心になる。
2階に職員室。体育館に続く廊下。さらに、それぞれの教室に続く階段がある。
まず、入学して困るのはその複雑な校舎の構造だった。
どの階段を上れば、自分の教室に辿り着けるのか入学時は分かりづらく、迷子になる。
うっかり一つ階段を間違うと、2階に戻って別の階段を上らなければいけない。
校舎は4階。4階から2階への移動は大変だった。
さらに、階段が正しかったとして、何階の左右どちらの教室かを覚える必要がある。
疲れていると、ここが何階なのか分からなくなってしまうこともあった。
小学校の長い廊下が恋しくなるどころか、あの廊下がどれだけ便利だったかを理解できた。
慣れてくると『ベランダを廊下がわりにする』生徒が増えた。
基本的には『ベランダ使用は緊急時のみ』との事だったが、そんな事を守れるわけがなかった。
それを守っているのは厳しい先生のみで、先生がベランダを通る事も多々あった。
今でも中学の校舎で迷っている夢を見る事がある。
私にとってはそれくらい、複雑な校舎だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?