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カイシャジンには、ならないで

「「かんぱーい」」
「…先輩って、仕事楽しいすか?」
「最初から重いなおい」
「軽い男じゃないんで」
「話題だよバカ。まあ、楽しいことばっかじゃないけどだいたい楽しいよ。つまんないの?」
「つまんねっす」
「んー、まあ最初から仕事楽しいって人の方が少ないんじゃねーの」
「そーなんすかねー。最近は、就活から間違ってたかもなんて思うわけですよ」
「おーおー、そこまで戻ったか」
「就活って、まわりに流されがちじゃないですか」
「そういう人も多いわな」
「友達がインターンで表彰されたって話聞いて、焦って応募したり」
「それあるあるだわぁ。ゴウセツとかも流されて参加しがち」
「そっす。サークル勧誘のごとく配られるチラシ、持ち帰って読まなかったり」
「あははは、過ぎてみれば思い出だねぇ」
「そんくらい適当に就活してたから、ガクチカも志望動機もなかったんすよ」
「ガクチカ?」
「『学生時代に力を入れたこと』っす。面接で毎回聞かれるやつ」

「へー、最近はいろんな言葉があるねぇ。んで、なかったことが、失敗だったって言いたいの?」
「その通りっす。だって、自分の気持ちがあやふやなまま入社したって、そんなの社会人じゃなくて、”会社人”の始まりじゃないすか」
「カイシャジン?って、なに?」
「なんつーか、やりたくない仕事とか、誰でもできる仕事とかばっかやって、辞めたくても会社から出る実力がないから、しがみつくしかない人、みたいな」
「あー、なるほどねー。会社人。言い得て妙だねぇ」
「僕は就活の時から、会社人になる道を歩んでたんすよ」
「いったん落ち着けバカ。確かにそーゆー人もいるかもな。たださ、会社人になるか社会人になるかは、入社してからの話じゃん?就活とはまた違うんじゃないか」
「そっ…か、うん、あぁ、その通りですわ」
「急に物分かり早くてこえーよ」
「あ、でも就活の時は『新しいことにチャレンジする人材が必要です!』って言ってたのに、新規事業開発室に配属された新卒いなかったんすよ。僕やりたかったのに」
「まあどこの会社も、新卒はお前みたいに営業になることが多いわな」
「そうは言っても僕、すでにあるものを売る熱量とかあんまないし。正直ゼロベース思考とか駆使して、0から1を生み出すような、新規事業ドカーン!みたいのがやりたんすよ」
「確かに華やかかもな。0から1を生み出す力は大切だし、すべてはそこから始まるからなぁ」
「社会に若者のアイデアをぶち込んでやろうってわけですよ」
「その心意気や良し!たださ、社長の気持ちになってみ、なんも知らないぺーぺーに、新規事業なんか任せるか?」

「うーん…。そう言われると…、任せないっすね」
「だろ?じゃ、どんな人に任せる?」
「んー、既存の事業部で革新的な結果出した人、とか」
「そうそう、そうなんだよ。飲んでる割にすげーキレキレじゃん」
「お?もしかして僕社長向いてますかね?」
「あはは、お前はすぐ調子にのるなぁ。あとさ、なにも必要なのは0から1を生み出す人だけじゃないんだよ。」
「というと?」
「ロジカルに考えて1を10にする人も、言われたことをきっちりこなして10を10のまま保つ人も、企業には必要だな」
「なるほど」
「他にも−10を0に戻したり、10と別の10をかけあわせて100を作り出す人もいるだろうな。できることは人それぞれ違うし、違ってていいんだ」
「先輩の話聞いてたら、自分のできることは0から1を生み出すことじゃない気もしてきました」
「そっかそっか、でもやりたいことなんだろ、だったらそれは大切にしろ」
「でも、冷静に考えれば、やりたいことと、できることは違います」
「いいとこに気づいたな。やりたいことと、できることは違う。もっと言えば、やらなければいけないことも、違うかもしれない」
「そっかー…。『やりたい』『できる』『やらなきゃ』が重なる仕事があったらいいのになー……」

「そうだねぇ。でもそれはさ、人生かけて探すくらいには価値のあることじゃね?」
「人生を、かけて」
「そう。少しずつ、『やりたい』『できる』『やらなきゃ』が重なる仕事を見つけていくんだ」
「なんかムズそうっす」
「難しく考えんなって。例えばだよ、転職すればやらなきゃいけないことは変わる。できることなんて、勉強と経験次第でいくらでも広がる。やりたいことが見つかったら、起業したり、フリーランスになったっていい。人生かけて戦略立てないと、それこそ会社人になっちまうぞ?」
「そうは言っても、限られた時間の中でできることには限界があるじゃないですか」
「お前は1人でなんでもやるつもりか?」
「あ、そっか。1人じゃないんだ」
「そ。そもそも会社って、そういうもんだしな。会社のやりたいことに共感した人が集まって、できることで助けあって、やらなきゃいけないこと成し遂げる場所だ。お前だって会社のやりたいこと、要はビジョンに少なからず共感したから仲間入りしたんだろ」
「あぁ、言われてみれば。なんか色々つながって、わかったような、まだ漠然としてるような」

「ははは、ちょっとボリューム多すぎたか?要するにさ、やらなきゃいけないことやって、できること増やして、最終的にはやりたいことやって、社会の役に立つ」
「はい」
「それがさ、社会人なんじゃね?」
「最後、適当じゃないっすか?」
「そう?結構いい感じにまとめたと思ったんだけどな」
「なんかいいコト言ってる感がムッとします」
「おいおい、先輩に向かって聞く口か?」
「まあまあ。あ、お注ぎしますね」
「まったく。そういうとこだけ立派に社会人しやがって」
「へへ、明日から、頑張りまーっす」


#社会人1年目の私へ  

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