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K ポップは私の武器だった!

バブルが崩壊して10年が過ぎたころ第一次韓流ブームが到来した。
日本では冬ソナやチャングムの誓いなどが放映され、ペ・ヨンジュンやイ・ビョンホンなどが中年女性の間で人気が急上昇した。
その頃はまだ韓国ドラマに比べKポップは日本での人気がそれほどでもなかった気がする。


日本の曲で知ったKポップ

冬ソナが流行る一年ほど前だった。
ソウルのアーケード街を歩いていた時よく知っている曲が流れていた。
その前の年にも同じようなことがあったが、その時はクラシック曲だった。
しかし今回はポップスだった。
聞き覚えあるその曲は哀愁のような懐かしさを感じた。

Kポップを知った切っ掛け

絶対よく知っている曲なのに曲名が思い出せなかった。
何なら歌えるんじゃないかと思えるほどの曲だ。
私は迷わずアーケード街のCDショップに飛び込んだ。

店員に曲名を聞くためだ。
気になってモヤモヤしたまま一日を過ごしたくなかったからだ。

アーケード街の屋根を指さしながら「今聞こえている曲は何ですか?」と日本語で聞いた。
女性店員は首をかしげたが、隣の店員が小声でなにやら囁いた。
すると何かをひらめいたように女性店員が応えた。
「あーポジション I Love you」と言ってそのCDを持ってきてくれた。
なんだ尾崎豊のアイラブユーかと拍子抜けした。

私がたまに付き合いでスナックに行った時に歌うレパートリーのひとつだ。
知らないはずがないのに曲名を思い出せなかったのは韓国語だったからだ。

尾崎豊の訴えかけるような気迫ある声ではなく澄みきった声だった。

そのCDを買って帰り、家で聴くと尾崎豊だけでなくサザンや浜田省吾、安全地帯やTUBEなどの曲も入っていた。
ポジションはそれまで知らなかったが浜田省吾のコンサートにも参加した歌手なのだそうだ。

このCDはよく聴いた。
そしてアイラブユーが韓国語で歌えるほどになった。
もう20年以上も前の話だ。

カラオケでKポップを歌った

ある日仕事関係の懇親会があった。
私は担当営業というだけで参加した。
2次会で行ったスナックで、酔った参加者から何か歌えと強制のように指示を受けた。
いつもお世話になっている会社の社長の指示なので断る訳にもいかなかった。
参加者の奥様方からも歌う前からお愛想で拍手をされた。

晩酌の習慣もない私はこのような場が苦手だった。
付き合い程度に酒は飲めたが強い方でもないし酒が好きでもない。
営業の一環だと思って付き合っていただけだ。

そうかといっていつも同じ曲ではあまりにも芸がなさすぎる。
酒は大して飲めなくてもサービス精神はあるほうだ。

まだカラオケもデンモクではなく本で曲を選んでいたように記憶している。
その本の後ろの方に韓国や洋楽といったインデックスがあった。
その中からRYUという韓国歌手の「最初から今まで」という曲を見つけた。
冬ソナのテーマ曲だったが、既に冬ソナが流行して2年程度経過していた。

この曲は一度韓国のカラオケ屋さんで歌ったことがあった。
そしてイントロが流れ出すとスナックの店内が急に静まり返った。
私たちのグループだけではなく他のお客さんもいたが、半分程度は中年女性だったからだろう。

私は汗をかきながらその気になってこの曲を歌いあげた。
店内の空気が一変した気がした。
飲めない酒の効力もあり歌手にでもなった気分だった。

カラオケでこんなに受けたのは初めてだった。
中にはハンカチを目に当てて泣いてるんじゃないかというおばさまもいたほどだ。

Kポップのバラード曲

気を良くした私は他の曲も覚えた。
いつも冬ソナの主題歌を歌う訳にもいかない。
冬ソナばかりではと思って買ったのがチョ・ソンモという韓国歌手のCDだ。

デビュー当時「顔のない歌手」(얼얼이없는가수 オルグリオムヌンカス)と言われた歌手だ。
たぶんテレビなどに出ないからそう言われたのだろう。
切ない曲を得意としたバラード歌手だ。

For Your Soul という曲はその中でも代表的なバラードだった。
とても歌えそうもない曲だったが韓国語を覚えるつもりで練習した。
キーを少し落とせば何とかなった。

その同じアルバムの中のソンチョ(상처)というチョ・ソンモにしてはノリのいい曲も覚えたが、結局この2曲は日本で歌うことはなかった。

たまに行くスナックで歌ったのは日本人の知っている曲ということで冬ソナの主題歌以外の曲だった。
特にRYUのマイメモリーや忘れないで、スミレといったバラードだ。
このような曲はチョソンモの曲のようにキーも高くなく、素朴で歌いやすかった。
そして何より冬ソナのシーンが蘇ると言われた。

中年女性だけではなく冬ソナだけは男性も見ている人が多かったので知っている人も多かった。

その頃はスナックに行けばよくリクエストされたものだ。
結果的にこれらのKポップのお蔭でカラオケが好きになったと言ってもいい。
その後Kポップを歌うのはたまにリクエストされた時だけにして、テレサテンや門倉由紀の歌をうたうようになった。

田舎のスナックでは場の雰囲気によっては、とてもKポップなど歌える空気ではないこともあったからだ。
どんな空気の時にもこの二人の曲は嫌味がなかったからだ。

酒が弱い私にとってこれらの曲は私の営業の武器になった。

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