家の中の不思議な音の話!
昔ある仕事をしている時、お客様から不思議な音の相談を受けた時の経験談だ。
今ならあり得ないかも知れないが、昭和時代にはたまに聞いた話だ。
怪奇現象かそれともポルターガイスト現象か?
家の中でラップ音が聞こえれば誰でも気になるものだ。
ラップ音だけではない。
家鳴りと言われる音も気になるが、それとは違う音もある。
お人形さんがおしゃべりするの
昭和50年代の後半だったと記憶している。
「娘が変なことを言い出して困っているのですが相談に乗って頂けますか」
こう言って電話をしてこられたのは30代の奥様だ。
取りあえず訪問して事情をお伺いすることにした。
子どもは二人いるが今は学校に行っているとのことだった。
長男が2年生で長女は幼稚園に入学したばかりだ。
「お人形さんといつもおしゃべりしている」というのは娘さんの方だ。
主人に話しても取り合って貰えないので電話をさせて頂いたということだった。
この手の相談は2回目だったこともあり、私は大体の見当を付けていた。
その人形を見せて頂けますかというと「こちらです」と案内してもらったのが玄関入ってすぐの応接間だった。
昭和の時代にはこのような応接間のある家が多かった。
家は古いが改修された応接間は豪華な感じがした。
中央に応接セットと言われるテーブルとソファーがあり、正面の壁には大きなセパレートステレオが置いてあった。
向かって右側の壁にはアップライトピアノと飾り棚があり、その棚の中央付近に置いてあったのがおしゃべりをする人形だ。
幅、奥行き共に20センチくらいだろうか、高さは40センチ程度のガラスケースに入った人形が微笑んでいるように見えた。
ピアノの譜面置きにはこども用の教則本が開いたまま載せてあった。
おそらくこの教則本に書かれている音のどれかが犯人だと思った。
そのページの練習曲の音域はそんなに広くはない。
私はゆっくりとひとつずつ鍵盤を押して行った。
人形に注意して弾いているとガラスがビビ―と共鳴する音をひとつだけ見つけることができた。
そんなことをしていたら幼稚園から帰って来た娘さんが入ってきた。
「何をしてるの」と聞くので、おじさんの代わりにピアノを弾いてほしいと頼んだ。
弾き終わった後で「ねっ、お人形さんの声が聞こえたでしょ」とその子が言った。
確かに人形が喋ったように聞こえた。
母親に説明して納得はして頂いたが、その共鳴音を止めることはしなかった。
その子の夢を消してしまうような気がしたからだ。
夜に男の人の声がする
これも昭和の話だ。
これは私が相談を受けたのではなく知人から伺った話だ。
寝静まった深夜に家の中で男の人が喋る声が聞こえると言われたのは、イカ釣り漁師の奥様だった。
「主人は夜、イカ釣り漁に出ているので家に男はいません」
それなのに娘と寝ていると、男の人の声が家の中で聞こえるというのだ。
漁師町に住むその方の家族はご主人の母親と娘さん、そしてご主人の4人家族だ。
その声が聞こえるのは毎日ではないが、ご主人がいない日に限って聞こえたようだ。
この原因については誰も想像できなかった。
怪奇現象でもない限り説明のしようがないと思われた。
しかしその奥様にしてみれば不眠症になるほど気になったに違いない。
原因が分からないまま日にちは過ぎたが、ある日ようやくその奥様によって原因が明らかになったようだ。
その原因も前の話と同様に楽器にあったようだ。
娘さん用に買った中古のエレクトーンが犯人だった。
スイッチを切らずに使っていたようで、夜も電源が入ったままになっていたようだ。
エレクトーンの仕組みは分からないが、漁船の無線をエレクトーンの部品が何らかの原因で受信してスピーカーから音声を流していたのだ。
夜中に誰かがピアノを弾いている
この話は昭和50年代によく聞いた話だ。
犯人はハツカネズミだった。
ピアノのペダルの下にちょうどハツカネズミが入る程度の隙間があった。
ハツカネズミがピアノの弦に触れる度に音がするものだから、深夜の静けさもあり誰かがピアノを弾いているように聞こえたのだ。
この深夜にピアノが鳴る事件は当時あまりにも多かったのでヤマハなどのピアノメーカは、ペダルの下にネズミが侵入しないように対策を取ったほどだ。
これらの話は期間限定で派遣されて百貨店でピアノを販売していた時の話だ。
色んなメーカーのピアノを販売したので詳しくなっただけだ。
後に建築の仕事にも携わったので住宅の音に関する問題には敏感になった。
近年新築住宅には集成材が使われるようになりラップ音的な問題は聞かなくなったが、無垢材で建てられていた頃はよく聞いた。
無垢材は乾燥すれば割れるからだ。
木は乾燥するほど強度も上がるが、割れる時にはラップ音となって家中に響くことになる。
最近購入した我が家の冷蔵庫もよく鳴る。
コンという結構大きなラップ音だ。
これの原因はよく分からないが静かな夜に聞くと驚くことがある。
もう一つはユニットバスの引き違い戸だ。
いやそのあたりと言ったほうがいいだろう。
湯船に浸かってうとうとしているとカンというラップ音で目が覚める。
水を使っていたならウォーターハンマーということも考えられるが、これも原因は分からない。
最近朝方鳴るコンコンという大きな音の原因が分かった。
カラスが金属屋根を突いていたのだ。
我が家からラップ音が消えることはなさそうだ。