【嘘】大きさ林檎と小さな喜び
家を出ると、また、玄関の目の前で巨大な林檎が回っていた。
今日のは、おおよそ2m前後の大きさだ。
芯を軸に横方向に高速回転し、ブウウンと低い音を上げている。
回っているのは良いことだ。
急いで家の中へ戻り、キッチンから果物ナイフを手に取り、林檎へと向かう。
高速で回転していることを利用すれば、皮を剥けるはずだ。
背伸びをして、果物ナイフをそっと林檎の上の方へ添える。
キュルキュルと細長く赤色の帯が誕生する。
腕を持って行かれないよう、両手で踏ん張る。
丁寧に角度を調整し、少しずつ腕を下げ、ゆっくりと膝をまげ、徐々に徐々にナイフを下げる。
途切れないよう集中をし、全身で林檎と向き合う。
ついに林檎は、しっかりと薄黄色になる。
周りにはうねうねと積み重なった細い皮。
誇らしい。
綺麗に林檎の皮が向けた。
こういう日は、自分を誉めよう。
なんともない普通の日常だけど、こういう小さな事を喜ぼう。
林檎は空へと帰っていった。
皮はジャムにしようかな。
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