雨の子供

知ってた?傘をさすから、雨がふるんだよ。


レインコートを着て長靴をはき、水溜まりでバシャバシャと遊ぶその子供は、真っ直ぐと落ちる静かな雨の中、とびきり明るい笑顔でそう言った。
その子供とは何度も話をしているが、雨の日にしか見たことがない。いつも同じ黄色いレインコートを着ている。いつだって水溜まりをおもちゃに遊んでいるのだ。

その夜は仕事帰りに急に雨に降られ、うんざりとしながら折り畳み傘をさして最寄り駅から歩いていた。私は仕事で嫌なことがあり、非常に疲れており、雨がとても苦痛だった。だけど、その楽しそうに遊び笑うその子供と話をしたら、不思議と雨が嫌じゃなくなるのだ。楽しくなるのだ。

傘をさすから、雨がふるんだよ。

私はその言葉を聞くと、もうどうしようもなく楽しくなって、濡れる事を厭わず傘を捨て、水溜まりで一緒に遊ぶのだ。たぶん、本当はその言葉を待っているんだ。

だけど、そうやって楽しく遊んでいるとすぐにその子供は慌てて帰ってしまう。凄い勢いで走って行ってしまう。
子供がいなくなると、ゆっくりと雨はやむ。雲は晴れ、夜空がキラキラと光り、水溜まりもまた負けじと街灯を反射して輝く。
ずぶ濡れの私はというと、捨てた傘を拾い少し元気になって気持ちよく家に帰る。


知ってた?傘をさすから、雨がふるんだよ。
だから、傘をさしたら、また遊ぼう。

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夢蒟蒻
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