星の子供

博士は隕石を調べていた。
昨日、博士の家の庭に落ちたのだ。

博士は街から離れて暮らし 小高い丘の上にぽつんと立つ家に住んでいた。隕石は直径30cm程の小さな石。黒くて硬くて、光をよく反射させキラキラと光る。宝石のような見た目だが、専門家の博士は、全く別の結論を出していた。

「これは、卵だ。」

博士は物質としての調査だけではなく、生物の卵として、孵化を試みた。地球外生命体となれば、歴史に残る大発見だ。博士は寝る間も惜しんで調べに調べた。何日も何日も徹夜で隕石を観察し、データを集めた。

疲れ果てたからか、はたまたそれが効果的だからなのか、博士は隕石を抱き、眠ってしまった。


翌日、博士は強い光で目が覚めた。抱えている隕石が光っている。ひびが入り、その隙間から閃光を放っている。

「孵るのか!」

博士は慌てて隕石を庭へと運び、観察用の台に乗せ、少し離れた所から見守った。
数分後、小さなロケット花火が上がったかのような音と共に隕石は砕け、それは生まれた。

強い光を放つため形は見えづらいが、球体だ。大きさは5cmほど。ふよふよと浮遊し、空を漂っている。
しばらくすると、くるくると回りながら博士の元へやってきて、頭にとまった。

「なんだ、ワシを親だと思っておるのか」

博士は隕石から生まれた『星の子供』に、にっこりと微笑みかけた。


星の子供の調査は、隕石ほど容易ではなかった。常に動き回るし、どう扱ってよいかもよくわからない。
博士が四苦八苦しているうちに、星の子供は動きを鈍くし、放つ光も弱々しくなっていった。

「どうしたらよい。お腹でも空かしているのか?」

博士は、それが食事になるかはわからないが、己の経験と勘を頼りに、研究室にある希少な鉱石を星の子供に近づけた。星の子供は少し膨らむと、吸い込むように取り込み、鉱石は跡形も無くなった。星の子供は再び元気に動き回り、強く強く光を放つ。また、少し大きくなったようだ。


博士は一人で星の子供の研究を続けた。公表するにはまだ早いという判断だ。生命体としての研究と物質としての研究を続けた。
そうこうしているうちに愛着がわいてしまう。食事には様々な鉱石、また、植物や動物性の物質も与えてみた。どれも変わらず吸い込むように取り込み、食事を済ますと元気に飛び回る。経験と勘など、無用なのだった。

博士は愛情をもって研究を続け、星の子供は2mを超えた。


ある朝、博士が目覚めると、星の子供は博士にゆっくりと近寄ってきた。

「どうした、お腹が減ったのか。よし、今日は奮発して珍しいモノをやろう」

星の子供は、研究室に入る博士の背後からずぅっと迫り膨らむと、吸い込むように取り込んでしまった。
博士は跡形もなくなった。


博士は、その事を予感していた。研究から、いずれこうなる事は解っていたのだ。

研究室の机に、博士が書いた星の子供についての研究ノートがある。
その中にこんな記述があった。
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星の子供には、以下の性質があると予想される。
・定期的に物質を食し、成長を繰り返す。
・生まれた時に初めて見たモノを、親と認識する。
・一定の大きさに達すると、親を食し大人になる。
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博士の予想は見事的中した。
博士を取り込んだ星の子供は、博士から食事を与えられなくなると、自ら食事を取り始めた。博士の部屋にあるありとあらゆる物を取り込み、研究室にある全てを食し、どんどんと大きくなった。
博士の部屋を取り込み、研究室自体を食し、丘の上にある家を吸収した。
丘の上は光り輝き、街の人間もその存在に気づき始めた。しかし、それは手遅れだった。星の子供は指数関数的に巨大化し、人間の手にはおえなかった。

街を取り込み、島を飲み込み、国を吸い込んだ。
どこまでも大きくなる星の子供。

博士の予想は正しかったのだ。
星の子供が生まれて初めて見たモノは、地球。

星の子供は地球を食すと、晴れて、立派な大人の星になった。

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夢蒟蒻
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