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とても短いお話

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超短編小説。気が向いたら書きます。
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2017年7月の記事一覧

デジャヴ

デジャヴだ。

毎朝同じ時間に目覚め、毎朝同じように支度をし、毎朝に同じ道を歩き、毎朝同じ電車に乗って、毎朝毎朝出勤をする。
今朝も何一つ変わり映えしない、いつもと全く同じ通勤だった。そのはずなのに、なぜ。

デジャヴ。一度も体験をしたことが無いのに、すでにどこかで体験したことのように感じること。

この風景は毎朝見ている。この行動は毎朝している。何も新しい体験など無い。それではデジャヴを感じたこ

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宇宙キノコ

星におけるヒトの営みと発展は、菌のそれと似ている。数を増やしコロニーを作りキノコとなり胞子を飛ばす。ここで言う胞子とは、宇宙船の事である。他の星に着陸し、宇宙船から降りたヒトは、その星をコロニーにして、また他の星に宇宙船を飛ばす。

こうしてヒトは、我々の間で『宇宙キノコ』と呼ばれるようになった。

宇宙キノコははじめ、とある星で生まれ数を増やしたが、いまや宇宙全域に何百もの種が発見されている。少

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その少年は、毎日朝早くに起き、屋根の上から雲を見る。ゆっくり流れる雲を、まばたきも忘れて見続ける。少年は、どんなに快晴で雲一つ無い空でも、空に隠れた小さな小さな雲を見つけ出すことが出来た。

雲が色んな物の形に見える、などといった話を聞くが、少年は少しも納得しなかった。雲はもっと複雑で、もっと曖昧で、もっと自由な形をしている、そう思っていたのだ。少年にとって雲の形は世界そのものだった。

ある日の

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カメラと侵略

博士が発明した小型カメラは、とある機能を有しているおかげで、未開惑星の調査の必需品となっていた。

その発明以前は、無人のロボットにカメラを搭載し、それを操縦する事で星中を調べていたが、この方法はとても時間がかかり、継続した操縦が大変な負担になっていた。その上、せっかく調査に沢山の時間をかけたにも関わらず、その情報量は乏しいものだった。星は大きい。それに対して調査ロボットの存在は小さすぎたのだ。

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枝

ランドセルに木の枝が入っていた。

何の木かはわからない。長さは10cmくらいで、先が二股に分かれいる。にぎるとヒンヤリと冷たい。少し強く握ると暖かく、微かに生命を感じた。ただ、それは手のひらの温もりである事はわかっていた。
デコボコとした表面はかさぶたが固まったようでもあり、恐竜の皮膚のようでもあった。恐竜を思わせるさわり心地を気に入り、僕はそれを勉強机に飾る事にした。

勉強机にはいくつもの先

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