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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2023年8月の記事一覧

【嘘】焼きたてパンと共に

【嘘】焼きたてパンと共に

コッペパンに挟んで美味しいものを探して、天の川までやってきた。
どれもこれもやたらと甘い。美味しいんだけど、たまにはしょっぱいのも食べたい。

望遠鏡を覗くと大きな濡れ煎餅が見えた。しょっぱいけどコッペパンには合わないなぁ。

【嘘】夜空に描く

【嘘】夜空に描く

黄緑の色鉛筆の芯が折れた。力いっぱいグリグリとスケッチブックに塗り付けていたので、芯は勢いよく飛んでいって、夜空へ消えた。
そしてそのまま宇宙で輝く星となり、塗りたくっていた黄緑色の光をとてもリアルに表現した。

【嘘】弾め。天より高く

【嘘】弾め。天より高く

大人になって初めてわかることがある。
大人になるとスーパーボールで遊ぶなんて事は許されないんだ。
本当は、全ての大人たちがスーパーボールを全力で地面へ叩きつけたいと思っているのに。
空高く飛び上がるゴム玉を見上げたいと、心底願っているのに。

その欲求をひた隠し、すまし顔で仕事なんてしてる。パソコンに向かいながら、心はいつもスーパーボールに夢中だ。
油断をすると視界いっぱいカラフルなボールの幻覚で

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【嘘】曇った鏡

その日は曇り空だった。
待ち合わせをしていた友人から遅刻すると連絡があり、時間があいたので街をふらふらしていた時のこと。

とある店に入った。

薄暗い店内。やたら雰囲気ある古本屋だな、と思っていたら、置かれているアンティーク家具も買うことが出来るらしい。店主の道楽なのか、嫌に安い。どれもこれも変な魅力を放っている。目眩がしてきた。
そのままとりつかれるように、木枠にゴテゴテと彫刻が施された丸鏡の

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【嘘】終わりの夜

【嘘】終わりの夜

夜は明るい。街灯もコンビニも、星々より強く主張をしているからだ。
こんなにも明るいので、普段はどうしたって月明かりを浴びる事なんて出来ない。

しかし今夜は違った。

夜空のとても低い位置、厚い雲を突き抜けて、細長い月が薄暗い黄赤色の光を放っていた。
強烈なその光は街をギラギラと照らし、奇妙な光景が作られていった。
それはどんどんと赤みを増し、街行く人々の顔がもう真っ赤に見える。
あんなに主張をし

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【嘘】白猫と食パン

【嘘】白猫と食パン

近所のパン屋の前で真っ白で太った猫が香箱座りをしていた。
別にお腹は減って無いのだけど、その猫のせいか不思議と店の中へ誘い込まれてしまった。

近所にもかかわらず初めて入るそのパン屋は、いわゆる総菜パンは作らないようで、食パンだけがずらりと並んでいる。こんなので商売になるのかと心配になる。
せっかくなので思い切って一斤を購入。美味しそうだ。

外へ出ると先ほどの白猫がこちらを見ている。
購入した一

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【嘘】白いペンギンと行く

【嘘】白いペンギンと行く

目が覚めたけれど、どうしても起き上がる元気がなくて、しばらく布団の中でもぞもぞしていた。
すると、白いペンギンが敷き布団をくわえて引きずり、無理やり起こしてきた。
半分眠りながらも、そのペンギンに押されるように外に出て、気がついたら見知らぬ駅にいた。

そこでは沢山のペンギンたちが綺麗に列をつくり、電車を待っているようだった。

5分待ってやってきたのは、鯨だった。

「快速だから、各停を待とうか

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【嘘】膝のかさぶたと宇宙の理

【嘘】膝のかさぶたと宇宙の理

すりむいた膝のかさぶたから、数字がポロポロとこぼれて出てきた。
物言わぬ膝が必死に何かを伝えようと、宇宙の理としての意味を持つ言語を使っているのだろう。身体の主として、この暗号を解読する責任がある。

一週間、かさぶたが完治するまでその戦いは続いた。

数字の並びは特定のリズムでゼロが現れる。
それが通奏低音の基礎だと解ってからはスルスルと解読が進んだ。

膝はオーケストラを奏でていたのだ。

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【嘘】星を見る睫毛

【嘘】星を見る睫毛

睫毛が夜空へむかって伸びていった。
毎晩毎晩、眠たくなるまで星を眺めていたからだろうか。
視界を覆う睫毛の隙間から見える星はチラチラと瞬き、よりいっそう綺麗にみえた。
だけど、支える目蓋は重たくなってきて、そのまま真っ暗になった。

夢の中ではその黒くて細い橋を辿って歩き、沢山の星をめぐる事が出来た。

【嘘】雨が運ぶ音楽

【嘘】雨が運ぶ音楽

屋根に当たる雨音のリズムによって、頭の中に音楽が流れ始めた。
懐かしいその音楽は、懐かしいという記憶だけがあって、なんの曲か思い出せない。
エンドレスで流れ続けるその音楽は、とうとう寝るときまで止まなかった。

夢の中では、やたらとドラマチックな展開に合わせてその音楽が盛り上げ、とても良い演出となっていた。
映画のような仕上がりに満足して目覚めると、外は晴れ、音楽は鳴り止んでいた。
二度寝をして観

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【嘘】眠くなったら転がして

【嘘】眠くなったら転がして

昼間っからどうしようもなく眠たかったので、睡魔を転がしていたら、雪玉のように大きくなってきた。眠気というのはそこら中に溢れているものだ。
結構いい感じに丸くなったので、寝る前にもう一つ作って雪だるまのようにしてみよう。

そう思ったのに、夜はなかなか眠くならない。
もう溶けちゃったよ。

【嘘】空は飲み物

【嘘】空は飲み物

ある日突然、世界中のスイカがゆっくりと空へと浮かびあがった。
太陽光を反射し白く光り、真っ赤な夕焼けに浮かぶそれは泡のようで、空はスイカの炭酸ジュースだった。

あまりに美味しそうなので、浮かぶスイカを急いで捕まえて、割って、炭酸水を加えて飲んでみた。
思ったより薄い味になって、青臭さだけが残り、全然美味しくなかった。

それでも、せっかく作ったのだからと飲み干すと、身体がスイカと同様に空へと浮か

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【嘘】珈琲と公園

【嘘】珈琲と公園

土曜日には必ず、公園で珈琲を飲む。
珈琲自体を好きなのもあるが、公園で飲むというのが大事なのだ。飲む場所によって珈琲は味を変える。公園によっても少しずつだが風味が違ってくる。
遊具が沢山ある子供だらけの公園、芝生が広がる大きな広場のような公園、マンション横に義務として作られた味気ない公園・・・・・・、それぞれ特有の味わいを楽しめる。
美味しい珈琲を、ぴったりの場所で飲むのが最高なのだ。

昨日散歩

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