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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2023年5月の記事一覧

【嘘】緑色

【嘘】緑色

お湯を沸かす。
昔から、頭がぼーっとした時にはミントティーを飲む事にしている。
ぼーっとした頭で、お湯が沸くのをじっと待つ。待つ。

待つ。

気が付いたら、屋根の上に乗り巨大なシャボン玉を作っていた。シャボン玉は空を埋め尽くし、ほのかにミントが香る。

これできっと、明日も空は青い。

口の中はスースーしている。

【嘘】昔ながらのやり方

【嘘】昔ながらのやり方

そういえば、昔見たアニメに雲を固めてその上に国を築くという物語があったな、と思いながら蜂蜜を垂らす。

蜂蜜と混ざり少しネバネバとしてきたところで、足で踏み整える。しばらく踏みつけていると、むちっとした弾力のある、お餅のような状態になる。蜂蜜が薄い所はまだふわふわしているので、足しながら全体を均していく。

そんなこんなで作り上げたこの塊を浮かべると、いずれ星となる。

雲のことは、星の子供と言う

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【嘘】ほぼ現実

【嘘】ほぼ現実

いまだにコンタクトレンズをつける時は、鏡を見ながらでないと、うまくいかない。
睫毛はしっかり上がっているか、レンズが瞼にくっつかないか、じっくりと慎重に目にはめ込む。

ところで、あまり集中して鏡を覗いてはいけない。現実との微細なズレに気づいてしまうから。

今朝の鏡の中のコンタクトレンズは、よく見たら『ういろう』だった。
とても美味しそう。

【嘘】片方だけの靴下の役割

【嘘】片方だけの靴下の役割

洗濯ばさみ。何故だかいつの間にか減っている気がする。いや、明らかに少ない。捨ててなんかいないのに。仕方がないからまた買い足すんだけど、それでもまた少しずつ無くなっている。

引っ越しの日、大量の洗濯ばさみが見つかった。いつの間にか片っぽだけ無くなっていた靴下の中から。

そんなパンパンに詰めたら靴下が伸びちゃうよ。

【嘘】望郷の風呂場

【嘘】望郷の風呂場

拾った宇宙人を風呂場で洗っていたら、シャワーヘッドの形が親とそっくりだったみたいで、懐かしさからかワアワアと泣き出した。

なるほど似ている。

【嘘】壁

【嘘】壁

近所のショッピングモールで、壁面に買い物客がそれぞれ適当に落書きをしていき、それ全体が一つの芸術作品になる、といったイベント企画が催されていた。
へんてこりんな落書きが殆どの中、やたらと上手な絵が紛れ込んでいたりと、なかなか面白い壁になっていた。

しばらくして、一人の小学生の高学年か中学生くらいの男の子がじっと壁の絵を見ていたかと思うと、その真ん中にすっと小さな真っ黒の丸を描いて去っていった。

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【嘘】気持ちの悪い風

【嘘】気持ちの悪い風

土砂降りの雨。窓から顔を出してみる。雨雲は真っ黒だ。
長い長いストローがあったので、雨雲に突き刺してみる。ジョロジョロと雨が出てくる。
そのままストローを咥え、一気に息を吹き込んでみる。

フッ

パッと空が晴れた。

びゅうと吹いた風はさっき食べたマルゲリータピザの匂いがした。

【嘘】いち

【嘘】いち

小学生の頃に学校で配られた算数キットの中に入っていたサイコロ、「1」だけがやたらと赤くて、一つだけ違うという理由かは分からないけれど、何故だかそれがとても気持ち悪くて、それからずっと授業中に鉛筆でぐりぐりと「黒くなれ、黒くなれ」と塗り続けて、それだけで鉛筆一本近くを使い切ってしまった事がある。

そのサイコロがさっき、物置から出てきた。汚れて色あせたからか、「1」はちっとも赤くなかった。

そんな

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【嘘】麩菓子

【嘘】麩菓子

大きな麩菓子を庭に埋めてみた。
凄い勢いでどんどんと育ち、みるみるうちに伸びていった。

空高くてっぺんが見えなくなったところで、ついつい根元をかじってしまった。サクサクほんのり甘く、美味しい麩菓子だ。

根元をかじられた麩菓子は、そのまま倒れるかと思ったのだけど、根元が千切れてふわふわと浮かんでいってしまった。

本当に、軽い食べ心地。