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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2018年7月の記事一覧

【嘘】回る世界

その歯車をゆっくりと回すと、噛み合うお隣の歯車も回りだす。そうして連なった目の前の全てが、それぞれの半径に応じた速度で、のんびりだったり、せかせかだったり。

世界は連なり、お隣を回す。回る世界はそれぞれで、それぞれがそれぞれを回す。

歯車が止まると、全ては止まる。

【嘘】感情を纏う星

音は空気の振動だ。その振動は減衰し、混ざり、極めて見えにくくなるが、決して無くなることはない。
それは、声に出した言葉も同様だ。
一度放った言葉は、消えることなく宙を舞い続ける。
言葉に乗った感情はやがて、空気に溶け、地球を包む。

それは、笑っているだろうか。

【嘘】蚊

かゆい。蚊に刺された。かゆいところかくの気持ち良い。この快感をずっと味わっていたい。この快感は日に日に増大する。他の全てをさしおいてずっと、かいていたい。

・・・・・・こうして人類は衰退していった。

エス星の侵略は、この小さな昆虫型の機械によってゆっくりと行われていた。

【嘘】傘

今日は風が強くて、びゅー、と吹かれて、お気に入りの蝙蝠傘が空に飛んでいってしまった。
雨雲がそれを拾い、さしていたので、もったいないなあ、と思った。でも太陽は、むきき、と悔しそうな顔をしていたので、日傘として役に立っているみたいだ。よかった。

【嘘】照れ屋

空をそっと撫でると、ぽっと赤らむ。
綺麗な夕焼けだ。

【嘘】石橋を叩いて

かもしれない運転から始まった妄想は、遂に人一人の人生を完結するに至り、そして全てを終え、ゆっくり目を開けると、車は電信柱にぶつかっていた、かもしれないから運転免許の取得は断念した。

かもしれない人生。

【嘘】お疲れ様

大丈夫ですか、と手を差し伸べてくれたのは、優しい瞳の黒い羊だった。立ち上がれずにいると、背中に乗せてくれた。
黒くて大きな背中に埋もれると、身体はずんずんと沈み、そして、真っ暗な闇に包まれた。

そこは静かで、穏やかで、よく眠れた。

だから、もう少しだけ、寝かせて。

【嘘】モザイク

写真写りが悪い。いや、見た目がどうこうではなくて。いっつもブレブレで、モザイクがかかったようになってしまうんだ。
昔の写真を見返しても、まともに顔が写っている物が無い。

この悩みを親に相談したら、
「なに言ってんの、いやねぇ。あなたはこういう顔よ。」
との事だった。

【嘘】有休取得理由を書けと言うので

二マス戻れ、と足元に書いてあったからここに戻ってきました。
まぁ、それは良いです。また進めば良いし、少し先を見ることも出来ました。ここから五マス先は、ふりだしに戻れ、でした。気を付けなければいけません。
念には念を、有休を使って一週間休みます。

【嘘】成長

テレビが突然暗転すると、ディスプレイに自分の顔が映ってビックリする。
子供の頃の自分の懐かしいビデオを再生していたから、なおさらだ。急に成長したかと思った。

暗転が終わると、また小さな自分がトテトテと走っている。
振り向きこちらを見ると、それは、先ほど見た今の顔だった。

【嘘】決着

頭の中のヤドカリ二匹が突然しりとりを始め、徐々にエキサイティングしてきたのか、単語ではなく文章での攻防になってきた。

七人で遊ぶといつの間にか懐かしの場所へ
へそごまの神秘と金属アレルギーの悩み
皆が見る先には自動ドアの形態模写の達人

ん。どうやら勝負あったみたいだ。

【嘘】未知

宇宙には未知の物質で溢れている。それはダークマターと呼ばれている。

では結局、それはなにか。
なんなのか。

それは、麩菓子だ。
甘くて美味しい麩菓子。

つまり、麩菓子は、それがなんなのかが解っていないのだ。
ただただ甘くて、美味しくて、宇宙の未知なのだ。

【嘘】シミ

仰向けに眠ると、暗い天井に顔が見える。それがシミであることは理解しているのだけど、どうしても顔に見える。

昨日、あまりに気になったので、電気を付け、椅子に登り、近くで確認してみた。

明るいところで見ると、赤かった。

頬を赤らめたのだな。意外に恥ずかしがり屋みたいだ。

【嘘】回送

エレベーターに乗ったら、ベベベベとアラート音が鳴った。重量オーバーのはずないのにな、と思っていたら、どうやらこのエレベーターは回送なので乗れないのだそうだ。
危うく車庫に連れてかれるところだった。