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夢蒟蒻
2018年5月31日 17:50
昨日の夜空は少し変だった。月にかかった雲が灯りを抱え込んだまま薄く伸びたかと思うと、晴れた夜空に見えた月もぼんやりと平べったく、そのまま空に溶けていった。今日の雨が少し光っているのは月が溶けていたからなのだろうと思うと、こうやって濡れるのも悪くない。
2018年5月30日 20:19
あくびをしたら、口から小さな熱気球が飛び出て、ゆっくりと浮上した。ボッボッと音を立て運転をする男は、双眼鏡を覗き込み世界を見ている。こちらを向くと驚きもせずに、大きく手を振ってきた。そのまま旅に出るつもりだろうと思うと、とたんに怖くなり、急いで捕まえて飲み込んだ。
2018年5月29日 19:29
夢の中で正しい影は存在しない事を知っているだろうか。脳内で光の演算が出来ないからだ。つまり、夢の影は己で作る。悪夢では度々、影が襲いかかってくる。そういう時は光源を探すと良い。そこには光り輝く自分が立っているだろう。それが、恐ろしい影を作り上げているのだ。
2018年5月28日 20:11
段ボールの断面のなみなみでサーフィンをするコビトを眺めていると、すぐに夜になる。夜空の星を見てると、コビトはどこかに行ってしまった。明日は段ボールを捨てる日だ。ビニール紐で縛り立て掛ける。すると、紐で遊ぶコビトを見つけた。またアマゾンで注文しなくてはな。
2018年5月27日 22:04
小学校の思い出。遊んでいると六時頃に市内放送が流れていた。耳に馴染む音楽と共に、なにかの言葉が届いた。ふと、内容を思い出そうとしたのだけれど、うまくいかない。どうしても途中に「羊を庭に埋めましょう」と言っていた気がするのだ。思い出した。確かに、埋めていた。
2018年5月26日 21:21
シチューを食べたら親指がキノコになった。特に困らないので、そのままにしておく事にした。
2018年5月25日 19:21
昨日、夏と喧嘩をした。俺がイライラしていたのもあるけど、あいつはホントにどこまでも自己中で、気の向くままどんどん暑くしやがる。いい加減にしろ、と怒鳴ると、ふるふると震えながら涙声で文句言ってた。今日、梅雨入りしちゃったな。今度会ったら謝ろう。
2018年5月24日 21:01
シンプルで美味しい一人暮らしの晩御飯。炊きたてご飯に月を一つぽとりと落として、深い黒色の宇宙をちょろりんとかけ、軽くくるくるとかき混ぜる。橙色に近い黄色に輝き、渦を巻くお米。一口食べれば、まるで世界を独り占めにしたかのよう。
2018年5月23日 19:37
ながれぼしをみつけた。おねがいごとをした。ほしはびーだまになって、ふってきた。びーだま、ください。というおねがいがかなった。
2018年5月22日 22:32
交差点の真ん中で左足の靴を投げ捨てた。行き交う人々に踏まれボロボロになったけど、それでも、綺麗なままの右足の靴より格好良いと思った。靴下には穴。踵にはあざ。
2018年5月21日 20:42
ふらりとカフェに入る。ホカホカのシナモンロールが出てきた。可愛い渦巻きの上にかかったシュガーが白く輝く。珈琲を一口飲んだら、ゆっくりとほどく。ふわふわと剥がれ、断面はシナモンの地層。最後まで切れることなく広げると、これが手紙だと気がついた。美味しい。ごちそうさま。
2018年5月20日 21:18
渡り鳥は、Vの字に隊列を組み空を飛ぶ。これは、地上にいる狸へのメッセージなのである。森がざわわと揺れると、鳥の文字はKに変わり、とても窮屈そうにふらふらと空の向こうに消えていった。
2018年5月19日 20:42
その少年は、うっかり手を離してしまったのだろう。悲しそうに見上げる先、風船が空に吸い込まれていく。いよいよもう完全に見えなくなるかという時、空に二本の腕が生え、丁寧に風船を受け取った。手の様子だけで嬉しい事が伝わったのか、少年も嬉しそうに空に手をふっていた。
2018年5月18日 18:54
駅のホームで、狼が来たぞと叫ぶ少年がいた。やがてやってきた快速電車は、ゴオオという音とシャピャアという音をたて、駅には止まらずに通り過ぎていった。少年は、なんとも満足げにニコニコとしていた。