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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2018年4月の記事一覧

【嘘】金縛り

起きても起きても夢の中、という悪夢を見た。

浅い浅い眠り。
目は開いた。手も動いた。起き上がれた。
けれど、それも夢。その繰り返し。

目が覚めると、まだ寝ている自分が隣に居たが、これも夢かもしれない。いまのところはまだ保留だ。

お、寝ながら欠伸をしている。

【嘘】鍵

ポケットに鍵が入っていた。家の鍵では無い。
なんだ、これ。

試しに耳に突っ込んだら「ガチャリ」と音がし、記憶の扉が開いた。

・・・思い出した。

これ、自転車の鍵だ。

【嘘】天気占い

ブランコに乗り、その振りに合わせて足を蹴り上げ靴を飛ばす。そしてその靴の向きで天気を占う。

子供の頃、そうやって飛ばした靴が空の彼方に消えていってしまったことがある。

その靴が今日、雨と一緒に落ちてきた。
裏。「雨が降るでしょう。」

知ってる。

【嘘】貯金

満月の夜は、五円玉の穴から夜空を覗き、月を見る。
その穴に月がぴたりとおさまるように調整する。
すると、じわりと五円玉と月の境がなくなる。

こうして少しずつ月を集め、貯金している。

【嘘】上手く描けない乗り物

向かいからフラフラと自転車に乗ってやってきた中学生くらいの男の子、どこかで見たなと思ったら、昔、ノートの隅にパラパラ漫画を描いた、その棒人間だった。
もう少し上手く自転車を描いてあげられてたら、あんなに苦労させなかったのに、と思った。

【嘘】眠り

目を閉じても真っ暗なんかじゃない。瞼の裏には、何色とも言えない複雑な色彩を纏った灯りが見える。
その灯りを頼りにズイズイと歩く。すると、ボコっと黒い場所がある。見えないので、有るのかもわからない。
そこにスイと身体を滑らせるとストンと落ち、目の前は見知らぬ住宅街だった。

【嘘】風の子

部屋の中、風が吹いた。
窓は締め切っていて、密室にも関わらず。

その風は懐かしい香りがした。
匂いから記憶が思い出され、目の前の風景が小学生の頃に戻ったと錯覚した。

後から気付いたのだが、あの風は小学生の頃の自分だ。思い出した。

【嘘】手帳

手帳に見覚えの無い予定が書かれていた。
今日はどうやら「19時:インド象」とのこと。

なんのことかと思ったけど、ちゃんと予定通り19時に、空からインド象が降りてきて安心した。

【嘘】鏡の中に

蛇口を捻ると銀色に光る液体が出てきた。
よく見ると、銀色に見えたのは反射によるもので、つまり、出てきたのは液体の鏡だ。

それはいつまでも出続け、やがて部屋は鏡で満たされた。

物理的に鏡の中に入ると、そこは子供の頃に見た夢の中だった。

【嘘】天気予報

雨は、はるか遠くの宇宙から降っている。
それはどこまでも透き通る透明で、雲を通過し水を纏うまでは、肉眼では見る事が出来ない。

燦々と日光が降り注ぐよく晴れた日も、目に見えない豪雨が降っていたりする。

今日の天気は、晴れかつ豪雨。

【嘘】穴

穴に落ちた。とても深く、底に着かない。
落ちるほどに穴は広がり、いつしか辺り一面が真っ暗な穴となった。落ちる感覚が無くなると、天地が分からなくなる。
既に落ちてなどいないと自覚するまでに、かなりの時間がかかった。手のひらには自分がいた。

【嘘】殻

周りはガヤガヤとしているのに、音は遠くから聞こえるようで、目の前の景色も、どこか距離を感じる。どんどんと自分という殻が厚くなり、自我が世界から隔離されていくように感じる。
これが加速度的に速くなり、ついに世界が己の殻で埋まった。
音も景色も無い。これが孤独か。

【嘘】ある木

旅行先で見たのは、視界におさまらないほど大きな一本の木だった。それは力強く神秘的で、不思議と目を離せない引力を持っていた。
しかし更に驚かせたのは、そこへやってきた地元の子供たちが、二本足でスイスイとその木を登った事だった。それは、本当に引力を持つ木だったのだ。

【嘘】雨と月

雨が降ると、空は雲で覆われ、月は見えない。
また、雨が降らねば傘はささない。

だから、こうやってビニール傘越しに月を見るなんて経験は初めて。
なんだか特別な気分になり、愉快に傘をクルクルと回す。月も一緒にクルクルと回る。