微温(ぬる)い夜半(よわ)
A
酒に浮かれ自転車を漕ぐのは23時の貴女
横を過ぎるのは教習所のバイク
家に着いたら今日が終わる
こんなに蕩(とろ)けそうなのに今日が終わる
B
明日になったらこの享楽は
もうどこかに逃げてしまうんだ
追いかけたくても貴方の足は
電車の中に吸い込まれる
C
きっとこうやってなんども
煌(きら)めきを手放してきたんだ
欲しくないものを捨てきれずに
女神はいつでも靡(なび)かない髪を撫でる
A'
いつもと違う人といつも違う話
刺激とは心踊ることのみ
夢の中で揺れる貴方の
爪の色は何色
B'
昨日だったらこの誘惑は
ビールの泡と大差ないんだ
追いかけたくても貴方の舌は
そもそも苦味しか感じない
C'
きっとこうやってなんども
煌(きら)めきを手放してきたんだ
欲しくないものを捨てきれずに
女神はいつでも靡(なび)かない髪を守る
D
この道に終わりがなければ
タイヤの穴は広がるのか
この暗闇が明けないのならば
心の穴は塞がるのか
C''
きっとこれから幾度も
煌(きら)めきを手放していくんだ
欲しいものを皆捨てた後に
残るのが貴方。それでいいのか