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Clouds and Kingdoms

Here is real magic の著者による作品集。

著者のNate Staniforthはプロのマジシャンで、この作品集も基本的にはプロのパフォーマー向けの内容です。

作品が4つとエッセイが1つ収録されていますが、カジュアルな場で演じられそうな作品は1つのみです。

それでも、プロが幾度となく演じてきた作品の創作背景や実際のパフォーマンスのセリフなどが細かく書いてあり、私のようなアマチュアでも参考になる箇所は多くありました。

収録数が少ないので、それぞれ簡単に感想を書きます。

1. Dollar
シリアルナンバーを覚えてもらい、サインさせ、角を破った状態のお札を燃やしますが、考え得る中でも最も不可能な場所と言っても過言ではない場所に移動しています。

最初からとんでもない作品です。
Barrie RichardsonのBill to lemonをベースに考えられたようですが、メソッド含めほとんど原型の面影はないようです。破ったりもするので、特に日本では気軽には演じられなさそうではありますが、いつか演じてみたい作品です。

他の手順にも応用できそうな汎用性のあるテクニックも載っているのですが、カジュアルな場面では難しそうな印象です。

Richardsonがご存命のうちにこの作品を見せたかったというコメントがなんだか切なかったです。

2. Phone Call
会場にいる人しか分からないはずの情報を、ランダムに選ばれた電話番号でかけた先の人が当てるWizard illusion。

しばらくの間、Nateのステージショーのトリを飾っていた作品のようです。
Nate版では実際には情報を当てるという感じでは無いのですが、どのようにrevealされるのかというところも面白かったです。
こちらも実際に見たら相当驚くであろうことは間違い無いのですが、物騒な現代で知らない人からの電話に出る人がいるのか疑問に思われそうだなと思ったりもしました。

似た現象でやってみたいのはJerxのこちらです。https://www.thejerx.com/blog/2017/10/25/the-wisdom-of-crowds-word-reveal?rq=wisdom

3. Lottery Revisited
宝くじのマジックに関する小考察。

著者のThe Lottery Ticketという作品があります。
David Blaineもテレビで演じて一時期話題になった、途轍もなくフェアな宝くじのマジックです。この作品だけを解説した本が2012年に少部数販売されていたようですが、既に絶版かつ今後他の媒体でも解説予定は一切無いとのこと。
秘密を知りたい反面、これだけ不思議なマジックの秘密は知らないままでいいなと思っています。

さて、このエッセイの中では宝くじのマジックをどう演じるかについて書かれてあり、先述の彼の手順については書かれていません。書いてあることはそこまで新しいことはないかとは思いますが、マジックをどのような現象として演じるかというのは、宝くじ以外のマジックにも当てはまることなので、現象について再考させられるいい機会でした。どうテンションを高めるかについても書かれてあり、参考になる部分は割とありました。

The Lottery Ticketの演技映像。
https://www.youtube.com/watch?v=J6q-WcLoIHc

4. Constellation
マッチを使ったThe Trick That Cannnot Be Explained。

当てるのはカードではなく、人の名前です。
この本の中で唯一カジュアルな場でも演じられる作品です。
TTTCBE系のマジックはなんというか、なんとでもなりそうな感じがしてあまり演じたことはないのですが、この本でも書かれている通り、いかにマジシャンが事前に当てるものを知れるはずがないと思わせられるかというところさえクリアできれば成立するのかも知れません。演じれば演じるだけ慣れてくるプロットだとは思うので、練習はしたいところです。

5. Two-Card Transposition
大きなステージで演じる2枚のサインカードの入れ替わり。

使われている原理は有名なものですが、そんな使い方もあるのかと参考になりました。テレビなど含め、1500回以上演じられてきた作品とのことでどんな観客を選べばいいかなど細かいところまで書かれています。

現象としては申し分ないと思いますが、トランプを使う理由がないなと読んでいたところ、最後にトランプを使わないバリエーションも載っていて、演じるならそちらを演じたいと思いました。

最後はマジシャンとして観客に何を伝えるのかについてのエッセイで締め括られます。何かを表現する以上、心に留めておかなければいけないことではあると思いました。

なお、本書は1000部限定とのことです。
私が昨年購入した時点で残り100冊程度はあったと思うので、すぐに絶版にはならないと思いますが、気になる方はぜひ早めに著者から購入してください。

https://www.cloudsandkingdomsbook.com/order-now/clouds-and-kingdoms-by-nate-staniforth


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