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Winners  厚川昌男賞8人の受賞者

オリジナリティのある作品とはどのようなものか。 この本にはその答えが凝縮されていると言っても過言ではありません。 本書は副題にある通り、厚川昌男賞(*)を受賞した8人による作品集で、一人3作品の合計24ものマジックが解説されています。 発行は1997年で約30年前の本ではありますが、名を連ねるのはヒロサカイさん、前田知洋さん、カズカタヤマさん、からくりドールさんなど、テレビなど表舞台でご活躍されている方々、谷英樹さん、石田隆信さん、藤原邦恭さん、岸本道明さんなど今なお素晴

    • Magic Musings

      マジックコンサルタントのRory Adamsによるエッセイ集で、数年前のサブスク購読者に無料で配布された小冊子です。 2022年の9月に書かれた22のエッセイが1つの本になっています。 テーマはTVマジシャン向けのアドバイスから既存プロットやマーケットアイテムに対する新しい視点など様々です。 どこかで見聞きしたことがあるテーマがないこともないですが、問題点を指摘するだけではなく解決案として具体的なアイデアをいくつか提示してくれます。 例えばインビジブルデックを例に挙げて

      • マジックと意味

        小説は小説に、映画は映画に意味があるように、マジックにも意味があります。 「マジックと意味」はユージン・バーガー、ロバートE.ニールの共著で、広義の意味でのマジックについての小論集のような体裁の本です。 今回読んだのは邦訳版です。 マジックとは何か、どのような意味があるのかといったことが明確に提示されている本ではなく、訳者の田代茂さんがあとがきで書かれているように、あくまで二人の著者が集めた、マジックという広いテーマの理解の一助となり得る材料が提示され、それらをヒントに読

        • 2024 上半期読んだ小説

          早いもので2024年も半年が過ぎました。 読んだ本の振り返りはまとめて年末にしようと思っていたのですが、半年も経つと記憶も曖昧になってきた気がするので、備忘録がてら読んだ本を思い出しながら書いていきます。 1.なれのはて(加藤シゲアキ) 加藤シゲアキさんの小説を読むのは、昨年読んだ「オルタネート」に続いて2作目でした。「オルタネート」のザ・青春小説の雰囲気から一変して、少し暗めの雰囲気の作品ですが、過去と現代がリンクしていき、収束していく様は読んでいて清々しいものでした

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          14本

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          Luke Jermay マスタークラス

          コロナ禍に始まったVanishing Inc.主催のオンラインマスタークラスで、今回見たのはスクリプトマヌーヴァ社が訳した日本語字幕付きの映像です。 Luke Jermayといえば、観客の考えていることを次々に当てていくパフォーマンスのイメージが強いと思いますが、今回のマスタークラスは”カジュアルな場で本物の魔法を見せる”というテーマで、基礎理論とその理論を適用させた演技例が解説されます。 理論に関してはJermayがカジュアルな場で魔法を見せるということについて試行錯誤

          Luke Jermay マスタークラス

          P.D.R.

          P.D.R.はPsychological Dice Routineの略で、カードとダイスを使った三段からなるルーティンが解説された冊子です。 表題のP.D.R.を構成している3つの作品のほか、アダルトトランプを使ったCALLという作品の解説、そして、著者とマジックのこれまで関わりがエッセイという形でまとめられており、この一冊を読めば著者のスタイルが見えてきます。 解説される作品の順番はルーティンの順番とは逆から解説されますが、考案した順番のようです。まずP.D.R.の核とな

          REALITY IS MAGIC

          NEAT REVIEWから出版されたAnson Chenの作品集です。 Luke Jermayが序文を書いていることからも分かりますが、著者はマジックを通して本当の魔法のような体験を与えようとするスタイルのマジシャンで、この本に掲載されている作品も観客の体験に重きを置いている作品が多い印象です。 基本的にはメンタルマジックですが、予言、変化、移動、念動、復活などバラエティに富んだ現象の作品群で、演じるシチュエーションはホッピングや大人数のショー、友人に見せるようなカジュア

          REALITY IS MAGIC

          ストロングマジック

          Darwin Ortizが1994年に著したクロースアップマジックのプレゼンテーション術に関する本で、今回読んだのはその日本語訳版です。 マジックを通して、観客に与えたい印象を与えることを目的として、現象、キャラクター、アクト、観客と4つのテーマに分けて書かれています。 現象については同書の半数ページ以上を占めており、どうしたら現象を明瞭に見せることができるのか、観客が興味を持続するためにはどのような構成にしたらいいのかなど、具体的な手法とともに解説されています。 一つひ

          ストロングマジック

          Six Impossible Things

          Joshua Jay がコロナ禍前にニューヨークで240回以上に渡り行ったマジックショーの映像です。 2022年にvanishingincから映像が販売されていましたが、この度スクリプトマヌーヴァから日本語字幕版が販売されました。 ショーの説明ではイマーシブという言葉が使われており、通常のマジックショーよりも没入的な体験ができるように考えられたショーのようです。 なお、1回あたり20人限定、再訪不可の条件付です。 (最近東京にもイマーシブ体験ができる施設がオープンしました

          Six Impossible Things

          FACTFULNESS

          FACTFULNESSは、副題の通り、10の思い込みを乗り越え、データを正しく基に世界を正しく見る習慣を持つための本です。 著者のハンス・ロスリングさんは残念ながら原著の出版前の2017年に亡くなっていますが、息子のオーラ・ロスリングさん、その妻アンナ・ロスリングさんとの共同作業によって書かれました。 日本語版が出版されたのは2019年ですが、世界100万部越えの大ベストセラーのようで、2024年になった現在でも書店でよく見かける印象です。 読む前は小難しいビジネス本だ

          A FLORIN SPUN

          2023年12月、とあるメールが届いた。 メールによれば、新しい本を書いたけれど中身はまだ教えない、とのこと。 中身が分からない本を買うような変人たちのために作られた販売ページには本の書影だけ。 それから数日。 私の元にもその本が届きました。 タイトルはA FLORIN SPUN。 著者はHector Chadwick。 中身はコイントスの結果をコントロールするテクニックとその適用例について書かれた本でした。 テクニックに関してはコインをテーブルでスピンさせる方法や

          A FLORIN SPUN

          The Definitive Mental Mysteries of Hector Chadwick

          Hector Chadwickによるメンタルマジックの作品集。 本書は2008年に出版されたMental Mysteries of Hector Chadwickを基盤として、いくつかの作品、エッセイが追加された決定版です。 サイコメトリー、チェアテスト、メンタル風カードマジック、ブックテストなど現象のバリエーション豊かな作品に加え、one ahead、equivockなどに関する示唆に富んだエッセイも収録されています。 著者のHector ChadwichはDerren

          The Definitive Mental Mysteries of Hector Chadwick

          アルマンド・ルセロレクチャー2024

          スクリプトマヌーヴァ主催のアルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーに参加したので、感想を書いていきます。 アルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーは2021年に続き2回目で、前回はカード、コインを使い、バラエティに富んだ現象のレクチャーでしたが、今回はFind four(4枚のエースを集める)という一貫したテーマに沿って、いくつかの作品とそれらに使われている策略の考え方を共有するスタイルのレクチャーでした。 意図的だと思いますが、最初は解法として技法に重点を置いた作

          アルマンド・ルセロレクチャー2024

          THINK BIGGER

          THINK BIGGER (Sheena Yengar著 櫻井祐子訳)  選択肢がない課題に対して、どのように解決策を導き出すのかを6つのstepで解説した本です。 著書のSheena Yengarさんは前書"選択の科学"において、様々な実験や著者自身の経験を通して、多くの選択肢の中からよいものを選ぶ方法を解説し、同書はベストセラーとなりました。同書の中でも、多数の選択肢よりも限られた選択肢の方が購買意欲が上がる傾向にあるということを示したジャムの実験はマーケティングの世

          THINK BIGGER

          2023年を振り返る(手品演技編)

          2024年も早くもひと月が経ちました。 今更ながら2023年を振り返ろうと思います。 今回は2023年に演じたマジックについて。 飲み会やマジックの交流会などを除いては、マジックを演じる機会も段々と少なくなってきていますが、ありがたいことに会社の仕事の一環としてクリスマスパーティでマジックを演じる機会がありました。 環境としてはちょっと特殊かもしれませんが、個室でディナーを食べている家族に向けて5分〜7分程度でマジックを見せていくスタイルです。 昼と夜で時間帯が分かれては

          2023年を振り返る(手品演技編)

          質と量とRory Adams

          質と量どちらを優先するのがいいのか。 そんな話は聞き飽きるくらいに双方の意見があると思いますが、今回は「量」の話です。 その前にRory Adamsの話からしたいと思います。Rory AdamsはDynamoなどの有名マジシャンのコンサルタントです。 Rory Adamsはマジックコンサルタントをしながら、one aheadというマジック関係の記事を投稿するサブスクを運営しています。 コンサルタントの視点から書かれた記事やオリジナルのトリックの解説などもあり、内容としては

          質と量とRory Adams