アルマンド・ルセロレクチャー2024
スクリプトマヌーヴァ主催のアルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーに参加したので、感想を書いていきます。
アルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーは2021年に続き2回目で、前回はカード、コインを使い、バラエティに富んだ現象のレクチャーでしたが、今回はFind four(4枚のエースを集める)という一貫したテーマに沿って、いくつかの作品とそれらに使われている策略の考え方を共有するスタイルのレクチャーでした。
意図的だと思いますが、最初は解法として技法に重点を置いた作品を紹介し、徐々に心理的な策略を交えた解法を使った作品を紹介していくという流れになっていました。
最初の2作品はルセロさんの得意の技法が肝となる作品で、解法としては直接的ですが、さすがのテクニックのスムーズさとリズムで解決しています。この技法は練習すれば同じような動きはできるのかもしれませんが、できるようになったとしても、そのまま使えばルセロさん風の動きになってしまいそうなのが難しいところです。2作品目の方は1作品目と同じ技法+1つの策略が使われています。ここで使われた策略は最初に解説を聞いたときには、よくある簡素な方法の方が使いやすいとは思ったのですが、あえてこの策略を取ることでのメリットもあるように感じました。簡素な方法の方はマジシャンが見ると独特な動きがあるという点と、下手をすれば観客からすり替えたという疑念を持たれてしまう可能性がありますが、ルセロさんの方法は自然に見せることができれば明瞭にカードを示すことができ、カードをすり替えたようには認識されなさそうです。私も実演を見たときにはすっかり欺かれました。ここでの策略は細部こそ違いますが、この後の作品にも何度か登場します。
続いての作品は技法よりも心理的策略がメインで、この作品のあたりからいくつかの策略が組み合わせれ、よりディセプティブ具合が増していきます。策略の根幹に触れないように伝えるのが難しいのですが、観客の認識しているカードの枚数をずらしながら最終的に枚数の帳尻を合わせに行くようなイメージと言ったらいいのでしょうか。技法も分散されて使われるので、観客がタネに辿り着けないようになっています。
実演では使っていませんでしたが、フォースの別のアイデアも納得できる考え方で参考になりました。
次に現象と手法の連続性を断ち切るという話があり、一つのサンプル作品とバリエーションとして4枚のカード入れ替わる作品の紹介がありました。ルセロさんのお気に入りだそうですが、ここで使われる技法もルセロさん特有の動きがあり、なかなかそのまま自分の手順に取り入れるのは難しそうです。
連続性を断ち切る例はこの後もいくつか紹介されていました。観客が現象が起きた後に解法を考える際にどう考えるのか、どうしたらその解法と現象とを断ち切ることができるのかを考えることの重要さを感じました。
後半で、始まりと最後の記憶は残りやすいという話とともにいくつか作品が紹介されましたが、個人的にはここでの話と作品が今回のレクチャーで特に印象に残りました。
前回のレクチャーでも話にあったプライミングとここまでの作品でも使われた観客の認識をずらす策略が組み合わさった作品や、秘密の動作をある流れの中間に行う
spectator cuts the aces、card under the box的手法を用いた作品など、どれも示唆に富んだ作品ばかりでした。汎用性も高い考え方で自分の手順にも適用できそうです。
最後に錯視の例を用いながら、どのように観客に認識させたい現象とするかについてカードとコインを用いて説明があり、ここが一つルセロさんのマジックを不思議に見せている秘密なのだと感じました。詳しくは書きませんが、彼のマジックを見たときに感客がどう認識しているのかを考えると納得できる話でした。
2時間という短い時間でしたが、ルセロさんのマジックの考えを聞くことができ、非常にいい学びの機会となりました。paper cut(英語版)も遠い昔に買っていくつか作品を攫っていたままなので、改めて見返してみようと思います。
来週はワークショップもあるようなので、興味がある方は参加してみるといいかもしれません。