P.D.R.
P.D.R.はPsychological Dice Routineの略で、カードとダイスを使った三段からなるルーティンが解説された冊子です。
表題のP.D.R.を構成している3つの作品のほか、アダルトトランプを使ったCALLという作品の解説、そして、著者とマジックのこれまで関わりがエッセイという形でまとめられており、この一冊を読めば著者のスタイルが見えてきます。
解説される作品の順番はルーティンの順番とは逆から解説されますが、考案した順番のようです。まずP.D.R.の核となる手法の解説の後、作品自体をそれぞれ解説、そして最後に、3作品を繋げた一連のルーティンとして解説があります。
1.L.D.4.C
観客が振ったサイコロの目と引いたカードが一致し、サイコロの目の変化に呼応するようにカードも変化します。サイコロの変化によってカードも変化するというところは見ていて爽快感があり、綺麗にまとまっていると感じた作品です。
この作品の核となるテクニックには野島伸幸さんのD.4.Cが使われています。バラバラの4つのサイコロの目が一瞬で同一の目に変化するテクニックで、単独で使うのにはあまり向いていないのですが、いくつかの現象の中に組み合わされていることによって効果が発揮されていると感じました。
また、カードを引いてもらう箇所での有用なテクニックも解説されています。キャラクター問わず使うことができそうで、難易度も比較的難しくはないように思います。
2.C.A.A.D.N
4つのサイコロの出目の合計値から選ばれたカードが現れます。
シンプルながら、緩急のある作品でルーティンの二段目としてバランスの良い作品だと思います。
選ばれたカードが出現する前にカードを当てるパートがあるのですが、自然に笑いを取ることができ、その後のカードを配る時の緊張感を増幅させていると感じました。
3.C.F.D
Dani DaOrtiz のNumerical MatchとJuan Luis RubialesのDice Commadを組み合わせたような作品です。
P.D.R.では最初に演じられる作品で、いくつかの現象が立て続けに起こります。
サイコロジカルな要素もあり、不思議度は高く感じます。起こる現象は決まっていて、不確定要素だけに依存しているわけではないので、この手の演技に抵抗がある方でも取り組みやすい作品だと思います。
上記3作品は単独でも演じられるものの、P.D.R.として続けて演じることで効果が上がっていると思います。演技映像は豊富で、不確定なパートで上手くいかなかった場合にどのように対応しているのかも見ることができるので参考になります。
4.CALL
アダルトトランプを使った予言です。
P.D.R.とは直接は関係のない単独の作品です。
アダルトトランプを使っているので、そのまま演じるにはキャラクターが合わない方もいると思いますが、使われている考え方は他にも応用が効きそうです。
失敗する可能性があるので演じない方がいい人の考察は、的確ながらも笑ってしましました。
P.D.R.の演技映像の他にも茘枝さんのコンテスト映像なども見ることができ、ショーをする方やコンテストに出場される方にも参考になるのではないかと思います。
私自身はコロナ禍以降、ショーを見る機会も減ってしまったのですが、サンライズとしてのショーも久々に見たいですね。