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マジックと意味

小説は小説に、映画は映画に意味があるように、マジックにも意味があります。


「マジックと意味」はユージン・バーガー、ロバートE.ニールの共著で、広義の意味でのマジックについての小論集のような体裁の本です。
今回読んだのは邦訳版です。

マジックとは何か、どのような意味があるのかといったことが明確に提示されている本ではなく、訳者の田代茂さんがあとがきで書かれているように、あくまで二人の著者が集めた、マジックという広いテーマの理解の一助となり得る材料が提示され、それらをヒントに読者にマジックについて考えさせるような内容です。

前半ではマジックの起源や原始のマジックに関する説や考えが著者各々の角度から語られます。起源の説について、真偽は定かではありませんが、それでも自分のマジックの背景を考える契機にはなると思います。

後半では、著者の考えるトリックとマジックの違いや、使う道具によって引き起こされる現象以上のものを感じてもらうにはどのように考える必要があるのかと言った内容のことが書かれており、こちらは前半に比べ理解しやすいテーマでありました。

いくつか解説されるトリックに関しては、約半分がゴスペルマジックであり文化的背景が異なるということもあり、作品を通して伝えたいことはぼんやりとは分かるものの、意図が汲み取れきれないものもありました。

全体を通してマジックというものの広大さ、複雑さを再認識させられた本でした。幅広い層におすすめできるかと問われると答えるのが難しいですが、自分の演じているマジックについて考えたいという方にとっては、いいきっかけを与えてくれる本だと思います。

(補足)
17章の訳註10にてdealing cards onto a trayがどの作品を指しているか不明との記載がありますが、文脈と現象描写から察するに、Lawrence Hass著「FINAL SECRETS」に掲載されているInfluenceであると思われます。
同書内で “Influence” is usually the closer ~との記載があり、「マジックと意味」での描写とも合致します。

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