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ストロングマジック

Darwin Ortizが1994年に著したクロースアップマジックのプレゼンテーション術に関する本で、今回読んだのはその日本語訳版です。

マジックを通して、観客に与えたい印象を与えることを目的として、現象、キャラクター、アクト、観客と4つのテーマに分けて書かれています。

現象については同書の半数ページ以上を占めており、どうしたら現象を明瞭に見せることができるのか、観客が興味を持続するためにはどのような構成にしたらいいのかなど、具体的な手法とともに解説されています。
一つひとつはどこかで聞いたことがあったり、読んだことがあったりしたことがあるものが多いかもしれませんが、まとまって書いてあることに意味があると感じました。

私がこれまで様々なマジシャンのレクチャーを受けてきたり、他の本を読んで大事だと思ったりしたことも数多く書かれており、いくつかを演技に取り入れるだけで、観客からの反応は大きくなりそうです。
また、すでに演じている演技のブラッシュアップのためだけではなく、自分自身の作品を創作をする上でも参考になる箇所が多いと感じました。私自身、創作の出発点として、テーマとしたいものがいくつか見つかりました。

キャラクターとアクトの項目については、一貫性を持てという著者の主張の元、一貫性を持つために何を考えればいいのかが細く書かれています。頭では理解しているものの、なかなか実践できていないことが多いのでこれを機に真剣に考えたくなりました。

ところで、キャラクターの項目の中のスタイルという章の中で著者が述べているこだわりに関しては非常に同意する主張が多くありました。
一例として、使う道具の固有性を利用した現象を起こすということが書かれています。北原禎人さんの著書の中でも近い主張が述べられていたのですが、その現象を起こすのになぜその道具なのかという点は最近よく考えていることだったので、何度も頷きながら読みました。

最後のテーマである観客に関しては、ペースやテンポといった話から、客上げの見極め、演技を妨げる観客の対処法までかなり具体的に書かれています。個人的には臨場感を高めるための手法が参考になりました。

アマチュアにとっては難しいのですが、やはり場数をこなして、マジックをしない観客からの反応を得て修正を繰り返すことが本当の意味でのいいマジシャンへの近道なのだと感じました。年に数回でも人前に立って演技したいですね。

というわけで、ストロングマジックの感想でした。原著は買っていたものの、あまりの分量の多さに怯んで積んでいたので、日本語で読むことができてよかったです。
情報量がかなり多いのですが、演技をする際はもちろん、マジックの創作にも非常に役立つ一冊です。

残念ながら初版500部はすでに売り切れてしまったようですが、手にする機会があれば是非手に取って読んで見てください。

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