コロナウイルスの流行の今こそ考える。なぜ「体調が悪ければ休める社会」が必要か #SickLeaveJP
先日、「有給傷病休暇の法制化を!」というキャンペーンを、Change.org で立ち上げました。ありがたいことに多くのご賛同をいただき、既に500人ほどの署名を頂いています。
とはいえ、まだまだ社会のムーブメントとなるには少ない人数です。このエントリでは、なぜそもそも「有給傷病休暇」が必要だと考えているのかについてご説明します。
SickLeaveがないことが理解できない
きっかけは、コロナウイルスについて投稿したFacebookの投稿でした。
「新卒でGoogleにいたときはSickLeave(有給傷病休暇)があったし、日本でももっと調子が悪くても休めるようにしたほうがいいよね」という投稿に、「SickLeaveないんですか、衝撃」というコメントがつきました。
いや、確かに考えてみればそうだよな、と思ったわけです。
「体調が悪ければ休める」が当たり前の社会からみれば、日本のように、とにかくどんなにしんどかろうと会社に来い、というのは狂気の沙汰で、想像もできないのかもしれません。
「え、ないのありえないじゃん?」という感覚。ここにものすごく深い断絶を感じました。
自分にとって「あって当たり前」であるはずのもの。でも、ネットを見れば「有給の申請が通らない」という話がざらにある。これは、それぞれの企業の裁量に任せていいのだろうか?と考えました。
昔、日系企業の友達を遊びに誘ったら「風邪になったときのために有給とっておくから今は無理」と言われて、いやそんなことないだろ、と思ったことがありました。
でも、よく考えるとそちらの考え方のほうが日本では一般的なのだな、と、ようやく気がついたんです。自分が恵まれていたんですね。
自分が恵まれていないことに気が付かず、本人の努力で転職しろとか思っていたのは、よく考えれば傲慢だったなと今なら思います。
想像力と、あとなにか
「体調が悪ければ休む」って、
・すぐに病気が治るので本人にとってはもちろんプラス
・感染症なら周りの人に広げなくて済むし、そもそも体調が悪いまま仕事されても生産性がないので会社にとってもプラス
・社会全体で感染者が減るし重篤化しないので医療費も減って日本にとってもプラス
と、あらゆる方面でプラスになるはずなんです。
近年、「Presenteeism(プレゼンティーイズム)」という概念が注目されています。これは、「体調や状態が悪いときに出社することで起こる生産性の低下」です。
イギリス人事教育協会(CIPD)によると、83%の人間がPresenteeismを実際に見たことがあるといいます。
例えば、CEPR(アメリカ経済政策研究センター)の調査(2009年なので少し前ですが)において、22の先進国を調査した結果、日本・カナダ・米を除く全ての国ではインフルエンザに罹患した場合の有給傷病休暇が義務付けられており、インフルエンザに罹った場合は、一定の給料が保証されます。
日本でも、外資系を中心にSick Leaveは決して珍しい制度ではありません。そもそも、インフルエンザの場合登校停止になるにもかかわらず、会社員であれば出社することが可能なのは、本当に適切でしょうか?
コロナウイルスもそうですが、インフルエンザのような感染症は、本人の努力でどうにかなる問題ではありません。かかるときはかかります。
現状、仮にインフルにかかれば、「本人都合」で有給を取るか、本人が出社しようとするのを会社が止めさせて「会社都合」で休ませるかのどちらかです。もちろん、就業規則で一定ケアしている会社も多いわけですが、「インフルでもいいから来い」という会社も、ないとは言えません。
しかし、このような基本的人権に関わることは、本来は法律によって決めるべきことではないでしょうか。
我々は何を目指していくか
では、そもそも何を目指すべきでしょうか。まず、前提として日本は世界でも最も有給消化率が低い国であることを忘れてはいけません。
前にも言いましたが、その大きな要因の一つに「体調が悪いときのために取っておく」があります。
SickLeaveがあるといいことの一つは、気兼ねなく有給が取れることです。いつ体調が悪くなったときもフレキシブルに休めるので、有給を本来の目的に使うことが出来ます。合理的ですね。
我々は、海外の制度を参考にしながら、傷病に絞った有給の休暇を法制化すること、また、インフルエンザ・風邪などの感染症に関して、医学的に出社すべきではない期間を定め、その期間に関しては一定額を保証する制度を義務付けることを、目指しています。
Get involved.
私は5年前に Google を飛び出て起業しました。それはそれで後悔はないし、良かったと思っています。自分の裁量で働く時間を決められますし、自由が効くのもとても嬉しいです。
でも、同時に、自分は恵まれていたなと思うことも多々ありました。福利厚生など、当たり前だと思っていたものが全然当たり前ではないことに、出てから気がついたのです。
社会を良くするのが起業家の仕事であるなら、別にお金を稼げることだけが起業家の仕事じゃなく、そしてまた、一気に全てを変えることも起業家の仕事でもなく。少しずつ制度や仕組みを変えていくことだって、我々の仕事なのではないかな、と思っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!もしよろしければぜひキャンペーンの賛同と、周りの人へのお声がけ、お願いいたします。
励みになります!これからも頑張ります。