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映像ディレクターの視点で読み解くCM分析『ティファニー・ブルー』のクリエイティブ戦略

映像ディレクターのyumaです。

今回は、ティファニーとゼクシィがコラボしたCM「ティファニーブルー」を映像ディレクターの視点から分析します。

映像とマーケティング戦略の両面から、CMの魅力を深掘りするのでぜひ最後までご覧下さい!


1. はじめに

『ティファニー・ブルー』すれ違いが続くカップルを題材にしたCMです。このCMでは、視聴者に共感を呼び起こし、ブランドメッセージを伝えることを目的としています。

公開から10日間で再生回数が100万回を超えるなど、多くの視聴者から「まるで6分間の映画のよう」「感動した」といった声が寄せられ、話題となりました。

『ティファニー・ブルー』成田凌×杉咲花

CD:川村元気
監督:児玉裕一
脚本:川村元気
出演:成田凌・杉咲花

敬称略

2.マーケティング視点

異なるブランドが共存する映像コンセプト

異なる企業がコラボするには、何故一緒にやるのかを説明できるコンセプトが不可欠です。まずは、両社のスローガンを見てみましょう。

ティファニー:「A Life Time of Tiffany ~人生にティファニーを」
ゼクシィ:「幸せが、動き出したら」

両社とも人生の節目に寄り添うメッセージを持っていますね。この情報だけでも企画のストーリーが湧いてきそうです。このスローガンを元に「一生分の一歩を踏み出すラブストーリー」をコンセプトに制作されています。


共感を重視したクリエイティブ戦略

商品訴求より共感訴求
実はこのCM、商品(指輪)が出るまでに約3分40秒かかります。
CMでこれほど時間がかかるものは珍しいです。

3:40 店舗で指輪が出てくるシーン

なぜこんなに遅いのか。

それは、コンセプトである「一生分の一歩を踏み出すラブストーリー」を重視しているからです。(前半も「すれ違い」の演出に重きを置いて、結婚や婚約をはっきりと想起させるシーンが少ない)

実は、これが共感を得るポイントの1つです。
わかりやすく説明します。

共感性を最大化するためには

共感性を高めたい場合、広告感・企業の影を感じさせないことが大事です。商品やサービスの訴求要素が強いと、視聴者はストーリーに没入できず冷めてしまいます。(一部例外もあります)

よくある失敗は、「共感を得ること」「購買を促すこと」の両方を一度に狙ってしまい、中途半端なクリエイティブになってしまうことです。あれもこれも入れたい気持ちは痛いほどわかりますが、ディレクター・クリエイターとしては、情報を整理することも大事な仕事です。

商品・サービス名を連呼するようなCMが多い中で、これほど共感に振り切ったという点は、制作側も企業側も勇気のいる選択だと思います。僕がこのCMを好きだと思ったポイントです。


2.映像分析

カラーについて(世界観)

全体的に色味はTeal & Orangeです。ティファニーのブランドカラーにも合わせて、Tealは必ず入れたいところですね。

①蛍光灯の色をティールにすることで色の統一感が出ていますね。
同じように再現してみたい方は、色が変えれる電球やチューブライトがあると便利です。
Aputure(アプチャー)やNANLITE(ナンライト)で検索してみてください。
(実際に何を使っているかは分かりません)
①左の間接照明をメインライトと思わせつつ、画面外に大きめの照明があると思います。
②右側の画面外にもおそらく青系のライトが。
③後ろの玄関?らしき場所にもライトを当てることで奥行きが出ます。
空が綺麗。駐車場の黄色も差し色でかわいいですね。
空を入れるときは2分割構図が綺麗に収まりやすいなと個人的に思います。

ターゲットが共感できる具体的な描写・演出(ストーリー)

動画の中では、長年付き合っているカップルのリアルなやり取りや葛藤が描かれ、視聴者が自身の経験と重ね合わせやすくなっています。

1:05 LINEのそっけないやり取り

お互いの会話をLINEと心の声のみで表現し、直接話すシーンもクライマックスまで全くないです。

2人の距離感(物理的にも心理的にも)すれ違いがわかりやすいですね。

また、ちょっとした工夫ですが、画面を見せる前に先に声を入れると、画面を映す時間が短くて済みます。多くの視聴者はCMの文字をじっくり読まないので有効です。

2:12 先輩からの言葉にショックを受ける

彼女が先輩に「それって付き合ってるって言わないから」と言われショックを受けます。絶妙に共感できるエピソードを突いてるなと思います。あなたもこのカップルのような経験をしたことはありませんか?

ショックを受ける瞬間では、周りの音が少しずつ消えていく演出が使われています。彼女のショックが際立ちますね。

このように、共感を得るためには、視聴者(ターゲット)がこれまでに経験したであろうエピソードを盛り込む必要があります。

ターゲットが共感できるエピソードを作る方法は、別記事で紹介します。


4.最後に

以上、ティファニーとゼクシィのコラボCMについて深堀りしてみました。
一貫したコンセプトの重要性、共感を得る映像を作るためのポイントが学べると思います。

少しでも役に立ったと感じたら、スキをお願いします!また、他に取り上げてほしいCMやご意見があれば教えてください。


追記

知人にいくつか質問をもらったので回答してみました。
(ここからは完全に私の推測です。参考までに。)

Q.数多くある職業の中でなんで料理人を選んだのかな?
→料理人にした背景はわからないけど、彼氏・彼女間ですれ違うきっかけを生むために、2人は働き方が違う職業にする必要があるよね。
彼女は正社員。彼氏は夢を追うために下積みが必要な職業。みたいに。
下積みのある職種かつ、忙しいイメージがある職業で料理人にしたんじゃないかなぁ。条件さえ合えば他の職業でも作れそう。

Q.最後に指輪を渡すシーンで、普通なら指輪にを写しそうなのに表情を映すんだね。CMなのに。
→これもスローガン「人生にティファニーを」を重視した結果じゃないかな。おそらくクライアントからも指輪にフォーカスを当てることを要求されたはず。指輪を選ぶシーンを長めに確保することでその要望はカバーしている可能性があるよね。

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