パリーグの方が技巧派左腕は輝くのか?
先日、炭谷銀仁朗のFA移籍に伴う人的保障として、過去に2年連続最多勝にも輝いたことのある内海哲也を西武は選択しました。
大エースの菊池雄星が、ポスティングでのMLB移籍を表明しており、先発の駒が欲しいというところもあり、来季の戦力を欲しての内海というチョイスなのでしょう。
また、多くの方が指摘されているように、例え来年FA宣言をして巨人へ出戻ったとしても、年俸的に補償の発生してしまうBランクに値してしまうため、西武からするとその辺りも考慮に入れての獲得ではないでしょうか。
このように、様々な憶測を呼んでいる今回の移籍ですが、今季5勝を挙げたとは言え、衰えの隠せない内海を獲得したのは、パリーグでも活躍が可能であるとの算段があってのものでしょう。
実際に、今季の開幕前に阪神から獲得してきた内海と似た技巧派左腕である榎田大樹は、11勝を挙げる活躍を見せ、リーグ優勝に大きく貢献しています。
内海にもその姿を重ね合わせている可能性は大いにありうるのではないでしょうか。
そこで、本noteでは、榎田や内海のような技巧派左腕に分類される投手は、パリーグの方が活躍しやすいのか、について検討していこうと思います。
まず技巧派左腕という定義が非常に曖昧なものであるため、技巧派とはどのようなタイプの投手を指すのかを明確にしてから検証を進めていきます。
この定義付けに関しては、下記サイトの定義付けを参照しました。
技巧派
奪三振は多くないが、凡打を打たせる投球で投球回を稼ぐ先発投手。四球もやや少なめで、コントロールのまとまった投手が多い。(http://www.baseball-lab.jp/column/entry/2/より引用)
技巧派投手
種々様々な打者に対していかに投球するかについて工夫する。多数の変化球を会得し、球速を変えたり、内外角を攻め分けたり、打者の弱点に投げ込んだりする。打者のタイプ、ストライクカウント、ゲーム状況をも考えて打者に打たせるように仕向けて討ち取る。多彩な変化球や制球に優れた投手に対する俗称である。軟投派投手、コントロールピッチャー(英語版) とも呼ばれる。カート・シリングはコントロールがストライクゾーン内に投げる能力であり、コマンドが狙ったところに投げる能力だと語っている。与四球率とK/BBがその目安の数値となる。ストライクを先行させていく事によって打者に対して優位性を獲得する事が出来る。
メジャーではクリスティ・マシューソン、ファーガソン・ジェンキンス、グレッグ・マダックスの3人が歴代の代表的な投手としてよく名前が挙がる。日本(NPB)では、石川雅規、吉見一起、黒田博樹などが、代表的な投手として挙げられる。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%95%E6%89%8B#%E6%8A%80%E5%B7%A7%E6%B4%BE%E6%8A%95%E6%89%8Bより引用)
上記を参照し、今回の技巧派の定義付けは
①100イニング/シーズン
②K%がリーグ平均以下
③BB%がリーグ平均以上
の3つ全てに当てはまる投手を技巧派とします。
そして、上記定義付けを過去5年のデータにぶつけてみると、下記表①~③のような結果となりました。
パリーグは辛島航・加藤貴之といったストレートのスピードは然程ないものの、様々な球種を散りばめながら抑えていく投手や、高速シンカーが持ち味の松葉貴大が複数回該当しています。
一方、セリーグは技巧派左腕の代名詞的な投手である石川雅規や、本noteを書くきっかけにもなった内海哲也、意外なところで本格派に近い投球スタイルの大野雄大が複数回該当しています。
球種別の投球割合を見ると、セリーグではストレートとスライダーに落ちる系の球(チェンジアップ・フォーク)の組み合わせという、本格派に近い投球スタイルの投手と、純粋なフォーシームの割合は少なくボールを動かすなり多彩な球種を用いることで抑えていく、所謂技巧派に近い投球スタイルの2パターンに別れています。
一方、パリーグは大体の投手がフォーシームの投球割合が40%超えと技巧派という投球スタイルの割には高めで、ここがセリーグとの違いとして挙げられます。
パリーグには、技巧派左腕に分類される投手でカットボールやツーシームを積極的に用いている投手が多くないため、そのような投手がパリーグ相手にすると、もしかしたらパリーグの打者たちは面食らうのかもしれません。
実際に、カットボールに関して投手目線のPitchValueを眺めてみると、セリーグの8.5に対して、パリーグは19.4とパリーグの打者に対しての方が有効となっているので、カットボールを使える投手は活躍しやすいのかもしれません。(榎田に関してもカットボールが一番の武器となり、両リーグ8位のPitchValue7.3を記録)
また、セリーグとパリーグを比較してまず目につくのは、該当者数の違いではないでしょうか。
毎年複数人は該当者がいるセリーグに比べ、2015年と2016年には該当者1名ずつと、パリーグは数が少なくなっています。
ここから考えられることとしては、パリーグには技巧派左腕の絶対数が少ないため、セリーグに比べて相対的に活躍しやすい環境となっているということでしょう。(そもそも左腕投手自体が少ない?)
パリーグの打者は、技巧派左腕の球筋に不慣れなため、ある程度の数をこなしていって慣れてくるまでは苦労するのではないでしょうか。
また、パリーグ内で絶対的に少ない技巧派左腕の中でも、中々継続的に活躍を続ける投手が少ないため、対戦経験が増えずに球筋にも慣れられず、活躍しやすい環境となっている理由でしょう。
以上より、
①そもそもパリーグに技巧派左腕の数が少ないため、球筋に慣れておらず活躍しやすい環境となっている。
②動かす系のボール、中でもカットボールが有効である。
の2点から技巧派の中でもさらに限られた所にはなりますが、確かにパリーグの方がセリーグに比べて技巧派左腕が活躍しやすい環境にあると言えましょう。
ただ、ある程度慣れられた時点でどうなるかは分かりかねる部分があるため、来季の榎田の成績が継続的に活躍できるかどうかの分水嶺となるでしょう。
内海が活躍できるのかという点をみると、年齢的に下り坂という所もあり、今季の榎田ほどではないでしょうが、交流戦でも活躍を見せており今季と同レベルくらいの活躍は見込めるのではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?