藤浪復活⁉
昨日の中日戦にて藤浪晋太郎が2年ぶりの完封勝利を挙げて、2016年以降の不振からの復活を匂わせました。
以前に比べスピードを多少落としながらも、非常にバランス良く投げられており、課題のコントロールも大きくバラつくことなく、相手が目標を見失い終戦モードの中日とはいえ素晴らしい内容だったように思います。
初回の先頭打者・平田に対しては、少し不安を感じさせる四球の出し方でしたが、その後の京田・大島にスラッターで打ち取って以降は、危なげのない投球でした。
さすがに終盤は疲れが見えてきたのか、ストレート・スラッター共に抜ける場面が散見され始めましたが、最後は力を振り絞ったストレート連投で中日打線をシャットアウトして見せました。
以上が藤浪の投球をパッと見た私見でありますが、本noteにおいては、昨日の藤浪の投球内容について詳細に分析していこうと思います。
昨日の投球内容を球種別にしたものが上記表です。(データはスポーツナビ一球速報を参照で、カットボールはスラッターとしてカウント)
今季のストレートの平均球速が150キロオーバーですから、昨日は147.9キロと出力を抑え、バランスやコントロールを意識したのでしょう。
また球種別割合を見ても、今季ここまではストレートとスラッターの2ピッチになりがちだったのを、フォークの割合を増やすなど、偏りがちであったバランスを整えようとする試みが感じ取れます。
一球速報によると、スライダーは1球のみとなっていましたが、スラッターの球速帯が130キロ弱から140キロ付近までと広く、実際はもっとスライダーを投げているはずです。
もしくはスラッターに強弱をつけている可能性はありますが。
ですので実際の昨日の投球は、ストレート・スラッターを中心に少しスピードを落としたスライダーとフォークを織り交ぜていくというスタイルで投球が構成されているはずです。
次に投球コース別の投球割合を見ていきます。
全体と対右打者と対左打者の3つの表を一球速報データを基に作成しました。(コースは投手側の視点から見たもので、緑塗がストライクゾーンで青塗がボールゾーンを指す)
表中のFAはストレートのことを指し、CTは今回はスラッター(本来はカットボールを指す)で、SLはスライダー、SFはフォーク、CBはカーブを指します。
その横の数字がそのコースに投じられた球数です。
全体として見ると、一塁側への投球が非常に多く、球数の半分近くがこのゾーンへの投球となっています。
特に右打者にはその傾向が顕著で、インサイドにはほぼ投じられていません。
梅野も右打者のインサイドには要求していませんでしたし、何球かインサイドにボールが投じられていますが、抜けたボールや逆球が意図せずそのコースに行っただけでしょう。
おそらく右打者に対しては、ボールが抜けてくるイメージを利用してか意図的にインサイドを使っていないのでしょう。
相手打者が勝手に意識してくれるので、アウトサイドにストレートとスラッターを集めておけば簡単に打ち取れるとの算段があっての配球だと推測します。
実際昨日の藤浪は内と外を大きく間違えない程度のコントロールはありましたから、このような投球分布になったのでしょう。
投球分布を見ても、右打者のアウトロー付近にストレートとスラッターを集められていますから、それは簡単には打てないでしょう。
一方、左打者にはインサイドとアウトサイドの両方を使っています。
また対右に比べ、スラッターのスピードが遅いことから、スラッターだけでなくスライダーに近いようなボールを投じたり、フォークの割合を増やすなど苦手の対左打者に様々な工夫を凝らしていることが分かります。
このようにコースを広く使ったり、様々な球種を投じたりと工夫を凝らしていますが、この辺りにはまだまだ課題があるのではないかと感じています。
一つ目としてはストレートの割合が6割はさすがに多すぎるように思います。
もう少しスラッターとフォークの割合を増やして、ストレートをせめて5割くらいにすればバランスも良くなるのではないでしょうか。
他のスラッター使いの投手だと、昨年の薮田や大瀬良が50%弱でしたから、これくらいの割合にはしたいところです。
現状の割合だと絞られやすく、球威が落ちてきたり調子が悪かったりすると少し苦しくなるように思います。
二つ目はスラッターの使い方です。
現状は左打者に対してひざ元に投げ込んで空振りを誘うという使い方がほとんどです。
個人的にはバックドアをもっと使えばカウントも楽に取れるし、選択肢も広がるのになと感じます。
大瀬良なんかも今季はバックドアを多用することで、ピッチングを楽にしてますし、藤浪のピッチングにも確実にプラスになるはずです。
以前は右打者のインサイドにフロントドアのスラッターを投げたりしてましたし、バックドアを投じることは藤浪にとってそこまで難しいものではないように思うのですが。
まだ本人的にはコントロールできる感覚が戻っていないのかもしれませんので、そこは今後も経過をチェックする必要がありそうです。
このように出力を抑え、バランスやコントロールを意識することや球種配分を変えることで、藤浪はようやく感覚をつかみ始めたように見えます。
ただしまだ対左の部分では課題も残っていますし、こんな所で立ち止まっている場合ではない投手ですから、一歩一歩着実に階段を駆け上がって、その圧倒的なポテンシャルを開花させてもらいたいものです。
最後に藤浪の思考法についての記事が上がっていて面白かったので、読んでいない方は是非読んでみてはいかがでしょうか。