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トレードの新たな活用法

チーム編成を行う上で、勝てるチームに近づけるために、最もキモとなる部分は当然ながら選手編成となるでしょう。

どれだけ辣腕の監督やコーチがいても、選手の実力がついて来なければ、勝てるチームとはなり得ません。

そして、選手編成を行う手法として考えられるのが、ドラフト・外国人の獲得・FA・自由契約・トレードといったところでしょう。

資金力の差がモロに出てしまうFA以外では、ドラフトと外国人の獲得の2つに関しては、既にその重要性は周知のことと思われますし、この2つの精度を高めることで黄金期を作り上げたのが今の広島です。

そんな中で、トレードという手法については、単一球団で行うことのできる手法ではなく、必ず複数球団が絡むこととなるため、様々な面を考慮する必要があり、過去に比べるとその件数は減少し、対象選手も小粒化しているのは否めないのが現状ではないでしょうか。

今は選手編成において、下火であるトレードという手法ですが、私はこのトレードという手法に、もっと活用法があるのではないかと感じています。

以下では、私がそのように考える理由について、述べていこうと思います。

1.トレードの新たな活用法とは?

そもそもですが、トレードというとどのようなイメージがまず浮かぶでしょうか?

その球団で活躍できなかった選手同士を互いに交換するものであるとか、そもそも補強の観点が薄く、球団の内紛やスキャンダルを起こしてしまった選手を放出するものであるとか、NPBを中心に見られている方だと良い印象を持っている方は少ないのではないでしょうか。

もちろん、互いにそれなりの出血を要して、補強ポイントを補いに行くトレードも存在しますが、その数は非常に少なく、現状のトレードへの認識の大部分は、「選手の環境を変えてやる」との意味合いが強いように感じます。

確かに環境が変わることで、選手の持つその素質が開花して、大活躍を見せるような選手は過去にも多数存在しており、一理あると納得するところではありますが、もっと補強色の強いトレードも存在しても良いのではないでしょうか。

そういったところで、トレードの新たな活用法として私が提案するのは、「自軍の育成の得意分野で育て上げた選手をあえて過剰に保有し、余剰となった選手をトレードの駒として、自軍の育成の苦手分野の選手をある程度完成された形でトレードで獲得する」というものです。

各球団には、それぞれ選手を育成する上で、少なからず得意な分野と苦手な分野が伝統的に存在するように思います。

例を挙げると、阪神は本拠地が甲子園球場という球場特性の影響もあってか、ラッキーゾーン撤廃後は自軍で中・長距離打者を育成したというケースは少なく、FAや外国人に頼っている一方で、投手については、毎年のようにイキのいい若手投手が現れるなど、得意分野と苦手分野がハッキリと分かれています。

ですので、阪神は、投手には苦しむことは少ないですが、得点力不足で苦しむことが多く、金本知憲・福留孝介・糸井嘉男といった他球団で実績のあるポイントゲッターになれる野手を獲得することでそれを補おうとしています。

今までのように、FAや外国人にこの部分を頼るのもアリでしょうが、自軍では層の厚さから埋もれ気味である投手を活用して、阪神とは逆に野手の陣容は充実しているが、投手が不足しているようなチームから、トレードによって野手を獲得するという手法を取るのもアリなのではないでしょうか。

そこまでお互いのニーズが一致することは少ないかもしれませんが、実現すれば互いにWIN-WINな取引と成り得るでしょう。

ただ忘れてはならないのは、この手法はあくまでオプションの一つにすぎず、自軍で育成のノウハウをキチンと積み上げていくことが重要であることです。それを怠って外部補強ばかりに頼っては、真の常勝軍団は作れません。私の提案するこの手法も、結局は補強の一手段にしか過ぎないのです。

2.過去の事例を振り返る

「歴史は繰り返す」とはよく言われますが、それは野球においても同様で、その時代時代で流行する戦術があり、それがいたちごっこのように輪廻していっています。

例を挙げると、打順論でよく名前が挙がってくるのが、「2番強打者論」でしょうが、直近では2015年にヤクルトが、首位打者を獲得した川端慎吾を2番に起用したことで議論の的となりましたが、これも古くは1950年代の西鉄の豊田泰光に始まり、2000年前後の日本ハムビッグバン打線の小笠原道大など、それ以前にも同様の起用法は存在しており、結局は輪廻していることが分かります。

上記のように、私が提言するトレードの手法も決して真新しいものではなく、過去にそのような源流は当然ながら流れています。そのような例を、ここでは辿っていこうと思います。

2-1.1963年阪神⇔大毎

プロ野球の歴史の中でも、一番最初の大きなトレードとして登場してくるのが、このトレードであり、俗に言う「世紀のトレード」です。

そのトレードの内容を具体的に述べると、1963年オフに当時阪神に所属していた小山正明という後に300勝を達成することになるエース格の投手と、大毎(現ロッテ)の主砲で打撃タイトルを何度も獲得していた山内一弘の一対一の交換トレードです。

目的としては、当時の阪神は打線の破壊力に欠けるきらいがあり、一方大毎はエース格の投手が不在というウィークポイントを持っており、お互いのウィークポイントを埋めるという意味合いを持っていました。

また、当時の阪神には村山実というもう一人の大エースが君臨していましたし、大毎には榎本喜八というもう一人の主砲が君臨していたという点も、おそらくこのトレードを助長しており見逃せない点でしょう。

以上の点からは、このトレードは私の提言しているものの先駆け的な例と言えるのではないでしょうか。

最後に、このトレードの結果ですが、小山は大毎へ移籍した年に30勝を挙げるなど、期待通りエースとしての働きを見せていますし、山内は移籍初年度以降は思ったような成績は残せませんでしたが、その初年度にリーグ優勝に貢献するなど一定の働きを見せていることから、両軍に一定の成果ありと見ても良いでしょう。

2-2.1976年中日⇔阪急

このトレードは、「世紀のトレード」ほど有名なトレードではありませんが、4対3という大型性と、悲願の打倒巨人を果たした日本シリーズにおいて殊勲の活躍を見せた選手が即放出されたという点が特徴のトレードです。

トレードの具体的な内容としては、中日から正三塁手の島谷金二、稲葉光雄、大隅正人の3名と、阪急からローテ投手の戸田善紀、日本シリーズで殊勲の活躍を見せた正三塁手の森本潔、大石弥太郎、小松健二の4名によるトレードとなっています。

目的としては、投手力の強化を目指す中日と、レギュラー陣の中で唯一と言ってよい穴であった三塁手の補強を目指す阪急の思惑が一致してというところで、このトレードのメインパッケージは中日の正三塁手であった島谷と、阪急のローテ投手の戸田となります。

このトレードの結果としては、翌年に自己最高打率を記録した島谷と17勝を挙げる稲葉を獲得した阪急に一方的な軍配が上がるものとなっています。

このトレードも両者の補強的側面が強く表れたトレードであり、これ以上の例示は控えておきますが、このくらいの年代までは普通に行われていた補強手法でした。

それが、FA権の登場も相まってか、いつしかこのような手法が用いられる数は減少していき、廃れてしまっているのが現状です。

3.まとめ

過去にも、互いのウィークポイントを補強しあうというトレードは行われてきたのは上述の通りですが、時を経て現代においては、今回の提言のような更に進化した形で生かすことが出来るのではないかと感じます。

それは、過去に比べて、支配下登録選手数はおろか、育成選手という制度が出来たことによる選手数の増大により、必然的に駒数が増えているため、余剰が生まれやすいといった要因が挙げられます。

また、物量の求められるペナントレースにおいては、選手のやり繰りが重要となってくるという要素も重なり、野手も投手も一軍/二軍併せて運用するという考えは年々強まっているように感じますし、ここも余剰が生まれやすい要因とも言えましょう。

といった面から、現在のNPBでは新たな手法を非常に生かしやすい環境が整いつつあるように感じますし、実際にこのような手法を用いて補強を行う球団も出てきてもおかしくないのではないでしょうか。

#野球 #プロ野球 #トレード

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