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雪舞

数年前の仕事納めは
雪混じりの強風が吹くとても寒い日だった。
1日事務所を掃除してゴミを纏め、
ゴミステーションまで台車に乗せて運ぶ。
これを出したら退社して
買い物して家に帰ろう。
明日からは休暇だ。

ガラガラと音を立てながら台車は動く。
その時、ちょっとした段差に躓き
乗せていたゴミ袋が派手に転がった。

ゴミ袋にはそもそも大きな穴が開いていた。
それは知っていたので
事前にガムテープで補修していた。
だが転がった弾みで雑にガムテープで補修した場所の近くが大きく破れ、中のゴミが舞い出てきた。

強風に煽られて、勢いよく舞ったゴミは
シュレッダーの紙だった。
まるで雪のように辺りに舞い飛び
さながら吹雪のようだった。

ああ、きれい

なんて感じる間もなく
これはやべーことになったと
寒さで鼻を垂らしながら私は青ざめた。
吹雪の方がまだマシだ。
シュレッダーの紙は雪のようには溶けない。

慌てて残りのゴミを先ず纏め直し
ゴミステーションに捨てた。
それはともかく既に舞い散ったシュレッダーの紙は
あちらこちらに散乱している。

どうしよう。
ととととりあえずほうきで、と
事務所のほうきで散らばった紙を集める
しかしながらチリトリに集めたものも
また風で舞い飛ぶという悪循環だ。
ますますヤバい。
おそらく掃除機を持って来て吸った方が早いのだが、電源はない。

しばらくあたふたと戦ったあと、
私ひとりではどうにもならないことがわかったので
恥を忍んで同じビルの別の事務所のひとに
助けを求めた。
頼んだ事務所からは寒い中数人が出てくれて
なんとか見える範囲の大体の紙を集めてくれた。
集める間私は皆さんに平謝りするしかなかった。

辺りが薄暗くなり、
予定の退社時間が1時間ほど過ぎたところで
ここまでにしよう、と手伝ってくれた事務所のひとが言い、そこで作業は終わった。
あちらこちらの木にまだ少しばかり紙が引っ付いているのを、泣きそうな気持ちで私は眺めた。

とほほほー…

年が明け、手伝ってくれた事務所に
お詫びのお菓子を持って出勤してきた私は
ゴミステーション辺りの溝にまだシュレッダーの紙が少し残っているのを見て
やるせない気持ちになった。
やはり紙は雪に似ているが雪ではないのだ。

その年から
シュレッダーのゴミを年末に出すのはやめた。


毎年仕事納めが近くなると必ず思い出す話である。
どうか今年の仕事納めも無事終わるようにと
心から祈っている。

(了)


さて、今年1年、私の拙い話を読んでくださり
フォローやスキ、コメントをありがとうございました!本当に励みになりました🥰
ひとに伝わる文章を書くということの難しさを
ひしひしと感じた1年でした。
来年もいろんなことを書いていきたいと思いますので、よろしければ読んでいただけると嬉しいです。

皆さまどうぞよいお年をお迎えください😊












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