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誰かの願いが叶うころ

「僕は自分の血を引く子どもが欲しいんです」
と昨日の飲み会でSTさん(59歳独身)は言った。
(今回毒はきます。すみません。)

STさんはこの街の
私の数少ない友人のひとりである。
私が以前通っていたスポーツジムで
インストラクターをしていたので
付き合いはもう20年以上になるだろうか。
友人と言っても、男女のグループ5人ほどで
年に1〜2度飲みに行くだけだ。
女性は私ともうひとりM子さん(50代既婚子ナシ)。
男性はSTさん、Sさん(40代既婚子アリ)、Aさん(40代独身)
正直こんな何もかもバラバラな
おっさんおばさんの集まりが
なぜ細々と続いているのかと思うのだが、
STさんの声かけでなんとなく集まり、
なんとなく近況を話して飲んで
なんとなく解散する。
多分STさんの声かけがなければ集まることもないだろう。
ちなみに今までメンバーも入れ代わってきた。この固定メンバーになったのはここ10年くらいだろうか。

さて、最近
スーパーのバイトを始めたらしい
土地持ちのSTさんは
結婚願望がないわけではなく、
今までも出会い系サイトに登録したりしていた。
日本人とはもう上手くいかないようで、
狙いを外国人に移したら、
アメリカ空軍のシングルマザーや
ロシア人やらとネット上で出逢い、
それぞれ「アナタの国に行きたいから飛行機のチケット買って送って欲しい」と言われて
騙されていたことに気付いた。

「子ども欲しいなら養子とか里親でもいいのでは」と私とM子さんが言うと
「どうしても自分の血を分けた子どもが欲しいんです」と頑なに答えるので
「それなら先ずは精子凍結やね」と言っておいた。
私たちにはおばさんとか平気で言うくせに、
どうして自分は老いてないと思うのか。
言うまでもなく、今日が一番若いのだ。

今から事業をするとは言え、
3000万の借金があって
独身の姉と年老いた母親、定職もない60前。
性格はハッキリ言ってクセ強。
希望は子どもを産める年齢(30代が希望らしい)の女性。
正直誰がこの人の家に嫁にきて
子どもを産んでくれるのか。
女は子産みの機械ではないぞと
説教をしたい気持ちにもなったが、
私が説教しても自信家のSTさんの気持ちは
変わらないだろうし、
そもそも年上の友人に説教できるほど私は偉くもない。
遠くから生暖かく見守るだけである。

「女性は40歳くらいでも子ども産めるとか言うけど、年取ってんのに何言ってんだって感じですよ」
どの口が言ってんだよ、と
そのままブーメランを投げ返してやりたくなったが、グッとおさえた。

「僕とブー太郎(Aさんのこと)のどっちが先に結婚できると思いますかー?」
あのね、Aさんは小太りかもしれないけど、
看護師で定職あるし、大人しいけどいい人だし、
まだ40代だし、還暦前のSTさん(痩せ体型)の
ライバルにもならないよ、と言いたかったが、
グッとおさえた。

悪い人ではないのだが、
こういう人をバカにするような物言いにイラッとくる。STさん自身が変わろうとしない限り
彼の願いが叶うことはないだろう。
いや、そもそも20歳以上も下の人と結婚するとか
芸能人でもそんなにないからね。

なんてイライラモヤモヤすることもある飲み会なのだが、また誘われたら皆集まるんだろう。
逆に言うとダラダラ飲んで話せればいいだけで
お互いのことなんてどうでもいいのかもしれない。

「じゃあまた会う日まで元気に過ごそうねー」
手を振って解散した。

次回は忘年会とのこと。


(了)



















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