ただまっすぐに
車をちゃんと駐車したいだけの話
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西に向かう車には
容赦なく日差しが差し込む。
私はその眩しさに目を細め
もう秋なのだと実感する。
今日の仕事は終わった。
自宅マンションにまっすぐ車を滑りこませ、
ほぼ正面、右から2番目の自分の駐車場にとめようとする。
左右に車はない。
しかしながら前方に横向きの車がとまっているため、少しS字に運転して
車を入れなくてはいけない。
今日は上手くとめられるだろうか。
微妙にハンドルを操作して前進駐車した。
前のタイヤに輪止めがトンと当たる振動で
まっすぐとめられたかどうかがわかる。
ああ、今日も少し斜めだ。
毎日毎日とめるのに
一度もまっすぐにとめられたことがない。
駐車場の右の人は昼間は大抵いないので
右の枠線を自分の車の窓と平行にして
慎重にとめるのだが、それでも斜めになる。
たまに横向きの車がいない時は
直進で入ることができるのだが
それでも少し斜めになる。
なんでこんなに斜めになるの。
ちなみに左のひとはいつも斜めにとめているのだが、そこは大した問題ではない。
私は、私自身が、
まっすぐに、ただまっすぐにとめたいだけなのだ。
まっすぐにとめられなかった場合、
しかも結構斜めになっていた場合は
何度かやり直す。
とりあえずとめてドアを開け
車と直角に降ろした足が隣の駐車場との線に
かかってなければなんとか合格だ。
お隣さんにご迷惑をかけてはならない。
たまに右の人がお休みかなにかで
私が帰宅した際に車がある場合がある。
そんな時はお隣さんに合わせてとめる。
そうなると後で帰宅した左の人も
私に合わせてとめる。
ベランダから見ると3台が平行に斜めになっていて
気が合うんだかなんだかわからない気分になる。
私はまっすぐにとめるべきだったのか。
私がまっすぐにとめたら、左の人は車から出にくいのではないか。
いやそれは左の人の問題ではないのか。
というある意味くだらない葛藤をしながら
毎日私は車をとめている。
これは自分との勝負なのだ。
既に何が勝ちかわからないけれど。
これが前進駐車でなければ
こんなに悩むことはないのにな。
いやそもそも自分の運転の下手さが問題なのではないか。
先日夫に運転させて出かけたので
そのまま駐車場にとめてもらったら
すんなりまっすぐとめていた。
何度も見直したけど
やっぱりまっすぐだった。
そんな馬鹿な。
明日も私は車をとめる。
ただまっすぐにと願いながら。
自分の雑さと闘いながら。
(了)