言語学は国際人の教養だと思う
いろいろな言語を自己流で比較するなかで私は他のヨーロッパの言語について知ることが英語にも活きること、そして言語を総合的に知る楽しさを知った。
今日はそんな言語世界の深みを紹介したいと思う。
①言語のルーツを知ろう
英語とドイツ語が似ていることはご存知だろうか。はたまた、フランス語、スペイン語、イタリア語などがそっくりなことはご存知だろうか。これにはちゃんと理由があるのだ。
歴史言語学という学問がある。ある言語がどこから来て、どう変化して、今の状態になったのかを研究する学問なのだが、実に面白い。
特に「インド・ヨーロッパ語族」を言われる部類の言語たちは、その分岐の仕方から地理的、歴史的な背景と結びつけやすくてわかりやすいと思う。
歴史言語学の視点からヨーロッパの言語をみてみると、英語やドイツ語、オランダ語などはゲルマン民族の流れが起源の言語で、フランス語、スペイン語など地中海に接した国よりは北欧の言語により近いことがわかる。
実際、オランダ語と英語は酷似しており、英語でMy name is ...はオランダ語でmijn naam is...だ。マルタ島での生活中は、オランダ人たちの会話の概要は聞き取れたし、ドイツを旅しているときは標識の意味をなんとなく理解することができた。
また、フランス語、スペイン語、イタリア語などはラテンを起源とした言語だ。ギリシャ・ローマ文明の影響が感じられる。
実際、これらの国の言語は似ている。スペインの旅行中に、英語だと理解してくれなかったのでフランス語に切り替えたら質問に答えてもらえた。
②各言語の特徴を知ろう
同じアルファベットでも言語によって発音が異なる。どうやら太古の昔、文字が伝播して行く際に誤って伝えられてしまった、または文字だけは取り入れるが発音は新たに当てはめる、なんてこともあったらしい。
ギリシャ文字がスラブ民族にキリル文字として取り入れられた時もその一例だ。そのせいで、アルファベットのNがキリル文字だとHだ。
発音が各言語で異なる代表例はCHの発音だと思う。
英語だと チュ(Chocolate: チョコレート)
フランス語 シュ(Chocolat: ショコラ)
ドイツ語 フ(Baumkuchen: バームクーヘン、Bach: バッハ)
他にも、
イタリア語だとccがキ(Macchiato: マキアート)
スペイン語だとjはハ(Ajillo: アヒージョ)
フランス語ではhを発音しない(Pierre Herme: ピエールエルメ)
など。
単語のスペリングにも、言語の特徴が見られる。
フランス語でしか見ない文字列 au(Restaurant)、eu(Entrepreneur)
ドイツ語でしか見ない文字列 ei (Einstein: アインシュタイン)
こういう特徴を掴んでいくと、言語を見て、その言語を当てられるようになると思う。
③他言語を英語に繋げる
これらの知識が補われると、英語の学習に俄然深みが出る。
初歩的なところでは、英単語でも綴りからどのエリアから輸入された単語なのか想像できるようになる。
また、初見の単語でも、他の言語の知識を活かして意味を推測できるようになる。例えば
Dormant(休眠中)という意味の単語は、フランス語(dormir: 眠る)から類推できる。
Malfunction(故障)なら、フランス語(mal: 悪い)から、何かがよくないんだろうな、ということがわかる。
Aviator(飛行士)なら、フランス語(avion: 飛行機)から想像がつく。
Connoisseur(玄人)なら、フランス語(Connaitre: 理解する)+(〜eurは人を表す)から、何かを知っている人だとわかる。
ラテン語の語幹を意識するようになると、もっと応用が効くようになる。
英単語は、ラテン語を起源とした接頭語、接尾語を含んでいることが多い。例えば
「Cred=信用」: Credit(信用)、Credible(信頼できる)、Incredible(信じられない)
「Rupt=裂ける」:Erupt(噴火)、Interrupt(邪魔する)、Corrupt(腐敗した)、Bankrupt(破産した)
など…。
この知識を使えば初見の単語も意味が想像しやすくなる。
anthropocentricity:人間中心的(antho=人類の、centr=中心)
enervate:気力を奪う(e=〜をさせる、nerv=神経)
gourmand:大食い(gourm=食べる、グルメ)
このように英単語を見つめるようになると、直感的に英単語の「雰囲気」を想像できるようになると思う。漢字から熟語の意味を当てるようなものだ。
すると、難解な英語の多い文章も大意が掴めるようになる。英語力が一歩向上したと実感できる瞬間になると思う。
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いろいろな言語を比較したり、一つの言語で得た知識を他の言語に持ち込めるようになると、言語学習や旅行、国際交流がますます面白く感じられるようになる。
言語の世界は本当に深い。ここでは丁寧に書けなかったが、文法はAの語族だが、文字はBの語族のものを採用している言語があったりする。文法としての言語、発音としての言語、文字としての言語など、いろいろな方面からみることで新しいことに気づく。
また、言語はその民族の文化、宗教にも大いに影響される。特に人の名前の付け方には顕著に表れるな、と思う。人の名前をみるだけでも、その人がどこの国の人か検討がついたりする。
ぜひみなさんも、旅行したり英語を学ぶときは、「言語学」という視点で見つめてみてほしい。