我が家の庭の風景 part.127「赤とんぼ」
赤とんぼが今年は少ない。雨が少なかったせいだろうか。川の生態系が変わってヤゴが少なくなったのか。
8月の赤とんぼがナツアカネなのかアキアカネなのかよく知らない。赤とんぼの区別は難しくて、それでなくとも私でも見た目ですぐわかるトンボと言えばオニヤンマくらいだ。そのオニヤンマも今年はあまり庭で見ない気がする。
赤とんぼの風流なところは田んぼの上を群れて飛ぶところだ。あるいは川辺でもいい。縦につながったトンボの番を見つけると今日も暑いんだなと子供の頃は思っていた。実際は涼しい季節にもトンボはいるのだが、なんとなくアキアカネより私の中の赤とんぼはナツアカネのイメージだったのだ。童謡の赤とんぼと私の中の赤とんぼはどうもつながらない。
しかし、その赤とんぼが猛暑で数を減らすなら、やはり赤とんぼは夏より秋ということだろうか。今年はセミの鳴き声も少なく、セミという名の飼い猫を呼ぶときにしかセミという単語を使わなかった。
蒸し暑いというより干上がるような夏だった。オリンピックを開催している都市ときっと気象条件は変わらないだろうと思われた。もちろん風土とか生きている植物も動物も違うことは分かっている。しかし、今は地方育ちの私も海外の大都市のことを遠い国のまったく理解できない人たちが住む場所とは思えなくなっている。理解しあおうとすれば遠いが、違いを見つけようとするとそれほど見つからないという感じだろうか。
夜中に猫に起こされてみた開会式では長くセーヌ川の風景が映った。私が住む場所の川と比べたら確かにパリの川は濁っていた。しかし、東京や大阪の川と比べると私の記憶の中のものとあまり違わない。きれいだから感動して見とれて人は川に集うというわけではないのだ。川は暮らしの一部であって、そこに川があるから人が住むがその川にトンボの幼虫がどれだけいるかなど興味を持って数えたりしない。魚がいなくなっても、気づかないで暮らし続ける。
パリにトンボはいるだろうか。オリンピックの喧騒はまだ続いている。そしてまた変わらぬパリの街並みもフランスの麦畑の風景も実際に見ることは叶わないもののずっと続いていくのだろうと思われるのだ。
虫が減るのは人間の仕業か。それでも、人類はまだそれほど捨てたものではない。
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