我が家の庭の風景 part.137 「静かな秋」
涼しい時を経験しないで、秋が終わってしまいそうだ。そのためだろうか、虫の声が少ない。人間や他の哺乳類たちに過ごしにくい気候であれば、虫たちにも繁殖しにくいなどということがあるのだろうか。一方で、哺乳類にとっては、過ごしにくいから繁殖しにくいと言う事もない。
我が家の庭がなぜこれほど静まり返っているか。小鳥の声は聞こえるが、カラスは全くいない。久しぶりにカラスの声を聞いたと思ったら、その声が遠い。カラスがいない田舎の風景も不気味なものだ。カラスやスズメなどは当たり前の日常風景を作ってくれる鳥だ。その当たり前がなくなった。
10月の初め、まだ刈り取られていない収穫前の稲穂の上に秋空ばかりが広がった。雲1つない不気味な空だ。しばらくして、その空に、大きな飛翔体の群れが見えた。鳶だった。鳶が畑に群がっていた。あるいは空を旋回していた。秋は、野生の生物たちの繁殖シーズンでもある。また、元は野生生物ではない猫も場合によっては、その繁殖や出産シーズンに該当する。
私が庭に長毛の1頭の白猫を見かけるようになったのが、去年のこの頃だ。我が家で子猫を産んだ。猛禽類の鳥たちは、その子猫を食べている。捕まえた獲物を叩き落として、弱らせて食べる習性があるので、田んぼや畑などに落ちているのは、そのいちど叩き落とされた獲物である可能性もあるだろう。
他人の畑の中には入っていけないと、私は見て見ぬふりをしている。鳶の数だけ子猫がいるのだろうか。あるいは、他の生き物かもしれない。狸は春が繁殖シーズンだ。出産は夏ごろである。きっと、獲物は狸ではない。狐と鼬の繁殖シーズンは知らない。春のような気もする。調べたくない。
暑い日が続いて、風も吹かない。猫たちが虫を狩るせいか、虫の声も少ない。蝉は今年は裏の様だ。夏もほとんど声を聴かず、ひぐらしの声もなかった。
自分自身を信じられるだろうか。きっとやれるはずだと。何もかもままならないのに、進んでみることができるのか。5月から私なりにやってみた。もうメドがついている。本当にメドがついているのか。
先日また久しぶりにカラスの鳴き声を聞いた。少し遠かった。カラスが鳶に追いやられるなんて知らなかった。
すると、その日の窓辺。我が家の三毛猫が鳴いていた。カカカカと鳴いていたのだ。私が窓の外を見ると暢気な小鳥が曇天に飛び立った。小鳥の鳴き真似をしていたのか。あるいは小鳥と遊んでいたのか。狙っていたのか。本当に小鳥を食べなくても、満足できる平和な猫だ。
そして、その翌日。玄関先に鳥の白い羽が落ちていた。アヒルの羽かと見紛うような大きさだった。まさか猫に食べられたのか?静かな秋の静かな庭。まだまだ草はうっそうとしている。命は静かにあっけなく終わる。けれども、常に衝撃的だ。