我が家の庭の風景part.143「冷たい猫」
雪が降っていないのに、雪の足音が聞こえてくる。前触れというのは、ほとんどが当人の錯覚だ。或いは、小説家が事実に脚色するために後付けしただけだ。
それでも、ひんやりとした空気には雪を彷彿とさせられる。予報はないのに、今日は降るかな?と思いながら12月のはじまりを数日過ごした。
実際には、早朝6時でも気温は3度。天気は霧。毎日濃霧注意報。霜も降りなかった。
雪はまだ遠い。結露した窓に猫が鼻先を濡らし、霧の中をじっと見ている。すると、白黒の猫が霧の中から現れる。霧のせいか、猫が分身するような錯覚を覚える。最近我が家の庭はオスの長毛大型猫が分身して増えるのだ。あるいは、兄弟の術という。
我が家の三毛猫は、なぜか長毛の大型猫より短毛のもっと小型のボス猫の方を変わらず脅威に感じているようだ。群れるからだろうか。セミ猫もカエル猫も面倒見がいい。群れを統率するのが好きだ。狼のような鳴き声と見た目の長毛猫たちよりボス猫二匹の方がよほど狼のような性格をしている。
12月に入ってから朝焼けを見ない。霧も深いが朝は雲も厚い。洗濯物が乾かない。それでも午後になれば、日中は気温が20度前後になるのだから不思議だ。
不思議といえば、長毛猫は冷たいということにも気が付いた。毛がとにかく冷たい。暖房を効かせた部屋で溶けない保冷材のようだ。毎日のブラッシングで最初に触るたびにびくっとする。長毛猫は寒さに強いのではなかったのか。あんなに温まらない毛が生えていて、暖が取れるのだろうか。取れるから昨年と今年の冬を生き延びたのだろうけれど。
暖かい部屋の中にいる猫がそうなのだから、外の猫の毛皮も相当冷たいに違いない。毎日長毛猫を3頭も4頭もブラッシングすることになったら、手がかじかんでしまいそうだ。それでなくとも、今年は手のしわが増えた。これは年齢によるものだろうか。長毛猫の毛が白く輝けばいつか家猫になれるだろうと、日々ブラッシングしながら霧が晴れるのを待っている。