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我が家の庭の風景 part.128「待ちわびる」
ごめんなさいという気持ちがあるから待つんだと思う。用事もないのに人は待たない。来るか来ないか分からない人を待つのは謝罪の気持ちがあるから。
ー人じゃないけど、猫を待っている。
リリースした猫は元気でいるかしら。
私の気持ちを代弁するみたいに網戸のそばで三毛猫が待っている。
戻ってきたら遊んであげるよって呼んでいる。だけど、白猫は戻って来ない。外が楽しいんだろう。
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戻って来たところで怪我や病気でも無ければ、私がしてあげられることはない。ごめんなさいという謝罪は猫に通じない。どのみち謝罪するようなことはしていないと思う。しいてあげるなら、里親を見つけられなかったくらいか。
見つけたところでどうしようもない。そうわかっているのに、かえって猫を探したくなって庭に出る。夏は日中に水を与えると植物が枯れる。枯れてもいいと植物の水やりを口実にリリースした8月5日から庭に何度も出ている。母猫も父猫も姉兄猫とも出会うのに、あの白猫だけ出てこない。よそに行ってしまったんだろうか。
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よりによって白い日々草を玄関先に植えてしまったため、玄関扉を開けて白い花が目に飛び込んでくる度に白猫を思う。猫は暑さに強いというし、日々草のようにほとんど水がなくても平気かもしれない。リリースした日はひどい夕立が降って、雨が止んでも稲光が続いていた。あんな日に戻って来なかったのだ。ちょっとやそっとや困難ならば強く成長するための肥やしになったかもしれない。ナス科の夏野菜はとても元気だ。
春生まれだもの。秋生まれの兄姉たちと比べたら、零下より猛暑の方が生きやすいのではないか。益体もない言い訳ともつかぬものを胸の内に並べて心を慰めている。
太陽が近く雲が高い。入道雲が怪しげな影を作っている。
春雷の季節に生まれた子猫はまた台風の季節に庭に離された。きっと7頭か8頭生まれた子猫たちは一匹一匹と減り、巣立ち、生後3ヶ月近くの頃には二匹までに減ったのだ。兄弟たちのようにたったひと月大きい家族であった私もまた減った家族として気にもかけていないかもしれない。
家に残ってしまった子猫は外に出ることを拒んでいる。あの白猫よりすぐには懐かなかったのに不思議なものだ。
あまり水々しさを感じることのないナスはあまりの暑さにシワが寄っている。けれども、実りの数は悪くない。なんとかかんとか生きている。
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私も庭の野菜たちもそんなに恵まれていない。私が手をかけて育てていないのだ。早朝以外に水をまいてはかえって枯れてしまう花や野菜のように、ほどほどが猫のためだったと思いたい。
私のことはそろそろ忘れてしまったんじゃないか。いつか大きくなった姿をちらりとでも見たい。詫びることを待っている。
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