何を積み上げていったらいいのかわからない
専業主婦になって半年が過ぎた。
その間、自分にとって「喜んでできる仕事」はなんだろう、と考えていた。
最初は、求人サイトをかたっぱしからチェックしていた。やってみたいと思うことをやってみようと思った。いくつかの職場に応募したが、結局通らなかった。
その一方で、「在宅ワーク」にも興味があった。自分のペースで1日のスケジュールを立てることができ、自分のペースで仕事を組めるのは魅力的だった。クラウドワークスに登録したり、ライティングの案件に応募してみたりした。
そこでわかったことは、仕事があるってありがたいことなんだなあ、ということ。
当然ながら、条件のいい案件には応募が殺到する。その中から初心者のライターが案件を受注するのは至難の技だ。幸い、わりと高単価な案件を、1件いただいた。しかしそれは継続案件ではなかった。そして、私自身もそれを継続したいと思えなかった。
文章を書くのに苦手意識はない。でも、なにか少しでも書けそうな案件ないかな、と日々チェックするのに消耗してしまった。仕事を探すのは疲れる。継続して仕事をいただけるというのは、なんてありがたいんだろう。たとえどんなに小さな仕事だったとしても、「私に」お願いしてくれる人がいるというのは、なんてうれしいことなんだろう。
そうこうしているうちに、知り合いのつてで、1つバイトをすることになった。1日2〜3時間、週2回。淡々としたデスクワークだ。初めて出勤した日、「仕事するって楽しい」と、心から思った。そんなふうに思ったのは久しぶりというか、初めてだったかもしれない。仕事する喜び。だれかに求められて、それに応えて、報酬が発生する。それがたとえ誰でもできる単純作業だったとしても、その時私は楽しかった。
楽しかったのは、ただ仕事をしたからではなかったと思う。それが自分にとってストレスがない仕事だったのだ。内容は自分の得意分野で、わりと機械的なデスクワークで、人とあまり話さず、でも人の気配を感じながらできる。小さな職場、少ないスタッフ、そしてうちから近い。時給は安いけれど、この仕事内容ならそうだよね、と納得。家でぼーっとスマホを見ているよりは、ずっといい。
とはいえ、この仕事で得られる収入はささやかだ。この仕事は土台として、その上で「自分自身で」受注できるようなことはないだろうか。しかも、自分がストレスなくやれることで。
いろいろ考えて、私はある事実に気がついた。
私は今まで、自分が「やりたいこと」よりも、自分ができたら「便利なんじゃないか」と思えることを基準に、仕事を選ぼうとしてきたことを。
大学生のとき、初めてのアルバイトはコンビニだった。接客業をやっておいたらこの先その経験が「使えるのではないか」と思って。掃除のアルバイトをしたこともある。「掃除ができるようになったらいいんじゃないか」と思って。大学卒業後は某金融機関で営業の仕事をした。人と話すのは好きだったけど、人に「営業する」・・相手のニーズを踏まえて自社商品のメリットを伝え、買ってもらう・・ということができれば、今後何をするにしても汎用性が効くと思ったからだ。
私は、「便利な自分」を作り上げようとしていた。
私は、自分の「好きなこと」が、よくわからなくなっていたんだ。
そういうことに、この半年の間で気づかされた。
じゃあ、私は本来何が好きだったんだろう?
自分の過去をぐんぐん振り返っていくと、「絵を描くこと」「ものを書くこと」に行き当たった。
幼稚園のころ、絵描きさんになりたかった。路上で似顔絵を書く人のイメージだった。「それじゃ食べていけないよ」と、だれかに言われたのか、自分で悟ったのか、わからないけど、路上の絵描きはやめよう。そして、「イラストレーター」という選択肢が浮上した。
小学生のころは、いろいろなものに興味があった。毎年のように将来の夢が変わっていた。ある時はアナウンサーになりたかった。ラジオにはまっていたときは、ラジオのパーソナリティになりたかった。美味しいもの食べてホテル泊まるのが仕事だったらいいなと思って、「じゃらん」の編集部がいいと言っていたこともあったな。まあ、たいがいにして、甘ちゃんの発想である。「イラストレーター」というのも、高学年くらいまで残っていたな。
でも、絵を描くことからは自然と退いていった。理由は、「自分はそんなに絵が上手くない」しかも、そこを上達させていこうと思うほどには「自分はそこまで絵を描くことに情熱を持てない」ということだった。
実はこのことを思い出したのは、最近だ。
最近、「自分が本当に好きなのは、絵を描くことじゃないか」と思って、スケッチブックや鉛筆を取り出し、絵を描いてみた。イラストも描いてみた。模写からスタートして、自分がよく走り書きするキャラクターを描いたり、とにかく気の向くままに描いてみた。
それはそれで楽しかったのだけど、絵描くのってむずかしいなー、というのが正直なところ。
そして、「絵を描くのは難しいけど、文字だったら、上手い下手関係なく頭で考えればいいことだから、そのほうがまだいけそう」
と思って、中学以降は文芸方面に活動を移行したことを思い出した。
中学、高校くらいまでは、よくショートショートとか書いてたっけ。
今、私の心の旅は、そこで止まっている。
じゃあどうするの?っていうところで。
経験は大事だ。たしかに、いろんな経験をすることは糧になる。でも、私は自分の書きたい文章を書いて、読んでもらうために継続的に発表してきた経験はない。人の目にさらされて、感想をもらったり、反響をいただいたりしたことは・・・厳密に言えばないことはないんだけど、それは私のことばのようで、私のことばではなかったんだ。
今、自分が何を紡ぎだせるのか、わからない。自分の「好き」がわからなくて、さりげなく心が迷子になっている自分だけど、ちゃんと私がここにいる限り、もうすぐそこに見つかる気がする。きっと、noteを書いているうちに、なにかが見えてくるような気がする。経験がないなら、経験を積み上げていけばいい。私は、書くことはできる。できることをやっていこう。
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